十善法語 / 巻第九・不瞋恚戒
初一念ノ瞋恚ハ纔ナレトモ。ソノ罪業障ノ增長スル。實ニ恐ルベキコトシヤ。經中ニ。マムシノ口ニ毒有ル。蜂ノ尾ニ毒アル類。皆瞋恚ノ姿トアル。人間ノ容貌醜陋ナルハ。人見テ惡賤スル。瞋恚ノ餘業トアル。地獄界ノ猛火アルモ。此瞋恚ノ增上セル姿ト云コトシヤ。此等ハ譬ヘハ風寒暑濕ノ病。五臟ノ虛實ニ由テ。種種ノ怪夢ヲ見ル如ク。無ト云レヌシヤ。此心アリテ此身ヲ生スル。元來瞋恚ヲ生ズベキコトデナキシヤ。此身心アリテ山河大地ニ住在スル。元來瞋恚ヲ生ズベキ器デナキシヤ。此國界アリテ此ニ死シ彼ニ生スル。互ニ往來シ互ニ言議スル。正知見ニ看來リ。正念ニ思惟スレハ。全ク是法ノ著シキ處シヤ。丸コカシ不瞋恚戒ノ儀シヤ。此心平等ナリ。萬法ヲ容テ障礙セス。此身平等ナリ。四大ヲ集メテ隔歴ナシ。正知見ニ看來リ。正念ニ思惟スレハ。全ク是法ノ著シキ處シヤ。丸コカシ不瞋恚戒ノ儀シヤ。法性カクノ如シヤ。一切器世間カクノ如シヤ。一切衆生世間モカクノ如クシヤ。
新字:初一念ノ瞋恚ハ纔ナレトモ。ソノ罪業障ノ增長スル。実ニ恐ルベキコトシヤ。経中ニ。マムシノ口ニ毒有ル。蜂ノ尾ニ毒アル類。皆瞋恚ノ姿トアル。人間ノ容貌醜陋ナルハ。人見テ悪賤スル。瞋恚ノ余業トアル。地獄界ノ猛火アルモ。此瞋恚ノ增上セル姿ト云コトシヤ。此等ハ譬ヘハ風寒暑湿ノ病。五臓ノ虚実ニ由テ。種種ノ怪夢ヲ見ル如ク。無ト云レヌシヤ。此心アリテ此身ヲ生スル。元来瞋恚ヲ生ズベキコトデナキシヤ。此身心アリテ山河大地ニ住在スル。元来瞋恚ヲ生ズベキ器デナキシヤ。此国界アリテ此ニ死シ彼ニ生スル。互ニ往来シ互ニ言議スル。正知見ニ看来リ。正念ニ思惟スレハ。全ク是法ノ著シキ処シヤ。丸コカシ不瞋恚戒ノ儀シヤ。此心平等ナリ。万法ヲ容テ障礙セス。此身平等ナリ。四大ヲ集メテ隔歴ナシ。正知見ニ看来リ。正念ニ思惟スレハ。全ク是法ノ著シキ処シヤ。丸コカシ不瞋恚戒ノ儀シヤ。法性カクノ如シヤ。一切器世間カクノ如シヤ。一切衆生世間モカクノ如クシヤ。
書き下し
初一念ノ瞋恚ハ纔ナレトモ。ソノ罪業障ノ增長スル。実ニ恐ルベキコトシヤ。経中ニ。マムシノ口ニ毒有ル。蜂ノ尾ニ毒アル類。皆瞋恚ノ姿トアル。人間ノ容貌醜陋ナルハ。人見テ悪賤スル。瞋恚ノ余業トアル。地獄界ノ猛火アルモ。此瞋恚ノ增上セル姿ト云コトシヤ。此等ハ譬ヘハ風寒暑湿ノ病。五臓ノ虚実ニ由テ。種種ノ怪夢ヲ見ル如ク。無ト云レヌシヤ。此心アリテ此身ヲ生スル。元来瞋恚ヲ生ズベキコトデナキシヤ。此身心アリテ山河大地ニ住在スル。元来瞋恚ヲ生ズベキ器デナキシヤ。此国界アリテ此ニ死シ彼ニ生スル。互ニ往来シ互ニ言議スル。正知見ニ看来リ。正念ニ思惟スレハ。全ク是法ノ著シキ処シヤ。丸コカシ不瞋恚戒ノ儀シヤ。此心平等ナリ。万法ヲ容テ障礙セス。此身平等ナリ。四大ヲ集メテ隔歴ナシ。正知見ニ看来リ。正念ニ思惟スレハ。全ク是法ノ著シキ処シヤ。丸コカシ不瞋恚戒ノ儀シヤ。法性カクノ如シヤ。一切器世間カクノ如シヤ。一切衆生世間モカクノ如クシヤ。
現代語訳
初めの一念の瞋恚はわずかであるけれども、その罪や業障が増長するのは、実に恐るべきことである。経の中に、まむしの口に毒があり、蜂の尾に毒がある類は、みな瞋恚の姿である、とある。人間の容貌が醜く、人が見て嫌い賤しむのは、瞋恚の余業である、とある。地獄界に猛火があるのも、この瞋恚の増長した姿ということである。これらは例えば、風・寒・暑・湿の病や、五臓の虚実によって種々の怪しい夢を見るようなもので、無いとは言えないのである。この心があってこの身を生じる。元来、瞋恚を生じるべきものではないのである。この身心があって山河大地に住んでいる。元来、瞋恚を生じるべき器ではないのである。この国土があって、ここで死にあちらに生まれる。互いに往来し、互いに語り合う。正しい知見で見てきて、正しい念で思惟すれば、まったくこれは法の著しい所である。まるごと不瞋恚戒の姿である。この心は平等である。万法を容れて障りがない。この身は平等である。四大を集めて隔たりがない。正しい知見で見てきて、正しい念で思惟すれば、まったくこれは法の著しい所である。まるごと不瞋恚戒の姿である。法性はこのようである。一切の器世間はこのようである。一切の衆生世間もこのようである。
解説

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