管子 / 立政
寢兵之說勝,則險阻不守。兼愛之說勝,則士卒不戰。全生之說勝,則㢘恥不立。私議自貴之說勝,則上令不行。羣徒比周之說勝,則賢不肖不分。金玉貨財之說勝,則爵服下流。觀樂玩好之說勝,則姦民在上位。請謁任舉之說勝,則繩墨不正。諂䛕飾過之說勝,則巧佞者用。
新字:寝兵之説勝,則険阻不守。兼愛之説勝,則士卒不戦。全生之説勝,則廉恥不立。私議自貴之説勝,則上令不行。羣徒比周之説勝,則賢不肖不分。金玉貨財之説勝,則爵服下流。観楽玩好之説勝,則姦民在上位。請謁任舉之説勝,則縄墨不正。諂䛕飾過之説勝,則巧佞者用。
書き下し
寢兵の說勝てば、則ち險阻守られず。兼愛の說勝てば、則ち士卒戰わず。全生の說勝てば、則ち廉恥立たず。私議自貴の說勝てば、則ち上令行われず。羣徒比周の說勝てば、則ち賢不肖分かれず。金玉貨財の說勝てば、則ち爵服下流す。觀樂玩好の說勝てば、則ち姦民上位に在り。請謁任舉の說勝てば、則ち繩墨正しからず。諂諛飾過の說勝てば、則ち巧佞なる者用いらる。
現代語訳
兵を寝かせよという説が勝てば、険しい地の守りは保たれない。分け隔てなく愛せという説が勝てば、士卒は戦わない。生を全うせよという説が勝てば、廉恥は立たない。私的な議論で自分を貴ぶ説が勝てば、上の命令は行われない。徒党を組んでかばい合う説が勝てば、賢者と愚者が分かれない。金玉や財貨を貴ぶ説が勝てば、爵位と礼服は下へ流れる。見物や遊びを貴ぶ説が勝てば、悪知恵の者が上の位に立つ。口利きや推挙を貴ぶ説が勝てば、墨縄はまっすぐでなくなる。へつらって過ちを飾る説が勝てば、口のうまい者が用いられる。
解説
世に流れる九つの説を挙げ、それが勝ったときに何が壊れるかだけを並べた段です。反論はしません。ただ帰結を置きます。徒党の説が勝てば賢愚が分かれず、口利きの説が勝てば墨縄が曲がる。立政篇が編まれたころの論争相手が透けて見える一段でもあります。どの説にも一理はあるが、通したときに何が支えを失うかを見よ、という読み方ができます。
この章句が説くこと
寝兵の説勝てば則ち険阻守られず兼愛の説勝てば則ち士卒戦わず羣徒比周の説勝てば則ち賢不肖分かれず請謁任舉の説勝てば則ち縄墨正しからず世論帰結
関連する章句
-
『武士訓』卷三・第18段むかし晉悼公の大夫祁奚年老たりしかば。悼公祁奚にむかひて。汝が後役にたれをかなすべきやと問れしに。答て解狐しかるべしとまうす。悼公それは其方と中あしきものにあらずやとありしに。祁奚がいはく。君はわが後役によろしかるべきものを問給ふ。中あしきを問なふにあらず。是によりて解狐をさしまうすと答ふ。悼公また國の尉にはたれかしかるべからんと有しに。こたえていはく午よろしかるべし。悼公いはくそれは其方が子にあらずや。祁奚いはく。君はその役にしかるべきものを問給ふ。子を問たまふにあらず。これによりてこたえ奉ること右のごとしとまうせり。外仇讐を避ず。内親戚を避ず。至て公なりと。そのころの人感じたりとなり。今おもふに。祁奚が外仇讐を避けざるは後人まなんで可なり。内親戚を避ざるは悼公祁奚は可なり。後人まなぶに遠慮あるべし。
-
