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自警録 / 第二十五章 理想と実現・幼少時代の理想の回顧(1)

毎春年の改まったについて、年ごとに起こる感じが再び湧き出で、俺はもう幾歳になったなアと、年を数え二十年前、三十年前に比べて、どれほど進んだか思い較べると、ただ恥ずかしきことばかり多い。青年のとき描いた理想が、いわゆる世の中の実際に擦れて摩滅したこともあまたある。しかし年に較べれば、自分ながらまだ理想を割合い余計に抱いておるがごとくに信ずる廉もないではない。 僕が三十六のころ、ドイツ見物に数週間ベルリンに費やしたことがあったが、その際ある文士に会って、四方山の文談を聞いたときに、話がゲーテとシラーに移って、両氏の性格および文才と、後世に及ぼせる偉業を論じた。そのとき僕はその文士に尋ねた。

書き下し

毎春年の改まったについて、年ごとに起こる感じが再び湧き出で、俺はもう幾歳になったなアと、年を数え二十年前、三十年前に比べて、どれほど進んだか思い較べると、ただ恥ずかしきことばかり多い。青年のとき描いた理想が、いわゆる世の中の実際に擦れて摩滅したこともあまたある。しかし年に較べれば、自分ながらまだ理想を割合い余計に抱いておるがごとくに信ずる廉もないではない。 僕が三十六のころ、ドイツ見物に数週間ベルリンに費やしたことがあったが、その際ある文士に会って、四方山の文談を聞いたときに、話がゲーテとシラーに移って、両氏の性格および文才と、後世に及ぼせる偉業を論じた。そのとき僕はその文士に尋ねた。

現代語訳

毎年春に年が改まると、年ごとに起こる感慨がまた湧いてきて、自分はもう何歳になったなあと年を数え、二十年前、三十年前と比べて、どれほど進んだかを思い比べると、ただ恥ずかしいことばかり多いのです。青年のときに描いた理想が、いわゆる世の中の実際に擦れて摩滅したこともたくさんあります。しかし年に比べれば、自分でもまだ理想をわりあい多く抱いているように信じられる点もないではありません。 私が三十六のころ、ドイツ見物のために数週間をベルリンで過ごしたことがありました。その折、ある文士に会って四方山の文学談を聞いたとき、話がゲーテとシラーに移り、二人の性格や文才、後世に及ぼした偉業を論じました。そのとき私はその文士に尋ねました。

解説

新年を迎えるたびに、二十年前、三十年前と比べて恥ずかしいことが多いと振り返る新渡戸は、それでも理想は割合に抱いているという感触を記します。そこへ三十六歳のころ、ベルリンの文士と交わしたゲーテとシラーをめぐる会話が導入として置かれ、次節の問いへつながります。節目に自分を数え直す習慣と、青年期の理想が摩滅していく現実の両方を正直に認める姿勢が特徴です。年度末や誕生日に自分の歩みを点検する習慣は、働く人にも通じます。
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この章句が説くこと

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