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韓非子 / 外儲說左上第三十二

擿其堅,癸五寸,射稽二寸。夫良藥苦於口,而智者勸而飲之,知其入而已己疾也。

新字:擿其堅,癸五寸,射稽二寸。夫良薬苦於口,而智者勧而飲之,知其入而已己疾也。

書き下し

其の堅きを擿つに、癸は五寸、射稽は二寸なり。夫れ良薬は口に苦し、而れども智者勧めて之を飲む、其の入りて己の疾を已すを知ればなり。

現代語訳

(宋王が武宮を築かせたとき、謳癸が歌うと人夫は疲れを忘れて働き、射稽が歌うと人夫は疲れてはかどらなかった。王が射稽の歌を劣ると言うと、射稽は築いた壁を調べるよう求めた。)壁の固さを突いて調べると、謳癸の担当した所は五寸も刺さり、射稽の所は二寸しか刺さらなかった。そもそも良い薬は口に苦いが、賢い者は進んでこれを飲む。体に入れば自分の病を治すことを知っているからである。

解説

経一の「謳癸武宮を築く」と「薬酒忠言は明君聖主の以て独り知る所なり」を受けた説話です。宋王の武宮の工事で、歌い手の謳癸が歌うと人夫は楽しんで働き、射稽の歌では足取りが重くなりました。ところが出来上がった壁を突いてみると、謳癸の担当部分は刃が五寸も入る柔らかさで、射稽の部分は二寸しか入りませんでした。耳に心地よいものが良い結果を生むとは限らないのです。続く「良薬は口に苦し」は、苦い忠言の価値は賢い君主にしかわからないという経の主張を受けています。職場の雰囲気の良さや会議の盛り上がりと、仕事の出来とは別物です。結果を測る物差しを持っていなければ、この違いは見えません。

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