韓非子 / 難四第三十九
敗亡之不察,何也?魯陽虎欲攻三桓,不尅而犇齊,景公禮之。鮑文子諫曰:「不可。陽虎有寵於季氏而欲伐於季孫,貪其富也。今君富於季孫,而齊大於魯,陽虎所以盡詐也。」景公乃囚陽虎。或曰:千食之家,其子不仁,人之急利甚也。桓公,五伯之上也,争國而殺其兄,其利大也。臣主之間,非兄弟之親也。劫殺之功,制萬乘而享大利,則羣臣孰非陽虎也?事以微巧成,以踈拙敗。
新字:敗亡之不察,何也?魯陽虎欲攻三桓,不尅而犇斉,景公礼之。鮑文子諫曰:「不可。陽虎有寵於季氏而欲伐於季孫,貪其富也。今君富於季孫,而斉大於魯,陽虎所以尽詐也。」景公乃囚陽虎。或曰:千食之家,其子不仁,人之急利甚也。桓公,五伯之上也,争国而殺其兄,其利大也。臣主之間,非兄弟之親也。劫殺之功,制万乗而享大利,則羣臣孰非陽虎也?事以微巧成,以疎拙敗。
書き下し
敗亡の察せざるは、何ぞや。魯の陽虎、三桓を攻めんと欲し、尅たずして斉に犇る。景公之を礼す。鮑文子諫めて曰く、「不可なり。陽虎は季氏に寵有りて季孫を伐たんと欲す、其の富を貪ればなり。今君は季孫より富み、而して斉は魯より大なり、陽虎の詐を尽くす所以なり。」景公乃ち陽虎を囚ふ。或ひと曰く、千食の家、其の子不仁なるは、人の利に急なること甚だしければなり。桓公は五伯の上なり、国を争ひて其の兄を殺す、其の利大なればなり。臣主の間は、兄弟の親に非ざるなり。劫殺の功、万乗を制して大利を享くれば、則ち群臣孰か陽虎に非ざらんや。事は微巧を以て成り、疏拙を以て敗る。
現代語訳
(穆子が)滅亡の道理を見きわめないのは、どういうことか。魯の陽虎(季氏の家臣)は三桓(魯の実権を握る三家)を攻めようとしたが、勝てずに斉へ逃げた。斉の景公は陽虎を礼遇した。鮑文子が諫めた。「なりません。陽虎は季氏に寵愛されながら季孫を討とうとしました。その富を貪ったからです。今、君は季孫より富み、斉は魯より大きい。陽虎が詐りの限りを尽くすのはこのためです。」景公はそこで陽虎を捕らえた。ある人が言う。千食(大きな財産)の家で、その子が不仁になるのは、人が利を求める心がそれほど激しいからである。斉の桓公は五覇の筆頭であるが、国を争って兄(公子糾)を殺した。その利が大きかったからだ。臣と君主の間柄は、兄弟ほどの親しさもない。君を劫かし殺す功によって、万乗の国を制して大きな利を享けられるなら、群臣のうち誰が陽虎でないといえようか。事は微妙で巧みなやり方で成り、粗く拙いやり方で失敗する。
解説
関連する章句
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『韓非子』難四第三十九景公をして誅を斉の巧臣に加へしめずして、誅を拙虎に加へしむるは、是れ鮑文子の説反せり。臣の忠詐は、君の行ふ所に在り。君明にして厳なれば、則ち群臣忠なり。君懦にして闇なれば、則ち群臣詐なり。微を知る之を明と謂ひ、救赦無き之を厳と謂ふ。斉の巧臣を知らずして魯の成乱を誅するは、亦妄ならずや。或ひと曰く、仁貪は心を同じくせず。故に公子目夷は宋を辞し、而して楚の商臣は父を弑す。鄭の去疾は弟に予へ、而して魯の桓は兄を弑す。五伯は兼并す、而るに桓を以て人を律すれば、則ち是れ皆貞廉無きなり。且つ君明にして厳なれば、則ち群臣忠なり。陽虎乱を魯に為し、成らずして走り、斉に入りて誅せられざるは、是れ乱を為すを承くるなり。君明なれば則ち誅す、陽虎の以て乱を済すべきを知るは、此れ微を見るの情なり。語に曰く、「諸侯は国を以て親と為す。」君厳なれば則ち陽虎の罪失ふべからず、此れ救赦無きの実なり。則ち陽虎を誅するは、群臣をして忠ならしむる所以なり。
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説苑・權謀陽虎魯に難を爲し、走りて齊に之き、師を魯に請ふ。齊侯之を許す。鮑文子曰く、「不可なり。陽虎齊師の破れんことを欲す。齊師破れなば、大臣必ず多く死せん。是に於て其の詐謀を奮はんと欲するなり。夫れ虎季氏に寵有りて將に季孫を殺さんとせしも、魯國に利あらずして其の求めを容れたり。今君季氏より富み魯國より大なり。茲れ陽虎の傾覆せんと欲する所なり。魯其の疾を免れて、君又た之を收む。乃ち害無からんや」と。齊君乃ち之を執へ、免じて晉に奔らしむ。
