自警録 / 第四章 外は柔、内は剛・こういう強みを処世上に持ちたい
これは婦人などによく見ることである。柔和にして他のいうことを聴き容れ、いくら無理をいうてもハイハイと忍ぶ。どこまでもそれに付け込んで彼女の名誉や生命にまで関渉せんとするときには、どっこい、それは不可と毅然としてこれを斥ける。 むかし袈裟が遠藤盛遠に挑まれたときには、無理を忍んでハイハイと返事し、もって母の危急を防いだが、いよいよ最後の守らねばならぬ点にいたっては、身を殺してまでも毅然として自己を操持した。この点にいたると婦人は侮るべからざる強いところがある。日ごろは一つの柔しき飾りに過ぎぬ「簪も逆手に持てば恐ろしい」。こういう強味は世に処する上において、どうしてももたなくてはならぬ。 僕は種々なる人のなすところを見るに、とかく表面には剛毅を装うているものが、何か事に当たると、たちまち脆く倒れる、松の木が風に折れると同じである。これに反し風のまにまに動く柳は動きながらも本性を失わず、かつ折れることなくして、その一生を完うする。
書き下し
これは婦人などによく見ることである。柔和にして他のいうことを聴き容れ、いくら無理をいうてもハイハイと忍ぶ。どこまでもそれに付け込んで彼女の名誉や生命にまで関渉せんとするときには、どっこい、それは不可と毅然としてこれを斥ける。 むかし袈裟が遠藤盛遠に挑まれたときには、無理を忍んでハイハイと返事し、もって母の危急を防いだが、いよいよ最後の守らねばならぬ点にいたっては、身を殺してまでも毅然として自己を操持した。この点にいたると婦人は侮るべからざる強いところがある。日ごろは一つの柔しき飾りに過ぎぬ「簪も逆手に持てば恐ろしい」。こういう強味は世に処する上において、どうしてももたなくてはならぬ。 僕は種々なる人のなすところを見るに、とかく表面には剛毅を装うているものが、何か事に当たると、たちまち脆く倒れる、松の木が風に折れると同じである。これに反し風のまにまに動く柳は動きながらも本性を失わず、かつ折れることなくして、その一生を完うする。
現代語訳
これは婦人などによく見られることです。柔和で他人の言うことを聞き入れ、どんなに無理を言われてもハイハイと耐え忍ぶ。それでもどこまでも付け込んで、彼女の名誉や命にまで関わろうとするとき、「どっこい、それはいけません」と毅然としてこれを退ける。 昔、袈裟が遠藤盛遠に迫られたとき、無理を耐えてハイハイと返事をして、母の危急を防ぎましたが、いよいよ最後の守らなければならない点に至っては、身を殺してまで毅然として自己を守りました。この点で、婦人は侮れない強いところがあります。日ごろは一つの優しい飾りにすぎない「簪も、逆手に持てば恐ろしい」というとおりです。こういう強みは、世に処する上で、ぜひ持たなければなりません。 私はさまざまな人のすることを見ていると、とかく表面には剛毅を装っている者が、何か事に当たると、たちまちもろく倒れます。松の木が風に折れるのと同じです。これに対し、風のままに動く柳は、動きながらも本性を失わず、しかも折れることなく、その一生を全うします。
解説

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