肝要工夫録 / 小利大損
小利大損といふ諺は、誰もよくいふことなれども、その意味をよく辨へて、今日のつとめに用ふる者少し。賄賂にわづか一兩二兩の金子を取りて、永代の御扶持にはなれ、五十兩百兩の金銀の爲に、永代の知行にも離れ、大切の御役もめし放さるゝに至る者も、古今に多し。今日の行、大小となく此理大に工夫すべき事なり。取分御奉公をつとむる者は、此諺を忘るべからず。
新字:小利大損といふ諺は、誰もよくいふことなれども、その意味をよく弁へて、今日のつとめに用ふる者少し。賄賂にわづか一両二両の金子を取りて、永代の御扶持にはなれ、五十両百両の金銀の為に、永代の知行にも離れ、大切の御役もめし放さるゝに至る者も、古今に多し。今日の行、大小となく此理大に工夫すべき事なり。取分御奉公をつとむる者は、此諺を忘るべからず。
書き下し
小利大損といふ諺は、誰もよくいふことなれども、その意味をよく辨へて、今日のつとめに用ふる者少し。賄賂にわづか一兩二兩の金子を取りて、永代の御扶持にはなれ、五十兩百兩の金銀の爲に、永代の知行にも離れ、大切の御役もめし放さるゝに至る者も、古今に多し。今日の行、大小となく此理大に工夫すべき事なり。取分御奉公をつとむる者は、此諺を忘るべからず。
現代語訳
小利大損ということわざは誰もよく言いますが、その意味をよくわきまえて、今日の務めに用いる者は少ないです。賄賂にわずか一両二両の金を取って永代の扶持を離れ、五十両、百両の金銀のために永代の知行を失い、大切な役も召し放たれるに至る者は、古今に多くいます。今日の行いは、大小を問わずこの理をよく工夫すべきです。とりわけご奉公を勤める者は、このことわざを忘れてはいけません。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『春秋左氏伝』僖公二年 仮道伐虢二年春、諸侯楚丘に城きて衛を封ず。書せざるは、會する所後るればなり。晉の荀息屈產の乘と、垂棘の璧とを以って、道を虞に假りて以って虢を伐たんことを請ふ。公曰く、「是れ吾が寶なり」と。對へて曰く、「若し道を虞に得ば、猶ほ外府のごとし」と。公曰く、「宮之奇焉に存す」と。對へて曰く、「宮之奇の人と爲りや、懦にして強諫すること能はず。且つ少くして君に長じ、君之に暱す。諫むと雖も、將に聽かざらんとす」と。乃ち荀息をして道を虞に假らしむ。曰く、「冀不道を爲し、顛軨より入りて、鄍の三門を伐つ。冀の既に病めるは、則ち亦た唯だ君の故なり。今虢不道を爲し、逆旅に保りて、以って敝邑の南鄙を侵す。敢へて道を假りて以って罪を虢に請はんことを請ふ」と。虞公之を許し、且つ先づ虢を伐たんことを請ふ。宮之奇諫むれども、聽かず。遂に師を起こす。夏、晉の里克・荀息師を帥ゐて虞の師に會して虢を伐ち、下陽を滅ぼす。先づ虞を書するは、賄の故なり。秋、貫に盟ふ、江・黃を服するなり。齊の寺人貂始めて師を多魚に漏らす。虢公戎を桑田に敗る。晉の卜偃曰く、「虢必ず亡びん。下陽を亡ひて懼れず、而して又功有り。是れ天之が鑒を奪ひて、其の疾を益すなり。必ず晉を易りて其の民を撫せざらん。以って五稔す可からず」と。冬、楚人鄭を伐ち、鬬章鄭の聃伯を囚ふ。
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『春秋左氏伝』襄公二十五年 荘公の薄葬と和議崔氏莊公を北郭に側す。丁亥、諸を士孫の里に葬る。四翣、蹕せず、下車七乘、兵甲を以ってせず。晉侯泮より濟り、夷儀に會し、齊を伐ちて以って朝歌の役に報ゆ。齊人莊公を以って說き、隰鉏をして成を請はしむ。慶封師に如く。男女班を以ってし、晉侯に賂ふに宗器・樂器を以ってす。六正・五吏・三十師・三軍の大夫・百官の正長・師旅、及び處守する者より、皆賂有り。晉侯之を許す。叔向をして諸侯に告げしむ。公、子服惠伯をして對へしめて曰く、「君有罪を舍して、以って小國を靖んず、君の惠なり。寡君命を聞けり」と。晉侯魏舒・宛沒をして衛侯を逆へしめ、將に衛をして之に夷儀を與へしめんとす。崔子其の帑を止めて、以って五鹿を求む。
