韓非子 / 飾邪第十九
故君臣異心,君以計畜臣,臣以計事君,君臣之交,計也。害身而利國,臣弗爲也;
新字:故君臣異心,君以計畜臣,臣以計事君,君臣之交,計也。害身而利国,臣弗為也;
書き下し
故に君臣心を異にす。君は計を以て臣を畜ひ、臣は計を以て君に事ふ。君臣の交はりは、計なり。身を害して国を利するは、臣為さざるなり。
現代語訳
だから君主と臣下は心を異にしている。君主は損得の計算によって臣下を養い、臣下は損得の計算によって君主に仕える。君臣の交わりは、計算である。自分の身を害してまで国に利益をもたらすことは、臣下はしない。
解説
「飾邪」篇にある、韓非の君臣観を最もはっきり示した言葉の一つです。君主も臣下も互いに損得を計算して付き合っており、君臣の関係は情ではなく「計」だと言い切ります。だから臣下は、自分の身を犠牲にしてまで国のために尽くすことはしない。この後、国を害して臣下を利することは君主もしない、と対になる句が続きます。冷たく聞こえますが、利害の計算を前提にするからこそ、賞罰で臣下の利益と国の利益を一致させる仕組みが必要だという結論になります。社員に自己犠牲を期待するより、会社の利益と社員の利益が重なる仕組みを作る方が、はるかに確実だという教えです。
関連する章句
-
『韓非子』飾邪第十九君臣とは、計を以て合う者なり。夫の難に臨んで死を必し、智を盡くし力を竭くすに至りては、法の為に之を為す。
-
『韓非子』難一第三十六且つ臣は死力を盡くして以て君と市し、君は爵祿を垂れて以て臣と市す。君臣の際は、父子の親しきに非ざるなり。計數の出づる所なり。
-
『韓非子』姦劫弒臣第十四夫れ君臣は骨肉の親有るに非ず。正直の道以て利を得べくんば、則ち臣力を尽くして以て主に事ふ。正直の道以て安きを得べからずんば、則ち臣私を行ひて以て上に干む。明主は之を知る。故に利害の道を設けて、以て天下に示すのみ。夫れ是を以て人主口づから百官に教へず、目づから姦邪を索めずと雖も、而も国已に治まる。人主は、目離婁の若くして乃ち明と為すに非ず、耳師曠の若くして乃ち聡と為すに非ず。目必ず其の数に任ぜずして、目を待ちて以て明と為せば、見る所の者少なし、弊はれざるの術に非ざるなり。耳必ず其の勢に因らずして、耳を待ちて以て聡と為せば、聞く所の者寡し、欺かれざるの道に非ざるなり。
-
『韓非子』八經第四十八臣主の異利を知る者は王たり、以て同じと爲す者は劫かされ、與に事を共にする者は殺さる。
-
『韓非子』孤憤第十一主の利は能有りて官に任ずるに在り、臣の利は能無くして事を得るに在り。…主の利は豪傑の能を使うに在るも、臣の利は朋黨して私を用うるに在り。
-
『韓非子』備內第十七人臣の其の君に於けるや、骨肉の親有るに非ざるなり。勢に縛られて事へざるを得ざるなり。