韓非子 / 愛臣第四
昔者紂之亡,周之卑,皆從諸侯之博大也;晉之分也,齊之奪也,皆以羣臣之太富也。夫燕、宋之所以弑其君者,皆此類也。
新字:昔者紂之亡,周之卑,皆従諸侯之博大也;晋之分也,斉之奪也,皆以羣臣之太富也。夫燕、宋之所以弑其君者,皆此類也。
書き下し
昔者紂の亡ぶる、周の卑しき、皆諸侯の博大なるに従るなり。晋の分かるるや、斉の奪はるるや、皆群臣の太だ富めるを以てなり。夫れ燕・宋の其の君を弑する所以の者は、皆此の類なり。
現代語訳
昔、殷の紂王が滅び、周王室が衰えたのは、いずれも諸侯が大きくなりすぎたからである。晋が三つに分かれ、斉が乗っ取られたのは、いずれも臣下たちが富みすぎたからである。燕や宋で臣下が君主を殺したのも、みなこの類である。
解説
臣下や諸侯が強大になりすぎると国が滅ぶことを、歴史の実例で裏づける一節です。晋が韓・魏・趙の三家に分割されたこと、斉の君主の座が田氏に奪われたことは、戦国時代の始まりを画する大事件でした。燕では宰相の子之が王位を譲られて国が乱れ、宋でも臣下による簒奪があったとされます。韓非はこれらを、君主が臣下の富と力を放置した結果だと一括して捉えています。企業でも、有力な事業部門や子会社が本体をしのぐ力を持ち、経営陣の意向が通らなくなる例は珍しくありません。部下の成長を喜びつつ、組織全体の統制が保たれているかを見続けることが上に立つ者の務めです。
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