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『春秋左氏伝』昭公二十六年 子猶、賄を受く二十六年春、王の正月、庚申、齊侯鄆を取る。宋の元公を葬ること、先君の如くす、禮なり。三月、公齊より至り、鄆に處る。魯の地を言ふなり。夏、齊侯將に公を納れんとし、魯の貨を受くること無かれと命ず。申豐、女賈に從ひ、幣錦二兩を以って、縛りて一にすること瑱(てん)の如くし、齊の師に適く。子猶の人高齮(こうき)に謂ふ、「能く子猶に貨せば、高氏の後と為さん、粟五千庾(ゆ)あらん」と。高齮錦を以って子猶に示す。子猶之を欲す。齮曰く、「魯人之を買ふこと、百兩一布なり。道の通ぜざるを以って、先づ幣財を入るるのみ」と。子猶之を受く。齊侯に言ひて曰く、「群臣の力を魯君に盡くさざるは、君に事ふる能はざるに非ざるなり。然れども據(きょ)異とする有り。宋の元公魯君の為に晉に如き、曲棘に卒す。叔孫昭子其の君を納れんことを求め、疾無くして死す。知らず天の魯を棄つるか、抑も魯君鬼神に罪有るか。
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『秘本玉くしげ』下 賄賂の蔓延それも主君たる人正しければ、さすがに身分重き役人はおのづからたしなむ事もあれども、下々の役人は、上へはしれぬ事をよくのみこみ居るうへに、たとひ万一しれても身分かろければ、高をくくりて憚る所なく、何事にもこれをむさぼる也。又主君ぐるみに昧きは、上中下おしなべていよいよ甚しき事あり。其中にたとひたまたま廉直なる人有ても、其身分の役義ばかりこそ廉直なれ、外々の防ぎにはならず。又目附横目をつけても、多くは其人ぐるみに此道におちいる故に、益あることなし。惣体近世は何事によらず、此賄の行はれざる事はなくして、公事訴訟に横しまなるさばきをなし、刑罰にあたらざる事多きなどは申に及ばず、其外諸の作事普請などに付ても、此すぢもつばら行はるること也。それも少々づつの事はさても有べきなれ共、甚しき事のみ多くして、すべて賄を多くつかへば、其仕方わろくてもよしとして是をすまし、賄すくなければ、よくてもわろしといひて済さず。
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『春秋左氏伝』昭公二十七年 范献子、賄を取る秋、扈に會す。周を戍(まも)らしめ、且つ公を納るるを謀るなり。宋・衛皆公を納るるを利とし、固く之を請ふ。范獻子、貨を季孫に取り、司城子梁と北宮貞子とに謂ひて曰く、「季孫未だ其の罪を知らずして、君之を伐つ。囚へられんことを請ひ、亡げんことを請ふも、是に於いてか獲ず。君又克たずして、自ら出づ。夫れ豈に備へ無くして能く君を出ださんや。季氏の復するは、天之を救ふなり。公徒の怒りを休め、叔孫氏の心を啟く。然らずんば、豈に其れ人を伐ちて甲を說(と)き冰を執りて以って游ばんや。叔孫氏、禍の濫(ひろ)がらんことを懼れて、自ら季氏に同じくす。天の道なり。魯君、齊に守ること三年にして成る無し。季氏甚だ其の民を得、淮夷之に與す。十年の備へ有り、齊・楚の援有り、天の贊有り、民の助け有り、堅守の心有り、列國の權有り。而も敢へて宣べず。
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