海国兵談抄録 / 第十六巻 略書・経済九要の続きと武備・制度・法令
扨人の道立ても、不學ば智發く事なし、此故に學問を勸めて、智を開かしむ、此三ッは、人を取立る肝要の法也、武備は、軍陣の用意を不忘して、太平の世にも、治兵操練などして、人馬に戰法をも敎、又武器をも不取捨、制作修復する事也、制度は、事物に定式ありて、天子の事物は、天子の事物、諸侯、大夫、士、庶人の事物は、諸侯大夫士庶人の事物と、段々に定式あるを云、是尊卑を分ち、上下を明かにする道にして、且奢を防ぐの術也、法令は掟を立置て、其掟に不從者を仕置し、觸流す、敎令の廢せざる樣に爲る事にて、一人を懲して、千萬人を正す術也、官職は天下中の事、一人にて世話やかる〻者にあらざる故、諸の役目を立、人々の器量を撰て、夫々の職を授けて、一色づゝ世話致さする事也、地理とは、國の寒暖、地の厚薄、山澤河海、高下卑濕の差別を細に察して、寒暖厚薄山澤河海高下卑濕の利を不失、尺土も空く捨置ざる樣に、夫々の手あてを爲て、地の利を盡す事也、章服は、尊卑の冠冕衣服に、夫々の色分大小等有て、姿を見て、貴賤高下の人品を知、混亂無禮の出來せざる樣に講たる法也、此九ッは、經濟の大趣意也、又一條毎に說有と云ども、言長ければ不筆、但し推廣めて言ふ時は、經濟は、武備の根本、武備は經濟の補任なりと、合點すべし、本より經濟の仕形にも軍法の立派にも傳授と云も無き事也、
新字:扨人の道立ても、不学ば智発く事なし、此故に学問を勧めて、智を開かしむ、此三ッは、人を取立る肝要の法也、武備は、軍陣の用意を不忘して、太平の世にも、治兵操練などして、人馬に戦法をも教、又武器をも不取捨、制作修復する事也、制度は、事物に定式ありて、天子の事物は、天子の事物、諸侯、大夫、士、庶人の事物は、諸侯大夫士庶人の事物と、段々に定式あるを云、是尊卑を分ち、上下を明かにする道にして、且奢を防ぐの術也、法令は掟を立置て、其掟に不従者を仕置し、触流す、教令の廃せざる様に為る事にて、一人を懲して、千万人を正す術也、官職は天下中の事、一人にて世話やかる〻者にあらざる故、諸の役目を立、人々の器量を撰て、夫々の職を授けて、一色づゝ世話致さする事也、地理とは、国の寒暖、地の厚薄、山沢河海、高下卑湿の差別を細に察して、寒暖厚薄山沢河海高下卑湿の利を不失、尺土も空く捨置ざる様に、夫々の手あてを為て、地の利を尽す事也、章服は、尊卑の冠冕衣服に、夫々の色分大小等有て、姿を見て、貴賤高下の人品を知、混乱無礼の出来せざる様に講たる法也、此九ッは、経済の大趣意也、又一条毎に説有と云ども、言長ければ不筆、但し推広めて言ふ時は、経済は、武備の根本、武備は経済の補任なりと、合点すべし、本より経済の仕形にも軍法の立派にも伝授と云も無き事也、
書き下し
扨人の道立ても、不學ば智發く事なし、此故に學問を勸めて、智を開かしむ、此三ッは、人を取立る肝要の法也、武備は、軍陣の用意を不忘して、太平の世にも、治兵操練などして、人馬に戰法をも敎、又武器をも不取捨、制作修復する事也、制度は、事物に定式ありて、天子の事物は、天子の事物、諸侯、大夫、士、庶人の事物は、諸侯大夫士庶人の事物と、段々に定式あるを云、是尊卑を分ち、上下を明かにする道にして、且奢を防ぐの術也、法令は掟を立置て、其掟に不從者を仕置し、觸流す、敎令の廢せざる樣に爲る事にて、一人を懲して、千萬人を正す術也、官職は天下中の事、一人にて世話やかる〻者にあらざる故、諸の役目を立、人々の器量を撰て、夫々の職を授けて、一色づゝ世話致さする事也、地理とは、國の寒暖、地の厚薄、山澤河海、高下卑濕の差別を細に察して、寒暖厚薄山澤河海高下卑濕の利を不失、尺土も空く捨置ざる樣に、夫々の手あてを爲て、地の利を盡す事也、章服は、尊卑の冠冕衣服に、夫々の色分大小等有て、姿を見て、貴賤高下の人品を知、混亂無禮の出來せざる樣に講たる法也、此九ッは、經濟の大趣意也、又一條毎に說有と云ども、言長ければ不筆、但し推廣めて言ふ時は、經濟は、武備の根本、武備は經濟の補任なりと、合點すべし、本より經濟の仕形にも軍法の立派にも傳授と云も無き事也、
