韓非子 / 有度第六
且上用目,則下飾觀;上用耳,則下飾聲;
新字:且上用目,則下飾観;上用耳,則下飾声;
書き下し
且つ上目を用ゐれば、則ち下観を飾る。上耳を用ゐれば、則ち下声を飾る。
現代語訳
しかも、上に立つ者が自分の目に頼れば、下の者は見かけを飾る。上に立つ者が自分の耳に頼れば、下の者は聞こえのよい言葉を飾る。
解説
君主が自分の目や耳だけで臣下を判断しようとすると、臣下は見た目や言葉を飾ってそれに合わせる、という短い警句です。この後、上が考えに頼れば下は弁舌を飾ると続き、だから先王は自分の感覚ではなく法に頼ったのだ、という議論につながります。君主一人の感覚には限界があり、しかもその感覚は読まれて利用される、という指摘は、主道篇の好悪を隠せという教えとも通じています。職場でも、上司が現場を見に来る日だけ整えられた職場、上司が喜ぶ言葉だけが並ぶ報告は珍しくありません。自分の目と耳で確かめたつもりの情報ほど、相手に演出されている可能性を疑う必要があります。
関連する章句
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『韓非子』有度第六能く私行を去りて公法を行ふ者は、則ち兵強くして敵弱し。故に得失を審らかにして法度の制有る者を、群臣の上に加ふれば、則ち主詐偽を以て欺くべからず。得失を審らかにして権衡の称有る者を、以て遠事を聴かしむれば、則ち主天下の軽重を以て欺くべからず。
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『韓非子』主道第五君は其の欲する所を見す無かれ。君、其の欲する所を見せば、臣将に自ら雕琢せんす。
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『韓非子』有度第六能者は弊ふべからず、敗者は飾るべからず、誉者も進むること能はず、非者も退くること能はざれば、則ち君臣の間明辯にして治め易し。故に主法を讎すれば則ち可なり。賢者の人臣と為るや、北面して質を委ね、二心有る無し。朝廷には敢へて賤を辞せず、軍旅には敢へて難を辞せず。上の為す所に順ひ、主の法に従ひ、虚心以て令を待ちて、是非無きなり。故に口有りて以て私言せず、目有りて以て私視せずして、上尽く之を制す。人臣為る者は、之を譬ふれば手の若し、上は以て頭を脩め、下は以て足を脩む。清暖寒熱、救はざるを得ず。鏌鋣体に傅けば、敢へて搏たざらず。賢哲の臣を私する無く、事能の士を私する無し。故に民郷を越えて交はらず、百里の慼無し。貴賤相踰えず、愚智提衡して立つは、治の至りなり。今夫れ爵禄を軽んじ、去亡を易くし、以て其の主を択ぶは、臣廉と謂はず。詐説して法に逆らひ、主に倍きて強諫するは、臣忠と謂はず。恵を行ひ利を施し、下を収めて名を為すは、臣仁と謂はず。俗を離れて隠居し、而して詐を以て上を非るは、臣義と謂はず。外は諸侯に使ひし、内は其の国を耗らし、其の危嶮の陂を伺ひ、以て其の主を恐れしめて曰く、「交はりは我に非ずんば親しまず、怨みは我に非ずんば解けず」と。而るに主乃ち之を信じ、国を以て之に聴き、主の名を卑しくして以て其の身を顕し、国の厚きを毀ちて以て其の家を利するは、臣智と謂はず。此の数物の者は、険世の説なり、而して先王の法の簡する所なり。先王の法に曰く、「臣或いは威を作す毋かれ、或いは利を作す毋かれ、王の指に従へ。或いは悪を作す無かれ、王の路に従へ」と。
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『韓非子』有度第六若し党を以て官を挙ぐれば、則ち民交はりを務めて法に用ゐらるるを求めず。故に官の能を失ふ者は其の国乱る。誉を以て賞と為し、毀を以て罰と為せば、則ち賞を好み罰を悪む人は、公行を釈て、私術を行ひ、比周して以て相為さん。
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『韓非子』有度第六今若し譽を以て能を進むれば、則ち臣は上に離れて下に比周す。
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『韓非子』有度第六先王の守る所要なり、故に法省きて侵されず。独り四海の内を制し、聡智も其の詐を用ゐるを得ず、険躁も其の佞を関するを得ず、姦邪も依る所無し。遠く千里の外に在るも、敢へて其の辞を易へず。勢郎中に在るも、敢へて善を蔽ひ非を飾らず。朝廷の群下、直湊単微にして、敢へて相踰越せず。故に治むること足らずして日に余り有るは、上の勢に任ずること然らしむるなり。夫れ人臣の其の主を侵すや、地形の如し、即ち漸く以て往き、人主をして端を失はしめ、東西面を易へて自ら知らず。故に先王は司南を立てて以て朝夕を端す。故に明主は其の群臣をして意を法の外に遊ばしめず、恵を法の内に為さしめず、動くこと法に非ざる無し。峻法は、過ちを禁じ私を外にする所以なり。厳刑は、令を遂げ下を懲らす所以なり。威は貳錯せず、制は門を共にせず。威・制共にすれば、則ち衆邪彰る。法信ならざれば、則ち君の行ひ危ふし。刑断ぜざれば、則ち邪勝へず。故に曰く、巧匠は目意もて縄に中るも、然れども必ず先づ規矩を以て度と為す。上智は捷挙して事に中るも、必ず先王の法を以て比と為す。故に縄直くして枉木斲られ、準夷らかにして高科削られ、権衡縣けて重きは軽きに益し、斗石設けて多きは少なきに益す。