十善法語 / 巻第五・不綺語戒
若或ハ父母カ惡事ニ隨順シテ止ヌコトアレハ。此ハ變ト知ヘシ。其時ニハ事ノ輕重。時ノ進不ヲ斟酌スヘキコトシヤ。自心ノ及ハヌ處ハ。智者明師ノ指示ヲ受ルガヨイ。要ヲ取テ云ハ。此孝道。思惟度量シテ別ニムツカシキ一法ヲ造作スルナラス。唯子タル者ノ平生安ンスル處。コレヲ孝ノ道ト云。何故ニ如是ソ。此父母コレ我自性善根ノ開發セル儀シヤ。若業障深キ衆生ハ父母ノ名字タモ聞コトナラヌシヤ。梵網經ニ。若有犯者不得現身發菩提心。乃至二却三却不聞父母三寶名字トアル。餘經ニ。夢ニ父母師僧ヲミル。皆福分ノアル處ト云。魚ノ水中ニ游フ如ク。鳥ノ空中ニ飛カ如ク。孝子順孫ノ父母王母ノ膝下ニアル。此ニ同シ。實實ニカクノ如クナラバ。地中ニ金一釜ヲ得ズトモ或ハ冬時筍ヲ得ストモ。孝道全トス。世ニ不孝ノ子アル。或ハ功利名譽ニ蔽ハル。或ハ博奕婬酒ニ蔽ハル。ミナ宿惡深重ノナス所ト知ルヘキシヤ。
新字:若或ハ父母カ悪事ニ随順シテ止ヌコトアレハ。此ハ変ト知ヘシ。其時ニハ事ノ軽重。時ノ進不ヲ斟酌スヘキコトシヤ。自心ノ及ハヌ処ハ。智者明師ノ指示ヲ受ルガヨイ。要ヲ取テ云ハ。此孝道。思惟度量シテ別ニムツカシキ一法ヲ造作スルナラス。唯子タル者ノ平生安ンスル処。コレヲ孝ノ道ト云。何故ニ如是ソ。此父母コレ我自性善根ノ開発セル儀シヤ。若業障深キ衆生ハ父母ノ名字タモ聞コトナラヌシヤ。梵網経ニ。若有犯者不得現身発菩提心。乃至二却三却不聞父母三宝名字トアル。余経ニ。夢ニ父母師僧ヲミル。皆福分ノアル処ト云。魚ノ水中ニ游フ如ク。鳥ノ空中ニ飛カ如ク。孝子順孫ノ父母王母ノ膝下ニアル。此ニ同シ。実実ニカクノ如クナラバ。地中ニ金一釜ヲ得ズトモ或ハ冬時筍ヲ得ストモ。孝道全トス。世ニ不孝ノ子アル。或ハ功利名誉ニ蔽ハル。或ハ博奕婬酒ニ蔽ハル。ミナ宿悪深重ノナス所ト知ルヘキシヤ。
書き下し
若或ハ父母カ悪事ニ随順シテ止ヌコトアレハ。此ハ変ト知ヘシ。其時ニハ事ノ軽重。時ノ進不ヲ斟酌スヘキコトシヤ。自心ノ及ハヌ処ハ。智者明師ノ指示ヲ受ルガヨイ。要ヲ取テ云ハ。此孝道。思惟度量シテ別ニムツカシキ一法ヲ造作スルナラス。唯子タル者ノ平生安ンスル処。コレヲ孝ノ道ト云。何故ニ如是ソ。此父母コレ我自性善根ノ開発セル儀シヤ。若業障深キ衆生ハ父母ノ名字タモ聞コトナラヌシヤ。梵網経ニ。若有犯者不得現身発菩提心。乃至二却三却不聞父母三宝名字トアル。余経ニ。夢ニ父母師僧ヲミル。皆福分ノアル処ト云。魚ノ水中ニ游フ如ク。鳥ノ空中ニ飛カ如ク。孝子順孫ノ父母王母ノ膝下ニアル。此ニ同シ。実実ニカクノ如クナラバ。地中ニ金一釜ヲ得ズトモ或ハ冬時筍ヲ得ストモ。孝道全トス。世ニ不孝ノ子アル。或ハ功利名誉ニ蔽ハル。或ハ博奕婬酒ニ蔽ハル。ミナ宿悪深重ノナス所ト知ルヘキシヤ。
現代語訳
もしあるいは父母が悪事に従ってやめないことがあれば、これは変事と知りなさい。その時には、事の軽重、時の進むか退くかを斟酌すべきことである。自分の心の及ばないところは、智者や明師の指示を受けるのがよい。要点を取って言えば、この孝の道は、思いはかって別に難しい一つの法をこしらえるのではない。ただ子である者が平生安らかにしているところ、これを孝の道と言う。なぜそうなのか。この父母は、自分の本性の善根が開き現れた姿なのである。もし業の障りの深い衆生は、父母の名さえ聞くことができないのである。梵網経に、もし犯す者があれば、現在の身で菩提心を発すことができず、二劫三劫にわたって父母や三宝の名を聞かない、とある。ほかの経に、夢に父母や師僧を見るのは、みな福分のあるところだ、と言う。魚が水の中を泳ぐように、鳥が空を飛ぶように、孝子や順孫が父母や祖母の膝もとにいる。これと同じである。本当にこのようであるなら、地中に金一釜を得なくても、あるいは冬に筍を得なくても、孝の道は全うされる。世に不孝の子がいる。あるいは功利や名誉に覆われ、あるいは博打や淫酒に覆われる。みな前世からの悪業が深く重いことのなすところと知るべきである。
解説
この章句が説くこと
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