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肝要工夫録 / 孝は百行の源

古人の言葉に、孝は百行の源、萬善の長といふて、至りて重き事なり。貴賤賢不肖によらず、己が身ほど、大切なるものはなし。その貴き大切の身は何方より貰ひたるや、これ全く父母の賜なり、浮世の習、少しのものを貰ひても、厚く謝し、返禮を行ふことなり、まして、かほど貴き大切の身を賜ひたる事なれば、せめて心のかぎり、力の限り、孝行をつくして、萬分一の返禮を致すべきこと肝要なり。(孝行のことは、何れの書にも、諸君子力をつくしあらはしたまふことなれば、只だ大意をしるす。)又今賜はり來る祿は、みな祖先の軍功忠勤に依り、子孫の賢不肖によらずして、その舊祿を給はる事にて、その先祖の厚恩莫大のことなり。

新字:古人の言葉に、孝は百行の源、万善の長といふて、至りて重き事なり。貴賤賢不肖によらず、己が身ほど、大切なるものはなし。その貴き大切の身は何方より貰ひたるや、これ全く父母の賜なり、浮世の習、少しのものを貰ひても、厚く謝し、返礼を行ふことなり、まして、かほど貴き大切の身を賜ひたる事なれば、せめて心のかぎり、力の限り、孝行をつくして、万分一の返礼を致すべきこと肝要なり。(孝行のことは、何れの書にも、諸君子力をつくしあらはしたまふことなれば、只だ大意をしるす。)又今賜はり来る禄は、みな祖先の軍功忠勤に依り、子孫の賢不肖によらずして、その旧禄を給はる事にて、その先祖の厚恩莫大のことなり。

書き下し

古人の言葉に、孝は百行の源、萬善の長といふて、至りて重き事なり。貴賤賢不肖によらず、己が身ほど、大切なるものはなし。その貴き大切の身は何方より貰ひたるや、これ全く父母の賜なり、浮世の習、少しのものを貰ひても、厚く謝し、返禮を行ふことなり、まして、かほど貴き大切の身を賜ひたる事なれば、せめて心のかぎり、力の限り、孝行をつくして、萬分一の返禮を致すべきこと肝要なり。(孝行のことは、何れの書にも、諸君子力をつくしあらはしたまふことなれば、只だ大意をしるす。)又今賜はり來る祿は、みな祖先の軍功忠勤に依り、子孫の賢不肖によらずして、その舊祿を給はる事にて、その先祖の厚恩莫大のことなり。

現代語訳

古人の言葉に、孝は百行の源、万善の長といい、至って重いことです。身分の貴賤や賢愚にかかわらず、自分の身ほど大切なものはありません。その貴く大切な身はどこからもらったのかといえば、これはまったく父母の賜です。世間の習いで、少しの物をもらっても厚く礼を述べ、返礼をします。ましてこれほど貴く大切な身を賜ったのですから、せめて心の限り力の限り孝行を尽くして、万分の一の返礼をすべきです。(孝行のことは、どの書にも諸君子が力を尽くして書いておられるので、ただ大意を記します。)また、今いただいている禄は、みな祖先の軍功や忠勤によるもので、子孫の賢愚にかかわらず、その旧禄を給わるのですから、その先祖の厚恩は莫大です。

解説

孝を百行の源とし、わが身を父母からの賜物として捉える条です。さらに、今の禄が祖先の軍功に基づく世襲であることを挙げ、先祖への恩を意識させます。世襲の禄で暮らす江戸後期の武士に、自分の立場が自力だけで得たものではないと気づかせる意図があります。現代の管理職にも、今の地位や環境が、先人の築いた土台の上にあるという自覚は有益です。恩を意識する人は、傲慢になりにくく、次の世代へ何を渡すかという視点も持てるようになります。

この章句が説くこと

孝百行の源父母の恩祖先の禄世襲感謝

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