抱朴子外篇 / 自敘
洪體純性駑,寡所玩好,自總發垂髫,又擲瓦手摶,不及兒童之群,未曾斗雞鶩,走狗馬,見人博戲,了不目眄。或強牽引觀之,殊不入神,有若晝睡。是以至今不知棋局上有幾道樗蒲齒名。亦念此輩末伎,亂意思而妨日月,在位有損政事,儒者則廢講誦,凡民則忘稼穡,商人則失貨財。至於勝負未分,交爭都市,心熱於中,顏愁於外,名之為樂,而實煎悴,喪廉恥之操,興爭競之端,相取重貨,密結怨隙。昔宋閔公、吳太子致碎首之禍,生叛亂之變,覆滅七國,幾傾天朝。作戒百代,其鑒明矣。每觀戲者,漸恚交集,手足相及,醜詈相加,絕交壞友,往往有焉。怨不在大,亦不在小,多召悔吝,不足為也。仲尼雖有晝寢之戒,以洪較之,洪實未許其賢於晝寢。何則?晝寢但無益而未有怨恨之憂,斗訟之變,聖者猶韋編三絕,以勤經業,凡才近人,安得兼修,惟諸戲盡不如示一尺之書,故因本不喜而不為,蓋此俗人所親焉。
新字:洪体純性駑,寡所玩好,自総発垂髫,又擲瓦手摶,不及児童之群,未曽斗鶏鶩,走狗馬,見人博戯,了不目眄。或強牽引観之,殊不入神,有若昼睡。是以至今不知棋局上有幾道樗蒲歯名。亦念此輩末伎,乱意思而妨日月,在位有損政事,儒者則廃講誦,凡民則忘稼穡,商人則失貨財。至於勝負未分,交争都市,心熱於中,顔愁於外,名之為楽,而実煎悴,喪廉恥之操,興争競之端,相取重貨,密結怨隙。昔宋閔公、呉太子致砕首之禍,生叛乱之変,覆滅七国,幾傾天朝。作戒百代,其鑒明矣。毎観戯者,漸恚交集,手足相及,醜詈相加,絶交壊友,往往有焉。怨不在大,亦不在小,多召悔吝,不足為也。仲尼雖有昼寝之戒,以洪較之,洪実未許其賢於昼寝。何則?昼寝但無益而未有怨恨之憂,斗訟之変,聖者猶韋編三絶,以勤経業,凡才近人,安得兼修,惟諸戯尽不如示一尺之書,故因本不喜而不為,蓋此俗人所親焉。
書き下し
洪は体は純にして性は駑、玩好する所寡なく、総髪垂髫より、又た瓦を擲ち手に摶るも、児童の群に及ばず、未だ曾て鶏鶩を闘わせ、狗馬を走らせず、人の博戯を見ても、了に目眄せず。或いは強いて牽引して之を観しむるも、殊に神に入らず、昼寝するが若き有り。是を以て今に至るまで棋局上に幾道有り、樗蒲の歯名を知らず。亦た念うに此の輩の末伎は、意思を乱して日月を妨げ、位に在りては政事を損ない、儒者は則ち講誦を廃し、凡民は則ち稼穡を忘れ、商人は則ち貨財を失う。勝負の未だ分かたざるに至り、都市に交争し、心は中に熱く、顔は外に愁う、之を名づけて楽と為すも、実は煎悴にして、廉恥の操を喪い、争競の端を興し、相い重貨を取り、密かに怨隙を結ぶ。昔、宋の閔公、呉の太子は砕首の禍を致し、叛乱の変を生じ、七国を覆滅して、幾ど天朝を傾く。戒めを百代に作す、其の鑑は明らかなり。毎に戯れを観る者の、漸く恚り交々集まり、手足相い及び、醜詈相い加え、交わりを絶ち友を壊すこと、往往にして有り。怨みは大に在らず、亦た小に在らず、多く悔吝を召く、為すに足らざるなり。仲尼は昼寝の戒め有りと雖も、洪を以て之に較ぶるに、洪は実に未だ其の昼寝より賢なるを許さず。何となれば則ち昼寝は但だ益無きのみにして、未だ怨恨の憂い、闘訟の変有らず。聖者すら猶お韋編三たび絶つ、以て経業に勤む、凡才近人は、安んぞ兼ねて修むるを得ん。惟だ諸戯は尽く一尺の書を示すに如かず。故に本より喜ばざるに因りて為さず、蓋し此れ俗人の親しむ所なり。
現代語訳
