抱朴子外篇 / 自敘
會遇兵亂,流離播越,有所亡失,連在道路,不復投筆十餘年,至建武中,乃定凡著《內篇》二十卷,《外篇》五十卷,碑頌詩賦百卷,軍書檄移章表箋記三十卷,又撰俗所不列者,為《神仙傳》十卷,又撰高尚不仕者,為《隱逸傳》十卷又抄五經、七史、百家之言,兵事、方伎、短雜奇要三百一十卷,別有目錄。其《內篇》言神仙方藥、鬼怪變化、養生延年、禳邪卻禍之事,屬道家;《外篇》言人間得失,世事臧否,屬儒家。洪見魏文帝《典論》自敘,未及彈棋擊劍之事,有意於略說所知,而實不數少所便能,不可虛自稱揚。今將具言,所不閒焉。
新字:会遇兵乱,流離播越,有所亡失,連在道路,不復投筆十余年,至建武中,乃定凡著《内篇》二十巻,《外篇》五十巻,碑頌詩賦百巻,軍書檄移章表箋記三十巻,又撰俗所不列者,為《神仙伝》十巻,又撰高尚不仕者,為《隠逸伝》十巻又抄五経、七史、百家之言,兵事、方伎、短雑奇要三百一十巻,別有目録。其《内篇》言神仙方薬、鬼怪変化、養生延年、禳邪却禍之事,属道家;《外篇》言人間得失,世事臧否,属儒家。洪見魏文帝《典論》自敘,未及弾棋撃剣之事,有意於略説所知,而実不数少所便能,不可虚自称揚。今将具言,所不閒焉。
書き下し
兵乱に会遇し、流離播越して、亡失する所有り、連なりて道路に在り、復た筆を投ずるに十余年、建武中に至りて、乃ち定む。凡そ内篇二十巻、外篇五十巻、碑頌・詩賦百巻、軍書・檄移・章表・箋記三十巻を著し、又た俗の列せざる所を撰びて、神仙伝十巻と為し、又た高尚して仕えざる者を撰びて、隠逸伝十巻と為し、又た五経・七史・百家の言、兵事・方伎・短雑奇要三百一十巻を抄し、別に目録有り。其の内篇は神仙・方薬・鬼怪変化・養生延年・禳邪却禍の事を言い、道家に属す。外篇は人間の得失、世事の臧否を言い、儒家に属す。洪は魏文帝の典論の自敘を見るに、弾棋・撃剣の事に及ばず、意は略ぼ知る所を説くに有りて、而れども実は少しく便とする所を数えず、虚しく自ら称揚す可からず。今将に具さに言わんとす、閑わざる所なり。
現代語訳
兵乱に遭い、流浪して各地を移り、失ったものがあり、連なって道路にいたため、再び筆を執るまでに十年余りを要し、建武年間になってようやく定まった。全部で内篇二十巻、外篇五十巻、碑頌・詩賦百巻、軍書・檄・移・章表・箋記三十巻を著し、また世に列伝されない者を撰んで神仙伝十巻とし、また高尚で仕えなかった者を撰んで隠逸伝十巻とし、さらに五経・七史・諸子百家の言、兵事・方伎・短雑奇要三百十巻を抄出し、別に目録がある。その内篇は神仙・方薬・鬼怪変化・養生延年・禳邪却禍の事を論じ、道家に属する。外篇は人間の得失、世事の善し悪しを論じ、儒家に属する。私は魏の文帝の『典論』の自敘が弾棋・撃剣のことに及ばなかったのを見て、おおよそ自分の知るところを説こうと考えたが、実はあまり得意なことを数えず、むなしく自ら称揚することはできない。今これから詳しく述べる、得意でないことを。
解説
この章句が説くこと
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抱朴子外篇・自敘先に作る所の子書の内外篇は、幸いに已に功夫を用い、聊か復た撰次して、以て将来に示すと云爾。洪は年十五、六の時、作る所の詩賦・雑文、当時自ら代に行う可しと謂う。弱冠に至りて、更に之を詳省するに、殊に多くは意に称わず。天才は未だ必ずしも増さざるも、直だ覧る所の差広くして、妍媸の別を覚ゆ。是に於いて大いに制する所有り、十を棄てて一も存せず。今は作る所の子書を除けば、但だ雑尚お余百所巻、猶お未だ損益の理を尽くさず、而して多く慘憤し、復た料護するに遑あらず。他人は文成れば、便ち快意と呼ぶも、余は才鈍く思い遅く、実に爾る能わず。文章を作るに一字を更うる毎に、輒ち自ら転た勝る。但だ懶きを患い、又た作る所の多くは数しば省るる能わざるのみ。洪は年二十余にして、乃ち計るに細碎の小文を作るは功日を妨棄するに、未だ一家の言を立つるに若かず、乃ち子書を草創す。