現代語訳
人の道が立っても、学ばなければ智が開くことはありません。このため学問を勧めて智を開かせます。食貨、礼式、学政の三つは、人を取り立てる肝要の法です。武備は、軍陣の用意を忘れず、太平の世にも兵を治め操練などをして、人馬に戦法を教え、また武器を捨てず、制作し修復することです。制度は、事物に定式があって、天子の事物は天子の事物、諸侯・大夫・士・庶人の事物はそれぞれ諸侯・大夫・士・庶人の事物と、段々に定式があることをいいます。これは尊卑を分け、上下を明らかにする道であり、また奢りを防ぐ術です。法令は掟を立て置いて、その掟に従わない者を処置し、触れ流して、教令が廃れないようにすることで、一人を懲らして千万人を正す術です。官職は、天下中のことを一人で世話できるものではないので、諸々の役目を立て、人々の器量を選んで、それぞれの職を授け、一色ずつ世話をさせることです。地理とは、国の寒暖、土地の厚薄、山沢や河海、高低や乾湿の別を細かく察して、その利を失わず、わずかな土地も空しく捨て置かないよう、それぞれ手当てをして、地の利を尽くすことです。章服は、尊卑それぞれの冠や衣服に色分けや大小などがあり、姿を見て貴賤高下の人品を知り、混乱や無礼が起きないようにした法です。この九つは、経済の大趣意です。また一条ごとに説があるとはいえ、言葉が長くなるので書きません。ただし、推し広げて言えば、経済は武備の根本であり、武備は経済の補任(補い)であると合点するべきです。もともと経済の仕方にも、軍法の立派さにも、伝授というものはありません。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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呂氏春秋・分職①先王の其の有に非ざるを用うること、己の之を有するが如きは、君道に通ずる者なればなり。夫れ君なる者は、虚に處り素に服して無智、故に能く衆智を使う。智は無能に反る、故に能く衆能を使う。能は無為を執る、故に能く衆為を使う。無智・無能・無為、此れ君の執る所なり。人主の惑う所の者は則ち然らず。其の智を以て智を彊め、其の能を以て能を彊め、其の為を以て為を彊むるも、此れ人臣の職に處るなり。人臣の職に處りて、而も壅塞無からんと欲するは、舜と雖も為す能わず。
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『韓非子』難一第三十六身死して蟲流れ戸を出でて葬られざるは、是れ臣重ければなり。臣重きの実は、主を擅にするなり。主を擅にするの臣有らば、則ち君令下に究まらず、臣情上に通ぜず。
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『韓非子』難二第三十七桓公曰く、「吾聞く、人に君たる者は人を索むるに労し、人を使うに佚すと。吾仲父を得ること已に難し。仲父を得るの後、何為れぞ易からざらんや。」
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三略・中略軍勢に曰く、軍を出だし師を行るは、将は自ら専らにするに在り。進退内より御せば、則ち功成り難し。
