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重職心得箇条 / 第八条

重職たるもの、勤め向き繁多と云ふ口上は恥ずべき事なり。仮令(たとえ)世話敷(せわし)くとも世話敷きと云はぬが能(よ)きなり。随分の手のすき、心に有余あるに非ざれば、大事に心付かぬもの也。重職小事を自らし、諸役に任使する事能(あた)はざる故に、諸役自然ともたれる所ありて、重職多事になる勢いあり。

書き下し

重職たるもの、勤め向き繁多と云ふ口上は恥ずべき事なり。仮令(たとえ)世話敷(せわし)くとも世話敷きと云はぬが能(よ)きなり。随分の手のすき、心に有余あるに非ざれば、大事に心付かぬもの也。重職小事を自らし、諸役に任使する事能(あた)はざる故に、諸役自然ともたれる所ありて、重職多事になる勢いあり。

現代語訳

重職にある者が「仕事が立て込んでいる」と口にするのは、恥ずべきことである。たとえ忙しくとも、忙しいと言わないほうがよい。十分な手の空きがあり、心にゆとりがなければ、大事に気づくことはできない。重職が小事を自分でやってしまい、それぞれの役に任せることができないから、各役は自然ともたれかかるようになり、重職はますます多事になっていく。

解説

重職が「仕事が立て込んでいる」と口にするのは恥だと、一斎はきっぱり言います。手の空きがあり、心にゆとりがなければ、大事に気づけないからです。忙しくなる原因も指摘されています。重職が小事を自分で引き受けてしまい、各役に任せられないので、下がもたれかかり、ますます多事になるというのです。管理職がプレイヤーを兼ねて抱え込み、部下が育たないまま多忙を嘆く構図と重なります。任せて空白を作ることは、怠けではなく、大事を見るための仕事です。

この章句が説くこと

多忙任せるゆとり大事権限委譲重職心得箇条

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