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抱朴子外篇・自敘晩に風角・望気・三元・遁甲、六壬・太一の法を学び、粗ぼ其の旨を知るも、又た研精せず。亦た計るに此の輩は率ね是れ人の為に用うるの事にして、同じく身情に出づれば、此を以て自ら労役するを急とする無く、子書の益有るを省るに如かずとして、遂に又た廃す。別録・芸文志を案ずるに、衆は一万三千二百九十九巻有り、而れども魏代より以来、群文は滋え長じ、往者に倍す。乃ち自ら未だ見ざる所の多きを知る。江表の書籍は、通じて具わらず、昔京師に詣りて奇異を索めんと欲せしも、正に大乱に値い、半道にして還る。毎に自ら嘆恨す。今は歯は不惑に近く、素志は衰頽し、但だ損して又た損し、無為を為すを念い、藪沢に偶耕して、苟くも性命を存するのみ。博涉の業は、是に於いて日に沮まる。
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抱朴子外篇・自敘洪は既に自敘の篇を著すに、或る人難じて曰く、「昔、王充は年耳順に在り、道窮まり望み絶えて、身名の偕に滅ぶを懼れ、故に自ら紀して篇を終えたり。先生は始立の盛んなるを以て、有道の運に値い、方に申公の束帛を解き、穆生の蒲輪に登り、藻を九五に耀かし、声を昆吾に絶たんとす。何ぞ芬芳の揚がらざるを憾みて、老生の彼の務めを務むるや」と。洪は答えて曰く、「夫れ二儀は弥邈なるも、人の居るは寓の若し。朝菌の耀秀を以てするも、晷を移さずして殄瘁し、春華の暫く栄ゆるに類し、旬を改めずして凋墜す。飛飆の霄を経、激電の乍ち照らすと雖も、未だ必ずしも速やかならざるなり。夫れ期賾は奔星の煙を騰ぐるが猶く、黄髪は激箭の隙を過ぐるが如し。況んや未だ萌さずして籜を殞とし、秋に逆らいて霧のごとく瘁む者をや。故に項子に含穂の嘆き有り、揚烏に夙折の哀しみ有り。遠古を歴覧するに、逸倫の士は、或いは文芸を以て龍躍し、或いは武功を以て虎踞し、高勲は盟府に著れ、徳音は管弦に被り、形器は雖も瀋みて淵壌に鑠くるも、美談は飄飄として日に載り、故に千百代と雖も、猶お穆如たり。余は庸陋を以て、瀋抑して婆婆たり、用いられて時に合わず、行いは世に舛い、音を発すれば響は俗と乖き、足を抗ぐれば跡は衆と迕う。内に金張の援無く、外に弾冠の友に乏し。途に循えば坦なりと雖も、而れども足に騏麟無く、六虚は曠しと雖も、而れども翼は大鵬に非ず。上は鷹揚して国を匡す能わず、下は以て親を顕らかにし名を垂るる無し。美は良史に寄せられず、声は鍾鼎に附かず。故に著述の余に因りて、自敘の篇を為り、窮達に補う無しと雖も、亦た将来の述ぶる有るに頼らん」と。