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史記 張釈之馮唐列伝吾独り廉頗・李牧を得て時に吾が将と為さざるか。吾豈に匈奴を憂へんや」と。唐曰く、「主臣。陛下廉頗・李牧を得と雖も、用ふること能はざるなり」と。上怒り、起ちて禁中に入る。良久しくして、唐を召して譲(せ)めて曰く、「公柰何ぞ衆にて我を辱むる。独り間処無からんや」と。唐謝して曰く、「鄙人忌諱を知らず」と。是の時に当たり、匈奴新たに大いに朝那に入り、北地の都尉卬を殺す。上胡寇を以て意と為し、乃ち卒に復た唐に問ひて曰く、「公何を以て吾が廉頗・李牧を用ふること能はざるを知るや」と。唐対へて曰く、「臣聞く、上古の王者の将を遣はすや、跪きて轂を推し、曰く閫(こん)以内は寡人之を制し、閫以外は将軍之を制すと。軍功爵賞は皆外に決し、帰りて之を奏す。此れ虚言に非ざるなり。臣の大父言ふ、李牧、趙の将と為りて辺に居り、軍市の租は皆自ら用ひて士を饗し、賞賜は外に決し、中より擾されずと。委任して成功を責む。故に李牧乃ち其の智能を尽くすを得たり。選車千三百乗、彀騎万三千、百金の士十万を遣はし、是を以て北のかた単于を逐ひ、東胡を破り、澹林を滅ぼし、西のかた彊秦を抑へ、南のかた韓・魏を支ふ。是の時に当たりて、趙幾(ほと)んど霸たらんとす。其の後会(たまたま)趙王遷立つ。其の母は倡なり。王遷立ち、乃ち郭開の讒を用ひ、卒に李牧を誅し、顔聚をして之に代はらしむ。是を以て兵破れ士北(に)げ、秦の禽滅する所と為る。今臣竊かに聞く、魏尚雲中の守と為り、其の軍市の租は尽く以て士卒を饗し、[出]私養の銭もて、五日に一たび牛を椎(う)ち、賓客・軍吏・舎人を饗す。是を以て匈奴遠く避け、雲中の塞に近づかず。虜曾て一たび入る。尚、車騎を率ゐて之を撃ち、殺す所其れ衆し。夫れ士卒は尽く家人の子にして、田中より起ちて軍に従ふ。安くんぞ尺籍・伍符を知らん。終日力戦し、首を斬り虜を捕へ、功を莫府に上るに、一言相応ぜざれば、文吏法を以て之を縄す。其の賞行はれずして吏の法を奉ずるは必ず用ひらる。
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『晏子春秋』諫上・景公從畋十八日不返國晏子諫景公、署梁に畋し、十有八日にして返らず。晏子、国より往きて公に見ゆ。至るに比び、衣冠正しからず。衣冠を革めず、遊を望みて馳す。公、晏子を望み見、車を下りて逆え労いて曰く、「夫子、何ぞ遽かなる。国家に故有ること無きか」と。晏子対えて曰く、「亦急ならずや。然りと雖も、嬰、復すること有らんことを願う。国人皆君を以て野に安んじて国に安んぜず、獣を好みて民を悪むと為す。乃ち不可ならざらんや」と。公曰く、「何ぞや。吾、夫婦の獄訟の正しからざるが為ならば、則ち泰士子牛存せり。社稷宗廟の享けざるが為ならば、則ち泰祝子遊存せり。諸侯賓客の之に応ずる莫きが為ならば、則ち行人子羽存せり。田野の辟かれず、倉庫の実たざるが為ならば、則ち申田存せり。国家の余り有り不足あるを聘うが為ならば、則ち吾が子存せり。寡人の五子有るは、猶お心の四支有るがごとし。心に四支有り、故に心は佚を得たり。今、寡人に五子有り、故に寡人は佚を得たり。豈に不可ならんや」と。晏子対えて曰く、「嬰之を聞く、君の言とは異なり。若し乃ち心に四支有りて、心は佚を得ば、則ち可なり。四支をして心無からしめて、十有八日、亦久しからずや」と。公、是に於いて畋を罷めて帰る。

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