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肝要工夫録 / 小利大損

小利大損といふ諺は、誰もよくいふことなれども、その意味をよく辨へて、今日のつとめに用ふる者少し。賄賂にわづか一兩二兩の金子を取りて、永代の御扶持にはなれ、五十兩百兩の金銀の爲に、永代の知行にも離れ、大切の御役もめし放さるゝに至る者も、古今に多し。今日の行、大小となく此理大に工夫すべき事なり。取分御奉公をつとむる者は、此諺を忘るべからず。

新字:小利大損といふ諺は、誰もよくいふことなれども、その意味をよく弁へて、今日のつとめに用ふる者少し。賄賂にわづか一両二両の金子を取りて、永代の御扶持にはなれ、五十両百両の金銀の為に、永代の知行にも離れ、大切の御役もめし放さるゝに至る者も、古今に多し。今日の行、大小となく此理大に工夫すべき事なり。取分御奉公をつとむる者は、此諺を忘るべからず。

書き下し

小利大損といふ諺は、誰もよくいふことなれども、その意味をよく辨へて、今日のつとめに用ふる者少し。賄賂にわづか一兩二兩の金子を取りて、永代の御扶持にはなれ、五十兩百兩の金銀の爲に、永代の知行にも離れ、大切の御役もめし放さるゝに至る者も、古今に多し。今日の行、大小となく此理大に工夫すべき事なり。取分御奉公をつとむる者は、此諺を忘るべからず。

現代語訳

小利大損ということわざは誰もよく言いますが、その意味をよくわきまえて、今日の務めに用いる者は少ないです。賄賂にわずか一両二両の金を取って永代の扶持を離れ、五十両、百両の金銀のために永代の知行を失い、大切な役も召し放たれるに至る者は、古今に多くいます。今日の行いは、大小を問わずこの理をよく工夫すべきです。とりわけご奉公を勤める者は、このことわざを忘れてはいけません。

解説

短い条ですが、賄賂という目先の小さな利益のために、世襲の禄や役職という大きな長期の価値を失う者が古今に多いと指摘します。ことわざとして誰もが知るのに、実務に生かす人が少ないという観察は、現在も変わりません。現代の組織でも、わずかな経費の不正や接待の受領が、職と信用を失う引き金になります。管理職は、自分の判断が長期の信用に及ぼす影響を常に見積もり、小さな案件ほど基準を緩めないことが大切です。部下には具体的な事例で、損得の大きさを示すと伝わりやすいでしょう。

この章句が説くこと

小利大損賄賂知行信用長期ご奉公

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