神皇正統記 / 巻三 第二十七代 継体天皇
もろこしにもかゝるためしあり。名をつくることもつゝしみおもくすべきことにや。それもおのづから天命なりといはゞ、凡慮の及べきにあらず。此天皇の立給しことぞ思外の御運とみえ侍る。
書き下し
もろこしにもかゝるためしあり。名をつくることもつゝしみおもくすべきことにや。それもおのづから天命なりといはゞ、凡慮の及べきにあらず。此天皇の立給しことぞ思外の御運とみえ侍る。
現代語訳
中国にもこのような例がある。名をつけることも慎重に重く考えるべきことであろうか。それもおのずから天命であると言うならば、凡人の考えの及ぶところではない。この天皇が位に即かれたことこそ、思いもよらない御運と見えるのである。
解説
前段で、仁徳(鷦鷯)の末が絶えて隼総別の末が位を継いだのは名の勝ち負けによるのかと推し量った親房は、ここで中国にも似た例があると言い、名づけは慎むべきだと結ぶ。ただしすぐに、それも天命と言うなら凡人の知恵の及ぶところではないと引き取る。名の占いめいた解釈に傾きかけて、断定は避けているのである。最後の「思外の御運」という言い方には、継体の即位が当然の順ではなく、群臣の選択と巡り合わせによる異例の出来事だったという認識が表れている。親房は正統を論じる人だが、その正統が一本の道筋で機械的に決まるとは考えていない。人知で割り切れない部分を残し、それを天命と呼んで畏れる姿勢がある。偶然の巡り合わせで重責を担うことになった人が、それをどう受け止めるかという問いにもつながる。
関連する章句
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『神皇正統記』巻三 賢にして天命但、皇胤たえぬべかりし時、群臣択求奉き。賢名によりて天位を伝給へり。天照太神の御本意にこそとみえたり。皇統に其人ましまさん時は、賢諸王おはすとも、争か望をなし給べき。皇胤たえ給はんにとりては、賢にて天日嗣にそなはり給はんこと、即又天のゆるす所也。此天皇をば我国中興の祖宗と仰ぎ奉るべきにや。
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『神皇正統記』巻四 天命と人望されど二をならべてあらそふ時にこそ傍正の疑もあれ、群臣皇胤なきことをうれへて求出奉りしうへに、その御身賢にして天の命をうけ、人の望にかなひましましければ、とかくの疑あるべからず。
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『神皇正統記』巻三 第二十六代 武烈天皇〜第二十七代 継体天皇此天皇天下を治給こと八年。五十八歳おましましき。 ○第二十七代、第二十世、継体天皇は応神五世の御孫也。応神第八の御子隼総別の皇子、其子大迹の王、其子私斐の王、其子彦主人の王、其子男大迹の王と申は此天皇にまします。御母振姫、垂仁七世の御孫也。越前国にましける。武烈かくれ給て皇胤たえにしかば、群臣うれへなげきて国々にめぐり、ちかき皇胤を求奉けるに、此天皇王者の大度まして、潜龍のいきほひ、世にきこえ給けるにや。群臣相議て迎奉る。三たびまで謙譲し給けれど、つひに位に即給ふ。ことし丁亥の年也。大和の磐余玉穂の宮にまします。仁賢の御女手白香の皇女を皇后とす。即位し給しより誠に賢王にましましき。応神御子おほくきこえ給しに、仁徳賢王にてましまししかど、御末たえにき。隼総別の御末、かく世をたもたせ給こと、いかなる故にかおぼつかなし。仁徳をば大鷦鷯の尊と申。第八の皇子をば隼総別と申。仁徳の御代に兄弟たはぶれて、鷦鷯は小鳥也、隼は大鳥也と争給ことありき。隼の名にかちて、末の世をうけつぎ給けるにや。
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『神皇正統記』巻四 書きのこす理由大かた天皇の世つぎをしるせるふみ、昔より今に至まで家々にあまたあり。かくしるし侍もさらにめづらしからぬことなれど、神代より継体正統のたがはせ給はぬ一はしを申さんがためなり。我国は神国なれば、天照太神の御計にまかせられたるにや。されど其中に御あやまりあれば、暦数も久からず。又つひには正路にかへれど、一旦もしづませ給ためしもあり。これはみなみづからなさせ給御とがなり。冥助のむなしきにはあらず。
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