私は体質は素直で性質は鈍く、好んで遊ぶものが少なく、幼い髪を結い垂らした頃から、瓦を投げたり手で土をこねたりするのも、子供の仲間に及ばず、鶏やあひるを闘わせたり、犬や馬を走らせたりしたことがなく、人が博戯をしているのを見ても、まるで目を向けなかった。無理に連れて行って見せられても、まったく心に入らず、昼寝をしているようであった。そのため今に至るまで、碁盤に幾筋の線があるか、樗蒲の駒の名も知らない。また思うに、こうした末技は、思いを乱して日月を妨げ、位にある者は政事を損ない、儒者は講誦を廃し、庶民は稼穡を忘れ、商人は財貨を失う。勝負がまだ決まらないと、市で争い、心は中で熱く、顔は外で愁い、これを楽しみと名づけるが、実は煎られやつれることで、廉恥の操を失い、争いの端を開き、互いに多額の財を取り、密かに怨みの隙を結ぶ。昔、宋の閔公や呉の太子は頭を砕かれる禍を招き、叛乱の変を生じ、七国を覆滅して、天朝をほとんど傾けかけた。百代への戒めとなり、その鑑は明らかである。いつも戯れを見る者が、次第に怒りが集まり、手足が及び、醜い罵りが加わり、交わりを絶って友を壊すことが、しばしばある。怨みは大でも小でもなく、多く悔いや恥を招く、行うに足りない。孔子は昼寝の戒めをしたが、私と比べるなら、私は実際、昼寝よりも賢いとは認めない。なぜなら昼寝はただ無益なだけで、怨恨の憂いや争いの変は生じない。聖者ですら韋編三絶して経業に励んだ。凡才の近人が、どうして兼ねて修められようか。ただ諸々の戯れは、すべて一尺の書を見せるに及ばない。ゆえに、もともと好まないために行わない。これは俗人が親しむところである。
解説
この章句が説くこと
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抱朴子外篇・自敘洪は尤も無義の人を疾む。農桑の本業に勤めず、非義の奸利を慕う。郷論を持する者は、選挙を売りて以て謝を取り、威勢有る者は、符疏を解きて以て財を索む。或いは罪人の賂有り、或いは理有るの家を枉ぐ。或いは逋逃の薮と為り、亡命の人を饗す。或いは民丁を挟み使いて、以て公役を妨ぐ。或いは強いて銭物を収め、以て貴価を求む。或いは市肆を占錮し、百姓の利を奪う。或いは人の田地を割き、孤弱の業を劫す。官府の間を惚恫して、以て掊剋の益を窺い、内は以て妻妾に誇り、外は以て名位を釣る。其の此くの如き者は、与に交わらず。是に由りて俗人は洪を憎む、己を疾むなり、自然に疏絶す。故に巷に車馬の跡無く、堂に異志の賓無く、庭は雀羅を設く可く、而して几筵に塵を積む。
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抱朴子外篇・自敘事平らぎ、洪は戈を投じ甲を釈きて、径ちに洛陽に詣り、広く異書を尋ねんと欲し、了に戦功を論ぜず。竊かに魯連の聊城の金を受けざる、包胥の存楚の賞を納れざる、功を成して処らざるの義を慕う。正に上国の大乱に遇い、北道通ぜず。而して陳敏又た江東に反き、帰途は隔塞す。会たま故人の譙国の嵇君道有り、用いられて広州刺史と為る。乃ち表して洪を請いて参軍と為さしむ。楽しむ所に非ずと雖も、然れども利は地を南に避く可くして、故に黽勉して就く。遣わされて先行して兵を催し、而るに君道は後に害に遇い、遂に広州に停まる。頻りに節将に邀えられ用いらるるも、皆な就かず。永く惟うに、富貴は以て漸く得可くして頓に合う可からず、其の間は屑屑として、亦た以て人を労するに足る。且つ栄位勢利は、譬えば寄客の如く、既に常の物に非ず、又た其の去るも留む可からず。隆隆たる者は絶え、赫赫たる者は滅ぶ。春華の如く有りて、須臾にして凋落し、之を得るも喜ばず、之を失うも安んぞ悲しまん。悔吝は百端、憂懼して兢戦し、勝げて言う可からず。為す可からざるなり。且つ自ら度るに、性は篤く懶にして、才は至って短し。篤懶を以て短才を御せば、肩を翕め膝を屈して、風塵に趨走すと雖も、猶お必ず大致を名位に辦じて患累を免れざらん、況んや能わざるをや。
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