『春秋左氏伝』宣公十六年 民の多幸は国の不幸十六年春、晉の士會師を帥ゐて赤狄の甲氏及び留吁・鐸辰を滅ぼす。三月、狄の俘を獻ず。晉侯王に請ひ、戊申、黻冕を以て士會に命じて中軍に將とし、且つ大傅と為す。是に於て晉國の盜、逃れて秦に奔る。羊舌職曰く、「吾之を聞く、禹善人を稱げて、不善人遠ざかると。此の謂なり。夫れ詩に曰く、『戰戰兢兢として、深淵に臨むが如く、薄冰を履むが如し』と。善人上に在るなり。善人上に在れば、則ち國に幸民無し。諺に曰く、『民の幸多きは、國の不幸なり』と。是れ善人無きの謂なり」と。夏、成周の宣榭火あり、人之に火するなり。凡そ火は、人火を火と曰ひ、天火を災と曰ふ。秋、郯の伯姬來り歸る、出されたるなり。毛・召の難の故の為に、王室復た亂る。王孫蘇晉に奔る、晉人之を復す。冬、晉侯士會をして王室を平がしむ。定王之を享し、原襄公禮を相く。殽烝す。武子私かに其の故を問ふ。王之を聞き、武子を召して曰く、「季氏、而聞かざるか。王の享には體薦有り、宴には折俎有り。公は享に當り、卿は宴に當る、王室の禮なり」と。武子歸りて典禮を講求し、以て晉國の法を脩む。
-
『武家家訓集』朝倉敏景十七箇条「追書(役人の私と他国の悪党)」一、諸沙汰在所の時、理非少しも曲げらるまじく候。もし役人わたくしも致し候由聞き及ばれ候はば、同罪に堅く申し付けらるべく候。しよちうつろをぎんみ申し候沙汰致し候へば、他国の悪党出でぬものなり。みだりがはしき所と知られ候へば、他家より手を入るるものにて候。
-
『臣軌』卷上 公正章人を理むるの道は万端なるも、之を行う所以は一に在り。一とは何ぞや。公のみ。唯だ公心のみ以て国を奉ず可く、唯だ公心のみ以て家を理む可し。公道行わるれば、則ち神明労せずして邪自ずから息み、私道行わるれば、則ち刑罰繁くして邪禁ぜられず。故に公の道為るや、言甚だ少なくして用甚だ博し。夫れ心なる者は、神明の主、万理の統なり。動きて正を失わざれば、天地も感ず可し、而るを況んや人に於いてをや。故に古の君子は、先ず其の心を正す。
-
『春秋左氏伝』昭公十四年 古の遺直冬十二月、蒲餘侯茲夫莒の公子意恢を殺す。郊公齊に奔る。公子鐸庚與を齊に逆ふ。齊の隰黨・公子鉏之を送り、賂田有り。晉の邢侯雍子と鄐の田を爭ひ、久しくして成る無し。士景伯楚に如き、叔魚理を攝す。韓宣子命じて舊獄を斷ぜしむ。罪雍子に在り。雍子其の女を叔魚に納る。叔魚罪を邢侯に蔽す。邢侯怒り、叔魚と雍子とを朝に殺す。宣子其の罪を叔向に問ふ。叔向曰く、「三人罪を同じくす。生けるを施し死せるを戮して可なり。雍子自ら其の罪を知りて、賂して以って直を買ふ。鮒や獄を鬻ぐ。邢侯專ら殺す。其の罪一なり。己惡しくして美を掠むるを昏と為し、貪りて以って官を敗るを墨と為し、人を殺して忘れざるを賊と為す。夏書に曰く、『昏・墨・賊は殺す』と。皋陶の刑なり。請ふ之に從はん」と。乃ち邢侯を施して、雍子と叔魚とを市に尸す。仲尼曰く、「叔向は、古の遺直なり。國を治め刑を制するに、親に隱さず。三たび叔魚の惡を數へて、末減を為さず。曰く、義なるかな、直と謂ふ可し。平丘の會に、其の賄を數へて、以って衛國を寬くし、晉暴を為さず。魯の季孫を歸すに、其の詐を稱して、以って魯國を寬くし、晉虐を為さず。邢侯の獄に、其の貪を言ひて、以って刑書を正し、晉頗を為さず。三たび言ひて三惡を除き、三利を加ふ。親を殺して榮を益す、猶ほ義なるかな」と。
-
『呻吟語』外篇・治道・公正の二字公正の二字は是れ世界を撐持し底る。這の二字沒し了はれば、便ち天を塌さん。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見る