人物志 / 材能
矯抗之政,宜於治侈,以之治弊則殘。諧和之政,宜於治新,以之治舊則虛。公刻之政,宜於紏姦,以之治邊則失眾。
新字:矯抗之政,宜於治侈,以之治弊則残。諧和之政,宜於治新,以之治旧則虚。公刻之政,宜於紏姦,以之治辺則失衆。
書き下し
矯抗の政は、侈を治むるに宜しく、之を以て弊を治むれば則ち残ふ。諧和の政は、新を治むるに宜しく、之を以て旧を治むれば則ち虚し。公刻の政は、姦を糾すに宜しく、之を以て辺を治むれば則ち衆を失ふ。
現代語訳
矯め正して抗う政治は、贅沢に流れたところを治めるのに適しているが、これで疲弊したところを治めると民を損なう。調和を重んじる政治は、新しく開けたところを治めるのに適しているが、これで古くからのところを治めると空疎になる。公正で厳しい政治は、悪事を糾すのに適しているが、これで辺境を治めると民衆の心を失う。
解説
矯抗・諧和・公刻の三つの政治について、適する場と誤る場を対にして示す。引き締めの政治は贅沢に流れた土地には効くが、疲弊した土地に行えば民をさらに傷つける。調和の政治は新しく人が集まった土地では人心をまとめるが、しがらみの多い古い土地では空回りする。公正で厳しい政治は悪を糾すには向くが、治安の不安定な辺境で行えば人心を失う。同じ政策でも、対象の状態によって薬にも毒にもなるという認識である。企業の改革でも、放漫な組織に効く締め付けを、疲れた組織に当てはめれば人が離れていく。処方を選ぶ前に、組織の状態を診立てることが先だと教えている。
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『長短経』任長〔夫れ剛略の人は微を理むる能わず。故に其の大体を論ずれば則ち弘略にして高遠なるも、纖を歴て微を理むれば則ち宕往して疏越なり。亢厲の人は迴撓する能わず。其の法直を論ずれば則ち括拠して公正なるも、変通を説けば則ち否戻して入らず。寛恕の人は速捷なる能わず。仁義を論ずれば則ち弘詳にして長雅なるも、時務に趨れば則ち遅緩にして及ばず。好奇の人は横逸して異を求む。権譎を造れば則ち倜儻にして瑰壮なるも、清道を案ずれば則ち詭常にして恢迂なり。又曰く、王化の政は大を統ぶるに宜し、之を以て小を理むれば則ち迂なり。策術の政は難を理むるに宜し、之を以て平を理むれば則ち奇無し。矯亢の政は侈を治むるに宜し、之を以て弊を治むれば則ち残なり。公刻の政は姦を糾すに宜し、之を以て辺を治むれば則ち其の衆を失う。威猛の政は乱を討つに宜し、之を以て善を治むれば則ち暴なり。伎倆の政は富を治むるに宜し、之を以て貧を治むれば則ち民労して下困す。此れ已上は皆偏材なり。〕
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