陰符経 / 下篇・強兵戰勝演術章・天之無恩
天之無恩而大恩生。迅雷烈風,莫不蠢然。至樂性余,至靜性廉。天之至私,用之至公。禽之制在炁。生者死之根,死者生之根。恩生於害,害生於恩。
新字:天之無恩而大恩生。迅雷烈風,莫不蠢然。至楽性余,至静性廉。天之至私,用之至公。禽之制在炁。生者死之根,死者生之根。恩生於害,害生於恩。
書き下し
天の無恩にして大恩生ず。 迅雷烈風、蠢然たらざる莫し。 至楽は性余り、至静は性廉なり。 天の至私、これを用いて至公なり。 禽の制は炁に在り。 生は死の根、死は生の根。 恩は害より生じ、害は恩より生ず。
現代語訳
天には恩を施す心がないのに、そこから大きな恩が生まれます。 激しい雷や烈しい風が来れば、虫たちまで動き出さないものはありません。 極まった楽しみは、性にゆとりを生み、極まった静けさは、性を清らかにします。 天の極みの私は、それを用いるときには極みの公となります。 鳥獣を制するもとは、気にあります。 生は死の根であり、死は生の根です。 恩は害から生まれ、害は恩から生まれます。
解説
対立するものが互いの根になる、という考え方が並ぶ章句です。天は誰かを贔屓して恵むわけではないのに、結果として大きな恵みが生まれる。雷や風のような厳しさも、万物を目覚めさせます。生と死、恩と害も、切り離せないひと続きだと言います。炁は気の古い字体です。厳しい指導や痛みを伴う改革が、あとから見れば大きな恩になった経験は、多くの人にあるでしょう。目の前の害を、すぐ悪と決めつけず、そこに潜む恩を見る余裕を持ちたいものです。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
無恩の大恩迅雷烈風至静至私至公炁生死の根
関連する章句
-
陰符経・下篇・強兵戰勝演術章・自然之道靜自然の道は静かなり、故に天地万物生ず。 天地の道は浸し、故に陰陽勝つ。 陰陽相推して、変化順う。 是の故に聖人は、自然の道の違うべからざるを知り、因りてこれを制す。 至静の道は、律暦も契う能わざる所なり。 ここに奇器有り、是れ万象を生ず。 八卦甲子、神機鬼蔵す。 陰陽相勝の術、昭昭乎として象に進む。
-
『呻吟語』外篇・天地・陰陽は萬物に原と相干せず萬物は陰陽に生じ、陰陽に死す。陰陽は萬物に於て原と相干せず、其の自然に任するのみ。雨は物を潤さんと欲するに非ず、旱は物を熯さんと欲するに非ず、風は物を撓さんと欲するに非ず、雷は物を震はんと欲するに非ず。陰陽は其の氣の自然に任せて、萬物之に因りて以て生死するのみ。若し心有りて化を成さば、則ち寒暑災樣其の正を得て、乃ち天心を見んか。
-
『列子』力命篇生くべくして生くるは、天の福なり。死すべくして死するは、天の福なり。生くべくして生きざるは、天の罰なり。死すべくして死せざるは、天の罰なり。生くべく、死すべくして、生を得死を得ること有り。生くべからず、死すべからずして、或いは死し或いは生くること有り。然り而して生生死死は、物に非ず我に非ず、皆な命なり。智の柰何ともする所無きなり。故に曰く、窈然として際無く、天道自ら會す。漠然として分かつ無く、天道自ら運る、と。天地も犯す能わず、聖智も干す能わず、鬼魅も欺く能わず。自然なる者は之を默し之を成し、之を平らげ之を寧んじ、之を將り之を迎う。
-
『列子』力命篇生は之を貴びて能く存する所に非ず。身は之を愛して能く厚くする所に非ず。生も亦た之を賤しみて能く夭くする所に非ず。身も亦た之を輕んじて能く薄くする所に非ず。故に之を貴びて或いは生きず、之を賤しみて或いは死せず、之を愛して或いは厚からず、之を輕んじて或いは薄からず。此れ反に似たり、反に非ざるなり。此れ自ら生き自ら死し、自ら厚く自ら薄きなり。或いは之を貴びて生き、或いは之を賤しみて死し、或いは之を愛して厚く、或いは之を輕んじて薄し。此れ順に似たり、順に非ざるなり。此れも亦た自ら生き自ら死し、自ら厚く自ら薄きなり。鬻熊文王に語げて曰く、自ら長きは增す所に非ず、自ら短きは損ずる所に非ず。算の亡き所を若何せん、と。老聃關尹に語げて曰く、天の惡む所、孰か其の故を知らん、と。天意を迎え、利害を揣るは、其の已むに如かざるを言うなり。
-
荘子・知北遊今彼の神明は至精なり。彼の百化と与にす。物已に死生方円するも、其の根を知る莫し。扁然(へんぜん)として万物は古(いにしえ)より以て固より存す。六合を巨と為すも、未だ其の内を離れず。秋豪を小と為すも、之を待ちて体を成す。天下沈浮せざる莫く、身を終うるまで故(もと)ならず。陰陽四時は運行して、各々其の序を得たり。惛然(こんぜん)として亡(な)きが若くして存し、油然(ゆうぜん)として形あらずして神なり。万物は畜(やしな)われて知らず。此を之れ本根と謂う。以て天に観るべし。
-
文子・道原陰陽を和し、四時を節し、五行を調え、草木を潤し、金石に浸み、禽獣は碩大にして毫毛潤沢、鳥の卵は敗れず、獣の胎は殰れず、父に子を喪うの憂い無く、兄に弟を哭するの哀しみ無く、童子は孤ならず、婦人は孀ならず、虹蜺見われず、盗賊行われざるは、徳を含むの致す所なり。天常の道は、物を生じて有せず、化を成して宰らず、万物は之を恃みて生ずるも其の徳を知る莫く、之を恃みて死するも之を能く怨む莫し。収蔵畜積するも富を加えず、布施稟受するも貧を益さず。忽たり怳たり、象と為す可からず。怳たり忽たり、用いて詘きず。窈たり冥たり、応化して形無し。遂たり通たり、虚しく動かず。剛柔と与に卷舒し、陰陽と与に俯仰す。