孫子 / 用間篇
相守數年,以爭一日之勝,而愛爵祿百金,不知敵之情者,不仁之至也,非人之將也,非主之佐也,非勝之主也。
新字:相守数年,以争一日之勝,而愛爵禄百金,不知敵之情者,不仁之至也,非人之将也,非主之佐也,非勝之主也。
書き下し
相守ること数年、以て一日の勝を争う。而るに爵禄百金を愛しみて、敵の情を知らざる者は、不仁の至りなり。人の将に非ざるなり、主の佐に非ざるなり、勝の主に非ざるなり。
現代語訳
数年にわたって睨み合い、たった一日の勝敗を争う。それなのに官位や俸禄や金銭を惜しんで敵の内情を知ろうとしない者は、不仁のきわみである。人の将ではなく、君主の補佐ではなく、勝利の主ではない。
解説
情報に金を惜しむことを、孫子は「不仁のきわみ」とまで呼んだ。仁という徳目をここで持ち出すのは意外に思えるが、理由は明快である。情報にかける費用を惜しめば、その分だけ兵が死ぬ。数年分の戦費に比べれば間者への報酬など微々たるものなのに、目に見える支出のほうを惜しむ。人は効果の測りにくい支出から削る。調査、分析、外部の知見——いずれも成果との対応が見えにくく、真っ先に削られる。だがそこを削った結果は、必ず現場が払うことになる。