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『淮南子』人間訓陽虎 魯に亂を爲す。魯君 人をして城門を閉じて之を捕えしめ、得たる者は重賞有り、失う者は重罪有りとす。圍むこと三匝にして、陽虎 將に劍を舉げて頤を伯かんとす。門者 之を止めて曰く「天下 之を探れば窮まらず。我 將に子を出ださんとす」と。陽虎 因りて圍に赴きて逐い、劍を揚げ戈を提げて走る。門者 之を出だすに、顧みて反って其の之を出だす者を取り、戈を以て之を推し、袪を攘りて腋に薄る。之を出だす者 之を怨みて曰く「我 故らに子と反するに非ず。之が爲に死を蒙り罪を被るに、乃ち反って我を傷つく。宜なるかな、其の此の難有るや」と。魯君 陽虎の失せしを聞き、大いに怒り、出でし所の門を問い、有司をして之を拘えしめ、傷つけられたる者を以て大賞を受けしめ、傷つけられざる者は重罪を被らしむ。此れ所謂 之を害して反って利する者なり。
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孔子家語・辯物陽虎既に斉に奔り、斉より晋に奔りて、趙氏に適く。孔子之れを聞き、子路に謂いて曰わく、「趙氏其れ世々乱有らんか。」子路曰わく、「権焉に在らざれば、豈に乱を為さざらんや。」孔子曰わく、「汝の知る所に非ず。夫れ陽虎は富に親しみて仁に親しまず、季孫に寵有り、又た将に之れを殺さんとするも、克たずして奔る。斉に容を求むるも、斉人之れを囚え、乃ち亡げて、晋に帰す。是れ斉魯二国、已に其の疾を去れり。趙簡子は利を好みて信多し、必ず其の説に溺れて其の謀に従わん。禍敗の終わる所、一世にして知る可きに非ざるなり。」
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『韓非子』難四第三十九衛の孫文子、魯に聘す。公登れば亦登る。叔孫穆子趨り進みて曰く、「諸侯の会に、寡君未だ嘗て衛君に後れず。今子は寡君に後るること一等ならず。寡君未だ過つ所を知らざるなり。子其れ少しく安んぜよ。」孫子辞無く、亦悛むる容無し。穆子退きて人に告げて曰く、「孫子必ず亡びん。亡臣にして君に後れず、過ちて悛めざるは、亡の本なり。」或ひと曰く、天子道を失へば、諸侯之を伐つ、故に湯・武有り。諸侯道を失へば、大夫之を伐つ、故に斉・晋有り。臣にして君を伐つ者必ず亡びば、則ち是れ湯・武は王たらず、晋・斉は立たざるなり。孫子は衛に君たり、而して後に魯に臣たらず、臣の君なり。君に失有り、故に臣に得有り。亡を失有るの君に命ぜずして、亡を得有るの臣に命ずるは、察せず。魯は衛の大夫を誅するを得ず、而して衛君の明は悛めざるの臣を知らず。孫子是の二つ有りと雖も、巨ぞ以て亡びん。其の亡ぶる所以を其れ失ふは、君を得る所以なり。或ひと曰く、臣主の施は、分なり。臣能く君を奪ふ者は、得を以て相踦すればなり。故に其の分に非ずして取る者は、衆の奪ふ所なり。其の分を辞して取る者は、民の予ふる所なり。是を以て桀は㟭山の女を索め、紂は比干の心を求めて、天下離る。湯は身名を易へ、武は身詈を受けて、海内服す。趙咺は山に走り、田氏は外に僕して、斉・晋従ふ。則ち湯・武の王たる所以、斉・晋の立つ所以は、必ずしも其の君を以てするに非ざるなり、彼之を得て而る後に君を以て之に処るなり。
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『韓非子』外儲說左下第三十三陽虎議して曰く、「主賢明なれば、則ち心を悉くして以て之に事ふ。不肖なれば、則ち姦を飾りて之を試む。」魯に逐はれ、斉に疑はれ、走りて趙に之く、趙の簡主迎へて之を相とす。左右曰く、「虎善く人の国政を竊む、何の故に相とするや。」