韓非子 / 八姦第九
故財利多者買官以爲貴,有左右之交者請謁以成重。功勞之臣不論,官職之遷失謬。是以吏偷官而外交,弃事而親財。是以賢者懈怠而不勸,有功者隳而簡其業,此亡國之風也。
新字:故財利多者買官以為貴,有左右之交者請謁以成重。功労之臣不論,官職之遷失謬。是以吏偸官而外交,弃事而親財。是以賢者懈怠而不勧,有功者隳而簡其業,此亡国之風也。
書き下し
故に財利多き者は官を買ひて以て貴と為り、左右の交はり有る者は請謁して以て重きを成す。功労の臣論ぜられず、官職の遷り謬を失ふ。是を以て吏は官を偸みて外に交はり、事を棄てて財に親しむ。是を以て賢者は懈怠して勧まず、功有る者は隳りて其の業を簡る、此れ亡国の風なり。
現代語訳
だから財産の多い者は官職を買って高い地位に就き、側近とつながりのある者は頼み込んで重んじられる。功労のある臣は評価されず、官職の異動は筋道を失う。そのため役人は官職を盗み取るようにして外部と交わり、仕事を放り出して財貨に親しむ。そのため賢者は怠けて励まず、功のある者は気落ちして仕事をおろそかにする。これこそ亡国の風潮である。
解説
八姦篇の結びで、官職が金や縁故で売り買いされ、功労のある臣が評価されない国の姿を描く一節です。財産のある者が官を買い、側近に通じた者が口利きで重んじられると、役人は仕事より外部との付き合いや蓄財に励み、賢者も功ある者もやる気を失う、という連鎖が簡潔に示されています。この前には、明主は官職と爵禄を賢才と功績に応じて与えるべきだという主張があり、その反対の姿がここで描かれます。組織でも、昇進や配置が実績ではなく人脈や社内政治で決まると、真面目に成果を出してきた人ほど意欲を失います。人事の公正さは、組織の活力そのものを左右するのです。
関連する章句
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『韓非子』八姦第九故に曰く、賢材なる者は厚禄に處り、大官に任ず。功大なる者は尊爵有り、重賞を受くと。賢を官する者は其の能を量り、禄を賦する者は其の功を稱(はか)る。是を以て賢者は能を誣(し)ひて以て其の主に事へず、功有る者は樂しみて其の業を進む、故に事成り功立つ。今は則ち然らず。賢不肖を課せず、功勞有るを論ぜず、諸侯の重んずるを用ひ、左右の謁を聽き、父兄大臣は上に爵禄を請ひて、下に之を賣り、以て財利を收め及び以て私黨を樹つ。
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『韓非子』亡徵第十五官職、重を以て求むべく、爵禄、貨を以て得べき者は、亡ぶべきなり。
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『韓非子』八姦第九賢を官にするには其の能を量り、禄を賦するには其の功に稱わす。
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『韓非子』八姦第九其の説議に於けるや、称誉する者の善とする所、毀疵する者の悪む所、必ず其の能を実にし、其の過ちを察し、群臣をして相為に語らしめず。其の勇力の士に於けるや、軍旅の功は賞を踰ゆる無く、邑闘の勇は罪を赦す無く、群臣をして私財を行はしめず。其の諸侯の求索に於けるや、法なれば則ち之を聴き、法ならざれば則ち之を距ぐ。所謂亡君とは、其の国を有する莫きに非ざるなり、而して之を有する者皆己の有に非ざるなり。臣をして外を以て内に制を為さしむれば、則ち是れ人に君たる者亡ぶ。大国に聴くは亡を救はんが為なり、而して亡ぶこと聴かざるより亟やかなり、故に聴かず。群臣聴かざるを知れば、則ち諸侯に外せず。
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『韓非子』姦劫弒臣第十四人焉んぞ能く安利の道を去りて危害の処に就かんや。国を治むること此くの若く其れ過てり。而して上、下の姦無く、吏の法を奉ずることを欲するも、其の得べからざること亦明らかなり。故に左右、貞信の以て安利を得べからざるを知れば、必ず曰く、「我忠信を以て上に事へ、功労を積みて安きを求むるは、是れ猶盲にして黒白の情を知らんと欲するがごとし、必ず幾からず。若し道を以て化し正理を行ひ、富貴に趨かず、上に事へて安きを求むるは、是れ猶聾にして清濁の声を審らかにせんとするがごとし、愈幾からず。二者以て安きを得べからずんば、我安んぞ能く相比周し、主上を蔽ひ、姦私を為して以て重人に適すること無からんや」と。此れ必ず人主の義を顧みず。其の百官の吏も亦方正の以て安きを得べからざるを知れば、必ず曰く、「我清廉を以て上に事へて安きを求むるは、規矩無くして方円を為さんと欲するが若し、必ず幾からず。若し法を守り朋党せずして官を治めて安きを求むるは、是れ猶足を以て頂を搔くがごとし、愈幾からず。二者以て安きを得べからずんば、能く法を廃し私を行ひて以て重人に適すること無からんや」と。
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