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法句経 / 第十三 世俗の部 一七四〜一七六 網を脱れる鳥は稀なり

一七四 此の世は黑暗なり、此の中にて能く見るもの稀なり、網を脱れて天に到る鳥の稀なるが如く。 一七五 鵝鳥は日の道を行く、(人は)通力によりて虚空を行く、賢人は魔と其軍衆とを亡ぼし世間を離る。 一七六 一法を犯し、(且つ)妄語し、他世を信ぜざる人は惡として造らざるなし。

新字:一七四 此の世は黒暗なり、此の中にて能く見るもの稀なり、網を脱れて天に到る鳥の稀なるが如く。 一七五 鵝鳥は日の道を行く、(人は)通力によりて虚空を行く、賢人は魔と其軍衆とを亡ぼし世間を離る。 一七六 一法を犯し、(且つ)妄語し、他世を信ぜざる人は悪として造らざるなし。

書き下し

一七四 此の世は黒暗なり、此の中にて能く見るもの稀なり、網を脱れて天に到る鳥の稀なるが如く。 一七五 鵝鳥は日の道を行く、(人は)通力によりて虚空を行く、賢人は魔と其軍衆とを亡ぼし世間を離る。 一七六 一法を犯し、(且つ)妄語し、他世を信ぜざる人は悪として造らざるなし。

現代語訳

この世は暗闇である。この中ではっきりと見る者は稀である。網を脱れて天に到る鳥が稀であるように。鵝鳥は太陽の道(空)を行き、(人は)神通力によって虚空を行く。賢い人は魔とその軍勢とを滅ぼして、世間を離れる。ただ一つの法(真実を語るという戒め)を犯して偽りを語り、次の世を信じない人は、どんな悪でもしないことはない。

解説

「世俗の部」の三偈である。まず世を暗闇にたとえ、そこで見える者は、網を逃れて空へ舞い上がる鳥ほどに稀だという。網は、ここでは欲や見解の絡みつきを思わせる。多くの鳥はかかったまま地上に留まる。次の偈には鵝鳥が出てくる。荻原の注によれば渡り鳥の一種で、太陽の通り道を渡ってゆく。神通力で虚空を行く者も同じく地上を離れるが、賢者が離れる方法は違う。魔とその軍勢、つまり欲望や恐れといった内なる敵を打ち破ることで世間を離れる。最後の偈は一転して地上の話になる。「一法」とは真実を語ることで、それを破って嘘をつき、行いの報いを信じない者は、どんな悪でもやってのける。一つの嘘が、あらゆる悪への扉になるという観察である。嘘を許す組織が歯止めを失う理由も、ここに見える。

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