韓非子 / 孤憤第十一
此四助者,邪臣之所以自飾也。重人不能忠主而進其仇,人主不能越四助而燭察其臣,故人主愈弊而大臣愈重。凡當塗者之於人主也,希不信愛也,又且習故。若夫即主心,同乎好惡,固其所自進也。官爵貴重,朋黨又衆,而一國爲之訟。則法術之士欲干上者,非有所信愛之親、習故之澤也,又將以法術之言矯人主阿辟之心,是與人主相反也。處勢卑賤,無黨孤特。
新字:此四助者,邪臣之所以自飾也。重人不能忠主而進其仇,人主不能越四助而燭察其臣,故人主愈弊而大臣愈重。凡当塗者之於人主也,希不信愛也,又且習故。若夫即主心,同乎好悪,固其所自進也。官爵貴重,朋党又衆,而一国為之訟。則法術之士欲干上者,非有所信愛之親、習故之沢也,又将以法術之言矯人主阿辟之心,是与人主相反也。処勢卑賤,無党孤特。
書き下し
此の四助は、邪臣の自ら飾る所以なり。重人は主に忠にして其の仇を進むること能はず、人主は四助を越えて其の臣を燭察すること能はず。故に人主愈弊れて大臣愈重し。凡そ当塗者の人主に於けるや、信愛せられざるは希なり、又且つ習故なり。夫の主の心に即き、好悪を同じくするが若きは、固より其の自ら進む所なり。官爵貴重にして、朋党又衆く、而して一国之が為に訟ふ。則ち法術の士の上に干めんと欲する者は、信愛の親、習故の沢有る所に非ざるなり。又将に法術の言を以て人主阿辟の心を矯めんとす。是れ人主と相反するなり。勢の卑賤に処り、党無くして孤特なり。
現代語訳
この四つの助け(諸侯・百官・側近・学者)こそ、邪な臣下が自分を飾り立てる手段である。重臣は君主に忠実に仕えて、自分の仇である法術の士を推挙することなどできないし、君主は四つの助けを飛び越えて臣下を見通すことができない。だから君主はますます目をふさがれ、大臣はますます重くなる。そもそも要路にある者は、君主に信愛されていないことはまれであり、そのうえ長年なじんだ間柄である。君主の心に寄り添い、好き嫌いを同じくするのは、もともと彼らが出世してきた手立てなのだ。官爵は高く、仲間も多く、国じゅうが彼のために弁護する。一方、法術の士で君主に仕えようとする者には、信愛される親しみも、長年のなじみの恩もない。そのうえ法術の言葉で君主の偏った心を正そうとするのだから、これは君主と正面から逆らうことになる。地位は低く、仲間もなく、ただ一人孤立している。
解説
関連する章句
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『韓非子』孤憤第十一是を以て国地削られて私家富み、主上卑くして大臣重し。故に主勢を失ひて臣国を得、主更に蕃臣と称して、相室符を剖く。此れ人臣の主を譎りて私に便する所以なり。故に当世の重臣、主勢を変じて寵を固むることを得る者は、十に二三も無し。是れ其の故何ぞや。人臣の罪大なればなり。臣の大罪有る者は、其の行ひ主を欺くなり、其の罪死亡に当たるなり。智士は遠く見て死亡を畏る、必ず重人に従はず。
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『韓非子』孤憤第十一法術の士は五不勝の勢を操り、歳数を以てして又見ゆることを得ず。当塗の人は五勝の資に乗じて、旦暮独り前に説く。故に法術の士は奚れの道にか進むことを得ん、而して人主は奚れの時にか悟ることを得んや。故に資必ず勝たずして勢両存せず、法術の士焉んぞ危からざることを得んや。
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『韓非子』孤憤第十一当塗の人、事要を擅にすれば、則ち外内之が為に用ゐらる。
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『韓非子』人主第五十二何を以て之を明らかにするや。主に術士有れば、則ち大臣制斷するを得ず、近習敢へて重を賣らず。大臣・左右の權勢息めば、則ち人主の道明らかなり。
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『韓非子』孤憤第十一其の借すに美名を以てすべからざる者は、外権を以て之を重くす。是を以て主上を弊ひて私門に趨く者は、官爵に顕れざれば、必ず外権に重し。今人主参験を合はせずして誅を行ひ、功を見るを待たずして爵禄す。故に法術の士、安んぞ能く死亡を蒙りて其の説を進めん。姦邪の臣、安んぞ肯へて利に乗じて其の身を退かん。故に主上愈卑くして、私門益尊し。夫れ越は国富み兵強しと雖も、中国の主は皆己に益無きを知るなり。曰く、「吾が制する所に非ざるなり」と。今国を有つ者、地広く人衆しと雖も、然れども人主壅蔽せられ、大臣権を専らにす。是れ国越と為るなり。智の越に類せざるを知りて、其の国に類せざるを智らざるは、其の類を察せざる者なり。人の斉亡ぶと謂ふ所以の者は、地と城と亡ぶるに非ず、呂氏制せずして田氏之を用ふればなり。晋亡ぶと謂ふ所以の者も、亦地と城と亡ぶるに非ず、姫氏制せずして六卿之を専らにすればなり。今大臣柄を執りて独断し、而して上収むることを知らず。是れ人主の不明なり。死人と病を同じくする者は、生くべからず。亡国と事を同じくする者は、存すべからず。今跡を斉・晋に襲ひて、国の安存を欲するも、得べからざるなり。凡そ法術の行はれ難きや、独り万乗のみならず、千乗も亦然り。人主の左右は必ずしも智ならず。人主人に於て智とする所有りて之を聴き、因りて左右と其の言を論ず。是れ愚人と智を論ずるなり。人主の左右は必ずしも賢ならず。人主人に於て賢とする所有りて之を礼し、因りて左右と其の行ひを論ず。是れ不肖と賢を論ずるなり。智者策を愚人に決せられ、賢士行ひを不肖に程られば、則ち賢智の士羞ぢて、人主の論悖る。人臣の官を得んと欲する者、其の修士は且に精絜を以て身を固めんとし、其の智士は且に治辯を以て業を進めんとす。
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『韓非子』孤憤第十一智術の士は、必ず遠く見て明らかに察す。明らかに察せざれば、私を燭らすこと能はず。能法の士は、必ず強毅にして勁直なり。勁直ならざれば、姦を矯むること能はず。人臣の令に循ひて事に従ひ、法を案じて官を治むるは、重人と謂ふに非ざるなり。