韓非子 / 八姦第九
凡人臣之所道成姦者有八術:一曰在同牀。何謂同牀?曰:貴夫人,愛孺子,便僻好色,此人主之所惑也。託於燕處之虞,乘醉飽之時,而求其所欲,此必聽之術也。
新字:凡人臣之所道成姦者有八術:一曰在同牀。何謂同牀?曰:貴夫人,愛孺子,便僻好色,此人主之所惑也。託於燕処之虞,乗酔飽之時,而求其所欲,此必聴之術也。
書き下し
凡そ人臣の道りて姦を成す所の者に八術有り。一に曰く同牀に在り。何をか同牀と謂ふ。曰く、貴夫人、愛孺子、便僻好色は、此れ人主の惑ふ所なり。燕処の虞に託し、酔飽の時に乗じて、其の欲する所を求む、此れ必ず聴かるるの術なり。
現代語訳
およそ臣下が悪事を成し遂げるのに用いる方法には八つある。一つ目は「同じ寝床にいる者」を使うことである。同じ寝床とは何か。君主が重んじる夫人、かわいがる幼い子、へつらい上手な寵臣や美女、これらは君主が惑わされる相手である。くつろいでいる楽しいひとときや、酔って満腹の時をねらって、望むものを求めれば、これは必ず聞き入れられる方法である。
解説
「八姦」は、臣下が君主を惑わして悪事を成し遂げる八つの手口を列挙した篇で、この段はその冒頭と第一の「同牀」です。君主の夫人や愛児、寵愛する者は、くつろいだ時や酒に酔った時に頼みごとをすれば必ず聞き入れられるので、臣下はこれらの人々を通じて君主を動かす、と韓非は指摘します。正面からの進言よりも、私生活の近しい人を通じた頼みのほうが通りやすいという人間の弱さを見抜いた分析です。現代でも、経営者の家族や親しい知人を通じて意思決定に影響を与えようとする動きはあります。公の判断と私的な関係の境目を意識しておくことが、トップの防御になります。
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『韓非子』八姦第九八に曰く四方。何をか四方と謂ふ。曰く、人に君たる者は、国小なれば則ち大国に事へ、兵弱ければ則ち強兵を畏る。大国の索むる所は、小国必ず聴き、強兵の加ふる所は、弱兵必ず服す。人臣為る者は、賦斂を重くし、府庫を尽くし、其の国を虚しくして以て大国に事へ、而して其の威を用ゐて其の君を求誘す。甚だしき者は兵を挙げて以て辺境に聚めて内に制斂し、薄き者は数々大使を内れて以て其の君を震はし、之をして恐懼せしむ、此を之れ四方と謂ふ。凡そ此の八者は、人臣の道りて姦を成し、世主の壅劫せられ、其の有する所を失ふ所以なり、察せざるべからず。明君の内に於けるや、其の色を娯しみて其の謁を行はず、私請せしめず。其の左右に於けるや、其の身を使ひて必ず其の言を責め、辞を益さしめず。其の父兄大臣に於けるや、其の言を聴くや必ず罰を以て後に任ぜしめ、妄りに挙げしめず。其の観楽玩好に於けるや、必ず之をして出づる所有らしめ、擅に進め擅に退くを使めず、群臣をして其の意を虞らしめず。
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