導師導古典を学びたいすべての人に 法人向けワークシート法人向けワークシート

海国兵談抄録 / 第十六巻 略書・真の武将と国賊、文によって武を知る

武は天下の大德なる事必せり、此趣を呑込て、各其祿に應じて、備を不弛を眞の武將と云也、亦利慾を恣にして、人の土地を貪り、或は私の恨に干戈を動し、又は人の富貴を羨て、妄りに兵を出し、徒に人を殺戮し、國家の患をなす、是を國賊と云也、此二を能會得して、國家に主たる者、武の本體を失ふべからず、扨武の本體を會得するには文に因べし、文は書を讀を本とす、廣く書を讀時は、和漢古今の事情に達し、損益得失を呑込故、誰傳授するともなく、自然と文武の本體を會得する也、是小子が杜撰にあらず、和漢英雄の敎訓也、此理に因て思へば、一國一郡にも主たる者、文武の道に暗きは、戸位素餐といふ者也、愼べし、昇平久き時は、心華靡を生ず、華靡盛なる時は、諸侯士大夫、貧究す、貧究する時は、武備も名のみ存して、實用なきに至る、竊に憶ふ、當世若くは華靡盛なりといふべき歟、都て此條に意味深き物語あれども、世に憚る故、玆に不筆、此下僅に經濟の大略を云のみ、細に工夫を可加、抑國家を經濟するの要、九ッあり、食貨、禮式、學政、武備、制度、法令、官職、地理、章服也、夫れ人、食無れば死し、貨無れば物を通ずる事不能、此故に食貨を經濟の第一とする事也、既に食て、禮式なければ、人倫不明して、開闢の當坐の人の如し、此故に禮式を立て、人倫を明にす、

新字:武は天下の大徳なる事必せり、此趣を呑込て、各其禄に応じて、備を不弛を真の武将と云也、亦利慾を恣にして、人の土地を貪り、或は私の恨に干戈を動し、又は人の富貴を羨て、妄りに兵を出し、徒に人を殺戮し、国家の患をなす、是を国賊と云也、此二を能会得して、国家に主たる者、武の本体を失ふべからず、扨武の本体を会得するには文に因べし、文は書を読を本とす、広く書を読時は、和漢古今の事情に達し、損益得失を呑込故、誰伝授するともなく、自然と文武の本体を会得する也、是小子が杜撰にあらず、和漢英雄の教訓也、此理に因て思へば、一国一郡にも主たる者、文武の道に暗きは、戸位素餐といふ者也、慎べし、昇平久き時は、心華靡を生ず、華靡盛なる時は、諸侯士大夫、貧究す、貧究する時は、武備も名のみ存して、実用なきに至る、窃に憶ふ、当世若くは華靡盛なりといふべき歟、都て此条に意味深き物語あれども、世に憚る故、玆に不筆、此下僅に経済の大略を云のみ、細に工夫を可加、抑国家を経済するの要、九ッあり、食貨、礼式、学政、武備、制度、法令、官職、地理、章服也、夫れ人、食無れば死し、貨無れば物を通ずる事不能、此故に食貨を経済の第一とする事也、既に食て、礼式なければ、人倫不明して、開闢の当坐の人の如し、此故に礼式を立て、人倫を明にす、

書き下し

武は天下の大德なる事必せり、此趣を呑込て、各其祿に應じて、備を不弛を眞の武將と云也、亦利慾を恣にして、人の土地を貪り、或は私の恨に干戈を動し、又は人の富貴を羨て、妄りに兵を出し、徒に人を殺戮し、國家の患をなす、是を國賊と云也、此二を能會得して、國家に主たる者、武の本體を失ふべからず、扨武の本體を會得するには文に因べし、文は書を讀を本とす、廣く書を讀時は、和漢古今の事情に達し、損益得失を呑込故、誰傳授するともなく、自然と文武の本體を會得する也、是小子が杜撰にあらず、和漢英雄の敎訓也、此理に因て思へば、一國一郡にも主たる者、文武の道に暗きは、戸位素餐といふ者也、愼べし、昇平久き時は、心華靡を生ず、華靡盛なる時は、諸侯士大夫、貧究す、貧究する時は、武備も名のみ存して、實用なきに至る、竊に憶ふ、當世若くは華靡盛なりといふべき歟、都て此條に意味深き物語あれども、世に憚る故、玆に不筆、此下僅に經濟の大略を云のみ、細に工夫を可加、抑國家を經濟するの要、九ッあり、食貨、禮式、學政、武備、制度、法令、官職、地理、章服也、夫れ人、食無れば死し、貨無れば物を通ずる事不能、此故に食貨を經濟の第一とする事也、既に食て、禮式なければ、人倫不明して、開闢の當坐の人の如し、此故に禮式を立て、人倫を明にす、

現代語訳

武は天下の大徳であることは確かです。この趣旨を飲み込んで、それぞれの禄に応じて備えを緩めないのを、真の武将といいます。また、利欲をほしいままにして人の土地を貪り、あるいは私的な恨みで武力を動かし、または人の富貴をうらやんでむやみに兵を出し、いたずらに人を殺し、国家の患いをなす者を、国賊といいます。この二つをよく会得して、国家の主たる者は、武の本体を失ってはなりません。さて、武の本体を会得するには、文によるべきです。文は書を読むことを本とします。広く書を読めば、日本と中国、古今の事情に通じ、損益や得失を飲み込むので、誰が伝授するともなく、自然と文武の本体を会得できます。これは私のでたらめではなく、日本と中国の英雄の教訓です。この理から思えば、一国一郡にも主たる者が文武の道に暗いのは、戸位素餐(地位にあって何もせず禄を食むこと)というものです。慎むべきです。泰平が久しくなると、心に華美が生じます。華美が盛んになると、諸侯や士大夫は貧しくなります。貧しくなると、武備も名ばかり残って実用がなくなります。ひそかに思うに、当世はおそらく華美が盛んだと言えるでしょうか。この条には意味の深い話が多くありますが、世を憚るので、ここには書きません。この下は、わずかに経済の大略を述べるだけです。細かに工夫を加えてください。そもそも国家を経済する(治める)要は九つあります。食貨、礼式、学政、武備、制度、法令、官職、地理、章服です。人は食べなければ死に、貨(貨幣)がなければ物を通すことができません。このため食貨を経済の第一とするのです。すでに食べていても礼式がなければ、人倫が明らかでなく、開闢の当座の人のようになります。このため礼式を立てて、人倫を明らかにします。

解説

真の武将とは、禄(与えられた立場)に応じて備えを怠らない者であり、私利私欲で力を動かす者は国賊だと、はっきり線を引いています。また、武の本体を知るには書物を読み、古今の事情に通じることだとし、地位にいながら文武の道に暗いことを戒めます。現代の管理職に置き換えると、自分の立場に応じた責任を果たす備えをすることと、読書や学びで視野を広げ、判断の質を高めることが求められるということです。立場の大きさに見合った学びを、日々積んでいるかが問われます。

この章句が説くこと

海国兵談抄録林子平責任学び読書真の武将

関連する章句

『人生の方程式』の表紙

人生を、一行の式にしてみた。

志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。

本の中身を見る
本2冊(人生の方程式・人生の教科書)+師導1か月=700円本を見る