韓非子 / 觀行第二十四
時有滿虚,事有利害,物有生死,人主爲三者發喜怒之色,則金石之士離心焉。聖賢之樸深矣。故明主觀人,不使人觀己。明於堯不能獨成,烏獲不能自舉,賁、育之不能自勝,以法術則觀行之道畢矣。
新字:時有満虚,事有利害,物有生死,人主為三者発喜怒之色,則金石之士離心焉。聖賢之樸深矣。故明主観人,不使人観己。明於堯不能独成,烏獲不能自舉,賁、育之不能自勝,以法術則観行之道畢矣。
書き下し
時に満虚有り、事に利害有り、物に生死有り。人主、三者の為に喜怒の色を発すれば、則ち金石の士も心を離す。聖賢の樸深し。故に明主は人を観て、人をして己を観しめず。堯の独り成すこと能はず、烏獲の自ら挙ぐること能はず、賁・育の自ら勝つこと能はざるに明らかにして、法術を以てすれば、則ち観行の道畢はる。
現代語訳
時には満ちるときと欠けるときがあり、事には利と害があり、物には生と死がある。君主がこの三つのことにいちいち喜怒の色を見せれば、金石のように堅い志の士でさえ心が離れていく。聖人や賢者の飾らない本性は奥深い(ので外に表さない)。だから明主は人を観察し、人に自分を観察させない。堯でも一人では事を成し遂げられず、烏獲でも自分を持ち上げられず、孟賁・夏育でも自分に勝てないことをよく理解し、法と術によって治めれば、人の行いを観る道はこれで尽きる。
解説
観行篇の結びです。時勢の満ち欠け、事の利害、物の生死に一喜一憂して感情を顔に出す君主からは、どれほど忠実な臣下でも心が離れると韓非は言います。感情を見せれば、臣下はそれに合わせて振る舞い、君主は本当の姿を見られなくなるからです。「明主は人を観て、人をして己を観しめず」は、主道篇の虚静の思想と重なる、術の核心を示す名句です。そのうえで、堯のような聖人も烏獲のような力士も一人では限界がある以上、頼るべきは法と術だと締めくくります。リーダーが業績の上下にいちいち感情を露わにすると、部下は顔色をうかがって本当の状況を報告しなくなります。
関連する章句
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