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抱朴子外篇・自敘洪の人と為りや、騃野にして、性は鈍く口は訥、形貌は醜陋なれども、終に弁じて自ら矜飾せず。冠履は垢弊し、衣は或いは襤褸なれども、或いは恥じず。俗の服用は、屢しば改まり、或いは忽ち広領大帯、或いは身を促め袖を修くし、或いは長裾地に曳き、或いは短くして脚を蔽わず。洪は常を守るを期し、世の変に随わず。言えば則ち率ね実にして、嘲戯を杜絶し、其の人を得ざれば、終日默然たり。故に邦人は鹹な之を称して抱朴の士と為す。是を以て洪は書を著し、因りて以て自ら号す。洪は稟性尪羸にして、之に兼ねて疾多く、貧にして車馬無く、徒行に堪えず、行くも亦た性の好まざる所なり。又た弊俗の本を捨て末を逐い、交游の過差なるを患う。故に遂に筆を撫して閒居し、静を蓽門に守りて趨従する所無く、権豪の徒に至りては、密跡に在りと雖も、或いは相い識る莫し。衣は寒を辟けず、室は漏るるを免れず、食は虚を充たさず、名は戸を出でざるも、憂うる能わず。貧にして僮僕無く、籬落は頓決し、荊棘は庭宇に叢り、蓬莠は階雨に塞がる。榛を披きて門を出で、草を排して室に入る。論ずる者は以て意は遠きに忽近にして恕せずと為す。其の役に乏しきなり。暁謁せず、故に初めより官長に見ゆるを修めず。大喪を吊い、困疾を省るに至りては、乃ち心に自ら勉めんと欲し、強いて必ず至らしむるも、居疾は少しく健なり。
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抱朴子外篇・自敘年十六にして、始めて孝経・論語・詩・易を読む。貧乏にして以て遠く師友を尋ぬる無く、孤陋にして寡聞、明は浅く思いは短く、大義は多く通ずる能わざる所なるも、但だ広く覧るを貪り、衆書に於いて乃ち暗誦し精持せざる無し。曾て披き涉りし所は、正経・諸史・百家の言より、下は短雑の文章に至るまで、万巻に近し。既に性は暗くして忘れ善く、又た文少なく、意志は専らならず、識る所は甚だ薄く、亦た惑いを免れず、而れども著述の時には猶お引用する有るを得、竟に純儒と成らず、伝授の師と為るに中らず。其の河洛・図緯は、一たび視て便ち止め、意を留むるを得ず。星書及び算術・九宮・三棋・太一・飛符の属を喜ばず、了に従わず。其の人を苦しめて気味少なきに由る。
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抱朴子外篇・自敘至りて近人の、或いは其の長ずる所を恃みて人の短き所を軽んずるを患う。洪は忝くも儒者の末と為り、人と言う毎に、常に其の知る所を度りて之を論じ、強いて之を引きて彼の聞かざる所に造らしめず。学士と弁識する所有るに及びては、毎に綱領を挙ぐ。若し短きを惜しみて、心義を解し難きに値えば、但だ粗ぼ意の向く所を説き、以て発悟せしむるに足らしむるのみにして、理を苦しめて、彼をして率ね自ら還るを得ざらしめず。彼の静心なる者は、詳らかに存して之を思えば、則ち多く自ら覚りて之を得る者あり。与に言う可からずと度るものは、或いは問うこと有りと雖も、常に辞するに知らざるを以てし、以て辞を費やすの過ちを免る。洪は性深く官長を乾煩するを好まず。少きより長ずるに及ぶまで、曾て知己の抑えらるる者数人を救い、已むを得ずして、位に在る者に言う有るも、然れども其の人は皆洪の恤えるを知らず。其の非理に陥るを見るに忍びず、密かに自ら之を営むのみ。其の余は親至の者と雖も、事を在り勢を秉りて、洪と惜しむ無き者は、終に片言半字を以て、少しも之を累わさざるなり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
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