近思録 / 巻2 為学
多聞不足以盡天下之故。苟以多聞而待天下之變、則道足以酬其所嘗知。若劫之不測、則遂窮矣。
新字:多聞不足以尽天下之故。苟以多聞而待天下之変、則道足以酬其所嘗知。若劫之不測、則遂窮矣。
書き下し
多聞は以て天下の故を尽くすに足らず。苟も多聞を以て天下の変を待てば、則ち道は以て其の嘗て知る所に酬ゆるに足る。若し之を不測に劫かさるれば、則ち遂に窮す。
現代語訳
多く聞き知っているだけでは、天下の事情を尽くすには足りない。もし多く聞き知ったことで天下の変化に対応しようとすれば、その道はかつて知っていたことに応じるには足りる。しかし予測できない事態に脅かされれば、ついに行き詰まってしまう。
解説
張載の短い語である。多くのことを聞き知っていても、それだけでは天下の変化に応じきれない。すでに知っている事態には対応できても、予測しなかった事態に襲われればたちまち窮する、と指摘する。張載はここで、知識の量を増やすことより、事の根本にある理を明らかにし、どんな変化にも応じられる心を養うことを求めている。朱熹が窮理を説くとき、個々の知識を覚えるのではなく、その理由と筋道を理解することを重んじたのも同じ考え方である。前例やマニュアルを多く知っている人ほど、想定外の事態に弱いことがある。事例を覚えるだけでなく、その背後の原理を理解しておくことが、変化の激しい時代の備えになる。
この章句が説くこと
多聞窮理変化不測心
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