韓非子 / 有度第六
若以黨舉官,則民務交而不求用於法。故官之失能者其國亂。以譽爲賞,以毁爲罰也,則好賞惡罰之人,釋公行,行私術,比周以相爲也。
新字:若以党舉官,則民務交而不求用於法。故官之失能者其国乱。以誉為賞,以毀為罰也,則好賞悪罰之人,釈公行,行私術,比周以相為也。
書き下し
若し党を以て官を挙ぐれば、則ち民交はりを務めて法に用ゐらるるを求めず。故に官の能を失ふ者は其の国乱る。誉を以て賞と為し、毀を以て罰と為せば、則ち賞を好み罰を悪む人は、公行を釈て、私術を行ひ、比周して以て相為さん。
現代語訳
もし派閥の推薦で官職に取り立てれば、民は人付き合いに励んで、法に従って用いられることを求めなくなる。だから官職が能力を失えば国は乱れる。評判がよいことを賞の理由とし、悪口を言われることを罰の理由とすれば、賞を好み罰を嫌う人々は公の行いを捨て、私的な手管を使い、徒党を組んで互いにかばい合うようになる。
解説
派閥の推薦や世間の評判で人を取り立てたり罰したりすると、人々は仕事より人付き合いや根回しに励むようになり、国が乱れると説く一節です。評判を基準にすれば、評判を作るために徒党を組み互いにほめ合う者が得をする、という因果を冷静に見抜いています。韓非は、法に定めた基準と実績で人を用いることを主張し、儒家が重んじる名声や推薦による登用を批判しました。現代の組織でも、社内の人気や派閥の後押しで昇進が決まると、社員は成果よりも社内政治に力を注ぎます。人事の基準を実績と明確な物差しに置くことが、組織の健全さを保つ鍵です。
関連する章句
-
『韓非子』有度第六今若し譽を以て能を進むれば、則ち臣は上に離れて下に比周す。
-
『韓非子』有度第六過ちを刑するに大臣をも避けず、善を賞するに匹夫をも遺れず。
-
『韓非子』有度第六能く私行を去りて公法を行ふ者は、則ち兵強くして敵弱し。故に得失を審らかにして法度の制有る者を、群臣の上に加ふれば、則ち主詐偽を以て欺くべからず。得失を審らかにして権衡の称有る者を、以て遠事を聴かしむれば、則ち主天下の軽重を以て欺くべからず。
-
『韓非子』有度第六是くの若くんば、則ち群臣法を廃して私重を行ひ、公法を軽んず。数々能人の門に至りて、壱たびも主の廷に至らず。百たび私家の便を慮りて、壱たびも主の国を図らず。属数多しと雖も、君を尊ぶ所以に非ざるなり。百官具はると雖も、国を任ふ所以に非ざるなり。然らば則ち主は人主の名有りて、実は群臣の家に託するなり。故に臣曰く、「亡国の廷には人無し」と。廷に人無しとは、朝廷の衰ふるに非ざるなり。家は相益すを務めて、国を厚くするを務めず。大臣は相尊ぶを務めて、君を尊ぶを務めず。小臣は禄を奉じ交はりを養ひて、官を以て事と為さず。此れ其の然る所以の者は、主の上法に断ぜずして、下を信じて之を為さしむるに由るなり。
-
『韓非子』有度第六忠臣は非罪に危死し、姦邪の臣は無功に安利す。
-
『韓非子』有度第六故に明主は法をして人を擇ばしめ、自ら舉げざるなり。法をして功を量らしめ、自ら度らざるなり。