荘子 / 知北遊
今彼神明至精,與彼百化,物已死生方圓,莫知其根也,扁然而萬物自古以固存。六合為巨,未離其內;秋豪為小,待之成體。天下莫不沈浮,終身不故;陰陽四時運行,各得其序。惛然若亡而存,油然不形而神,萬物畜而不知。此之謂本根,可以觀於天矣。
新字:今彼神明至精,与彼百化,物已死生方円,莫知其根也,扁然而万物自古以固存。六合為巨,未離其內;秋豪為小,待之成体。天下莫不沈浮,終身不故;陰陽四時運行,各得其序。惛然若亡而存,油然不形而神,万物畜而不知。此之謂本根,可以観於天矣。
書き下し
今彼の神明は至精なり。彼の百化と与にす。物已に死生方円するも、其の根を知る莫し。扁然(へんぜん)として万物は古(いにしえ)より以て固より存す。六合を巨と為すも、未だ其の内を離れず。秋豪を小と為すも、之を待ちて体を成す。天下沈浮せざる莫く、身を終うるまで故(もと)ならず。陰陽四時は運行して、各々其の序を得たり。惛然(こんぜん)として亡(な)きが若くして存し、油然(ゆうぜん)として形あらずして神なり。万物は畜(やしな)われて知らず。此を之れ本根と謂う。以て天に観るべし。
現代語訳
今、あの霊妙な働きは、この上なく精妙である。あらゆる変化とともにある。物は死んだり生まれたり、四角くなったり丸くなったりするが、その根源は誰にも分からない。広がり満ちて、万物は昔からもとより存在している。天地四方は巨大だが、その働きの内側から離れられない。秋の獣毛の先は小さいが、その働きを待って形をなす。天下に沈み浮かばないものはなく、生涯にわたって元のままではいない。陰陽と四季は巡り、それぞれが順序を得ている。ぼんやりとして、ないようでいて存在し、ゆったりとして、形がないのに霊妙である。万物はそれに養われながら、そのことを知らない。これを『本根』という。これによって天を観ることができる。
解説
「万物はそれに養われながら、そのことを知らない」。この一句が心に残る一段です。空気に養われていることを、私たちは意識しません。あって当たり前のものは、見えません。最も大きな働きは、気づかれないのです。そして「ぼんやりとして、ないようでいて存在し、形がないのに霊妙である」。存在感を主張しないから、ないように見える。しかし、それがなければ何も成り立たない。私たちを支えているもののうち、いったいいくつに気づいているでしょうか。