十善法語 / 巻第七・不兩舌戒
經ニ。佛言。人於世間不兩舌讒言人。不惡口罵人。不妄言綺語。從是得五善。何等五。一者語言皆信。二者爲人所愛。三者口氣香好。四者得上天爲諸天所敬。五者從天上來下生世間爲人好口齒。他人不敢以惡語汚之。今見有從生至老。不被口謗者。故世宿命護口善言所致也。如是分明。愼莫妄讒言人トアル若妄語綺語惡口兩舌ノ者ハ。此ニ反シテ一ニ世ニ處シテ怨憎多ク。二ニ自身ヲ欺キ。言トコロ人ミナ信セス。三ニ數禍ニ逢フ。四ニ惡趣ニ入ル。五ニ惡趣ヨリ出テ。タマタマ人中ニ生スルモ。多ク瘡痘トナリ。或審吃。兎缺。口齒疾病アルトアル。此經ノミナラス。餘ノ經論ニ亘テ廣說アルコトシヤ。此心未來際ヲ盡シテ斷絕セヌハ樂シムヘキコトシヤ。一タヒ作タ事ノ消失セヌハ樂ムヘキコトシヤ。此善惡業果アリテ。一切世界ノ苦樂昇沈。皆我心ヨリ生スル。悉樂ムヘキコトシヤ。
新字:経ニ。仏言。人於世間不両舌讒言人。不悪口罵人。不妄言綺語。従是得五善。何等五。一者語言皆信。二者為人所愛。三者口気香好。四者得上天為諸天所敬。五者従天上来下生世間為人好口歯。他人不敢以悪語汚之。今見有従生至老。不被口謗者。故世宿命護口善言所致也。如是分明。慎莫妄讒言人トアル若妄語綺語悪口両舌ノ者ハ。此ニ反シテ一ニ世ニ処シテ怨憎多ク。二ニ自身ヲ欺キ。言トコロ人ミナ信セス。三ニ数禍ニ逢フ。四ニ悪趣ニ入ル。五ニ悪趣ヨリ出テ。タマタマ人中ニ生スルモ。多ク瘡痘トナリ。或審吃。兎欠。口歯疾病アルトアル。此経ノミナラス。余ノ経論ニ亘テ広説アルコトシヤ。此心未来際ヲ尽シテ断絶セヌハ楽シムヘキコトシヤ。一タヒ作タ事ノ消失セヌハ楽ムヘキコトシヤ。此善悪業果アリテ。一切世界ノ苦楽昇沈。皆我心ヨリ生スル。悉楽ムヘキコトシヤ。
書き下し
経ニ。仏言。人於世間不両舌讒言人。不悪口罵人。不妄言綺語。従是得五善。何等五。一者語言皆信。二者為人所愛。三者口気香好。四者得上天為諸天所敬。五者従天上来下生世間為人好口歯。他人不敢以悪語汚之。今見有従生至老。不被口謗者。故世宿命護口善言所致也。如是分明。慎莫妄讒言人トアル若妄語綺語悪口両舌ノ者ハ。此ニ反シテ一ニ世ニ処シテ怨憎多ク。二ニ自身ヲ欺キ。言トコロ人ミナ信セス。三ニ数禍ニ逢フ。四ニ悪趣ニ入ル。五ニ悪趣ヨリ出テ。タマタマ人中ニ生スルモ。多ク瘡痘トナリ。或審吃。兎欠。口歯疾病アルトアル。此経ノミナラス。余ノ経論ニ亘テ広説アルコトシヤ。此心未来際ヲ尽シテ断絶セヌハ楽シムヘキコトシヤ。一タヒ作タ事ノ消失セヌハ楽ムヘキコトシヤ。此善悪業果アリテ。一切世界ノ苦楽昇沈。皆我心ヨリ生スル。悉楽ムヘキコトシヤ。
現代語訳
経に、仏は言われた。人が世間で両舌をして人を讒言せず、悪口で人を罵らず、嘘や飾った言葉を言わなければ、これによって五つの善を得る。何を五つとするか。一つには言葉がみな信じられる。二つには人に愛される。三つには口の息が香しい。四つには天上に生まれて諸天に敬われる。五つには天上から下って世間に生まれれば、人として口や歯がよく、他人があえて悪い言葉で汚すことがない。今、生まれてから老いるまで口でそしられない者がいるのを見るのは、前世の宿命で口を守り善い言葉を言ったことによるのである。このように明らかである。謹んでみだりに人を讒言してはならない、とある。もし妄語・綺語・悪口・両舌の者はこれに反して、一つには世に処して恨みや憎しみが多く、二つには自分の身を欺き、言うことを人がみな信じない。三つにはしばしば禍に遭う。四つには悪趣に入る。五つには悪趣から出てたまたま人の中に生まれても、多く腫れ物や疱瘡ができ、あるいは吃音、兎唇、口や歯の病がある、とある。この経だけでなく、ほかの経論にわたって広く説かれていることである。この心が未来の果てまで尽きて断絶しないのは、楽しむべきことである。一度作った事が消え失せないのは、楽しむべきことである。この善悪の業と果があって、一切世界の苦楽や浮き沈みが、みな我が心から生じる。ことごとく楽しむべきことである。
解説

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『十善法語』巻第七・不兩舌戒此善悪報応。智者ノ小心翼翼トシテ。終ニ聖慧明ヲ得ル処シヤ。愚人モ終ニ非ヲ改メ過ヲ悔ヰ。闇ヨリ明ニ趣ク処シヤ。声聞乗ノ人ノ厭背シテ禅定智慧ヲ発スル基シヤ。菩薩乗ノ人ノ大慈悲心相応スル処シヤ。此生死業果ナクハ一切賢聖モ大道ヲ窮ルコトナク。諸仏出世シテ衆生ヲ利益シタマフコトナキシヤ。真正ノ道人此中ニ実相ニ達スル。果ヲ見テ因ニ達スル。是ナク非ナク。得ナク失ナシ。此身此ニ在テ逈然トシテ世外ニ遊フ。因ヲ看テ果ニ通スル。自ナク他ナク。縛ナク脱ナシ。唯善相応シテ常ニ世人ヲ利益スルシヤ。
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