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弘道館記述義 / 大道之不明・忠義の人が輩出した南朝の世

後村上帝崎嶇間關僅守神器於南山之岑。今恭觀御製歌詞。其使後嗣想函關蹈雪之難。以存無逸之戒者。亦信足以激發懦夫之心。二帝之鼓舞士氣。其切如此。以故當時忠義輩出。儲貳則有皇太子恒良。皇子則有尊良護良宗良懷良諸王。公卿則有藤原藤房。藤原師賢。源親房父子之倫。闔族殉難則有楠氏。一門勤王則有新田氏。若兒島名和菊池結城村上父子之徒。雖有器大小。而要之英風義氣凜凜磅礴乎宇宙。所謂天生英偉絕特之人。以扶植天常民彛者不其然乎。且夫太陽失光則宇宙長夜。大道滅絕則人皆禽獸。天地間豈容有斯理。然則太陽之不見雲霧障焉。而赫赫炎炎者自若也。大道之不行亂賊侮焉。而光明正大者。未嘗滅絕也。故曰大道之不明於世也。蓋亦久矣。

新字:後村上帝崎嶇間関僅守神器於南山之岑。今恭観御製歌詞。其使後嗣想函関蹈雪之難。以存無逸之戒者。亦信足以激発懦夫之心。二帝之鼓舞士気。其切如此。以故当時忠義輩出。儲貳則有皇太子恒良。皇子則有尊良護良宗良懐良諸王。公卿則有藤原藤房。藤原師賢。源親房父子之倫。闔族殉難則有楠氏。一門勤王則有新田氏。若児島名和菊池結城村上父子之徒。雖有器大小。而要之英風義気凜凜磅礴乎宇宙。所謂天生英偉絶特之人。以扶植天常民彛者不其然乎。且夫太陽失光則宇宙長夜。大道滅絶則人皆禽獣。天地間豈容有斯理。然則太陽之不見雲霧障焉。而赫赫炎炎者自若也。大道之不行乱賊侮焉。而光明正大者。未嘗滅絶也。故曰大道之不明於世也。蓋亦久矣。

書き下し

後村上帝は崎嶇間関として僅かに神器を南山の岑に守る。今恭しく御製の歌詞を観るに、其の後嗣をして函関雪を蹈むの難を想はしめ、以て無逸の戒めを存する者は、亦信に以て懦夫の心を激発するに足る。二帝の士気を鼓舞する、其の切なること此くの如し。以て故に当時忠義輩出す。儲弐には則ち皇太子恒良有り、皇子には則ち尊良・護良・宗良・懐良の諸王有り、公卿には則ち藤原藤房・藤原師賢・源親房父子の倫有り、闔族難に殉ずるには則ち楠氏有り、一門勤王には則ち新田氏有り。児島・名和・菊池・結城・村上父子の徒の若きは、器に大小有りと雖も、要するに英風義気凜凜として宇宙に磅礴す。所謂天英偉絶特の人を生じ、以て天常民彝を扶植すとは、其れ然らずや。且つ夫れ太陽光を失へば則ち宇宙長夜なり。大道滅絶すれば則ち人皆禽獣なり。天地の間、豈に斯の理有るを容れんや。然れば則ち太陽の見えざるは雲霧障ぐればなり、而も赫赫炎炎たる者は自若たり。大道の行はれざるは乱賊侮ればなり、而も光明正大なる者は、未だ嘗て滅絶せず。故に曰く、大道の世に明らかならざるや、蓋し亦久しと。

現代語訳

後村上帝は、険しい道のりと苦難の中で、わずかに神器を南山の峰に守りました。いま、つつしんで御製の和歌を拝見しますと、後の世の者に函関の雪を踏む困難を思わせ、安逸を戒める心を残されたものです。まことに、気力の弱い者の心をも奮い立たせるのに十分です。(後醍醐・後村上の)二帝が士気を鼓舞することは、このように切実でした。このため、当時は忠義の人が相次いで出ました。皇太子には恒良親王がいます。皇子には尊良・護良・宗良・懐良の諸親王がいます。公卿には藤原藤房、藤原師賢、源親房とその子の仲間がいます。一族をあげて難に殉じた者には楠氏がいます。一門をあげて勤王した者には新田氏がいます。児島・名和・菊池・結城・村上父子のような人々は、器に大小はあっても、要するに英雄の気風と義の気が凛々として宇宙に満ちていました。いわゆる、天が卓越した傑出した人を生み、天の常道と民の人倫を支え立てるというのは、この通りではありませんか。そもそも太陽が光を失えば宇宙は長い夜になります。大道が滅び絶えれば、人はみな禽獣になります。天地の間に、そのような理があることを許せるでしょうか。そうであれば、太陽が見えないのは雲や霧がさえぎっているからで、赫赫と燃える太陽そのものは変わらずあります。大道が行われないのは乱賊が侮っているからで、光明正大なものは、これまで一度も滅び絶えたことがありません。だから、「大道が世に明らかでなくなって、もう久しい」というのです。

解説

後醍醐帝から後村上帝の苦難の中で、忠義の人々が相次いで現れたことを述べ、太陽の比喩で大道は消えないと結ぶ一節です。国体論的な色の濃い箇所ですが、歴史的な文脈として読めば、苦しい局面ほど、トップの姿勢が人々の士気を呼び起こすという教訓になります。現代の管理職は、厳しい状況でも言葉と行動で部下の士気を奮い立たせること、そして見えにくくなった理念をもう一度見える形にすることを、日々の実務で意識したいところです。

この章句が説くこと

弘道館記述義藤田東湖後村上天皇南朝楠木氏忠義

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