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肝要工夫録 / 義理のための堪忍

たへ忍ぶ、心しなくば、皆人の、など身を立つる、ことのあるべき。又武士の堪忍には、義理のためなれば、刑罰も行ひ、止む事を得ざれば、慮外者など討捨にすることあれども、その心に於ては、甚だ忍びがたけれども、義理のため故、おしこらへて人物をも殺すなり。此所をよく辨へざれば、臆病の名をとり、忠孝の道も闕く事あり。唯だ道理をおこなふ爲の堪忍なることをよく合點すれば、後の個條にいふ仁を行ふの工夫も、この二字に若くことあるべからず。

新字:たへ忍ぶ、心しなくば、皆人の、など身を立つる、ことのあるべき。又武士の堪忍には、義理のためなれば、刑罰も行ひ、止む事を得ざれば、慮外者など討捨にすることあれども、その心に於ては、甚だ忍びがたけれども、義理のため故、おしこらへて人物をも殺すなり。此所をよく弁へざれば、臆病の名をとり、忠孝の道も闕く事あり。唯だ道理をおこなふ為の堪忍なることをよく合点すれば、後の個条にいふ仁を行ふの工夫も、この二字に若くことあるべからず。

書き下し

たへ忍ぶ、心しなくば、皆人の、など身を立つる、ことのあるべき。又武士の堪忍には、義理のためなれば、刑罰も行ひ、止む事を得ざれば、慮外者など討捨にすることあれども、その心に於ては、甚だ忍びがたけれども、義理のため故、おしこらへて人物をも殺すなり。此所をよく辨へざれば、臆病の名をとり、忠孝の道も闕く事あり。唯だ道理をおこなふ爲の堪忍なることをよく合點すれば、後の個條にいふ仁を行ふの工夫も、この二字に若くことあるべからず。

現代語訳

「たへ忍ぶ、心しなくば、皆人の、など身を立つる、ことのあるべき」。(耐え忍ぶ心がなければ、人々がどうして身を立てることがあろうか、という意味の歌です。)また、武士の堪忍は、義理のためなので、刑罰も行い、やむを得ないときは無礼者などを討ち捨てにすることもあります。しかしその心においては、甚だ耐え難いのですが、義理のために押しこらえて人や物を殺すのです。ここをよくわきまえないと、臆病の名をとり、忠孝の道も欠けることがあります。ただ道理を行うための堪忍であることをよく納得すれば、後の条でいう仁を行う工夫も、この二字に及ぶものはありません。

解説

堪忍を、身を立てる土台とする歌に続き、武士の堪忍は義理のためだと述べる条です。刑罰や討ち捨てを行う場合も、心では耐え難いが、義理のために押しこらえて行う、という点が要です。堪忍は、黙って耐えることだけでなく、私情を抑えて役割を果たすことにも及ぶと示します。現代の管理職にも、懲戒や厳しい評価を下す場面で、私情や好悪ではなく、道理に基づいて行う姿勢に通じます。決断を避けるのも感情に任せるのも誤りで、道理を行う堪忍が仁につながるという教えです。

この章句が説くこと

堪忍義理道歌武士臆病仁

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