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抱朴子外篇 / 詰鮑

「且夫逮古質樸,蓋其未變,民尚童蒙,機心不動,譬夫嬰孩,智慧未萌,非為知而不為,欲而忍之也。若人與人爭草萊之利,家與家訟巢窟之地,上無治枉之官,下有重類之黨,則私鬥過於公戰,木石銳於幹戈,交屍布野,流血絳路,久而無君,噍類盡矣。至於擾龍馴鳳,河圖洛書,或麟銜甲負,或黃魚波湧,或丹禽翔授,或回風三集,皆在有君之世,不出無王之時也。夫祥瑞之徵,指發玄極,或以表革命之符,或以彰至治之盛,若令有君,不合天意,彼嘉應之來,孰使之哉?子若以混冥為美乎?則乾坤不宜分矣;若以無名為高乎?則八卦不當畫矣。豈造化有謬,而太昊之暗哉?雅論所尚,唯貴自然,請問夫識母忘父,群生之性也;拜伏之敬,世之末飾也。然性不可任,必尊父焉;飾不可廢,必有拜焉。任之廢之,子安乎?

新字:「且夫逮古質樸,蓋其未変,民尚童蒙,機心不動,譬夫嬰孩,智慧未萌,非為知而不為,欲而忍之也。若人与人争草萊之利,家与家訟巣窟之地,上無治枉之官,下有重類之党,則私鬥過於公戦,木石鋭於幹戈,交屍布野,流血絳路,久而無君,噍類尽矣。至於擾竜馴鳳,河図洛書,或麟銜甲負,或黄魚波湧,或丹禽翔授,或回風三集,皆在有君之世,不出無王之時也。夫祥瑞之徴,指発玄極,或以表革命之符,或以彰至治之盛,若令有君,不合天意,彼嘉応之来,孰使之哉?子若以混冥為美乎?則乾坤不宜分矣;若以無名為高乎?則八卦不当画矣。豈造化有謬,而太昊之暗哉?雅論所尚,唯貴自然,請問夫識母忘父,群生之性也;拝伏之敬,世之末飾也。然性不可任,必尊父焉;飾不可廃,必有拝焉。任之廃之,子安乎?

書き下し

「且つ夫れ古に逮びて質樸なるは、蓋し其の未だ変ぜざるなり。民は尚お童蒙にして、機心動かず、夫の嬰孩の、智慧未だ萌さざるに譬う。知りて為さざるに非ず、欲して之を忍ぶに非ざるなり。若し人と人と草莱の利を争い、家と家と巣窟の地を訟え、上に枉を治むるの官無く、下に類を重ぬるの党有らば、則ち私闘は公戦に過ぎ、木石は干戈より鋭く、屍を交え野に布き、血を流して路を絳くす。久しく君無くんば、噍類尽きん。擾龍馴鳳、河図洛書に至りては、或いは麟甲を銜え負い、或いは黄魚波に湧き、或いは丹禽翔り授け、或いは回風三たび集まるも、皆な君有るの世に在りて、無王の時には出でず。夫れ祥瑞の徴は、玄極を指し発し、或いは以て革命の符を表し、或いは以て至治の盛を彰らかにす。若し君有るをして、天意に合わざらしめば、彼の嘉応の来たること、孰か之を使めんや。子若し混冥を以て美と為さば、則ち乾坤は分かつ宜からず。若し無名を以て高しと為さば、則ち八卦は画く当からず。豈に造化に謬り有りて、太昊の暗きならんや。雅論の尚ぶ所は、唯だ自然を貴ぶ。請い問う、母を識りて父を忘るるは、群生の性なり。拜伏の敬は、世の末飾なり。然れども性は任す可からず、必ず父を尊ぶ。飾は廃す可からず、必ず拝有り。之を任せ之を廃す、子は安んずるか。

現代語訳

「そもそも、昔が素朴だったのは、まだ変化しなかったからである。民はなお幼く、たくらみの心が動かず、あたかも赤子の、知恵がまだ芽生えていないようなものだ。知っていてしないのでも、欲しいのに耐えているのでもない。もし人と人とが草むらの利を争い、家と家とが巣穴の地を訴え合い、上に曲がりを正す官はなく、下には仲間を重ねる党があるなら、私闘は公の戦よりひどく、木や石が武器よりも鋭くなり、屍が入り乱れて野に広がり、血が流れて道を赤く染める。久しく君主がなければ、生き物は尽きるだろう。龍をなつけ鳳を馴らし、河図洛書が出る時代には、麒麟が甲羅を背負い、黄魚が波に湧き、赤い鳥が舞い授け、つむじ風が三度集まったが、いずれも君主のいる世にあって、王のいない時には現れなかった。吉祥のしるしは、玄妙な極みを指して起こり、革命の符を表すこともあれば、至治の盛んさを彰らかにすることもある。もし君主がいることが天意に合わないのなら、あの良い兆しが来るのは、誰がそうさせているのか。あなたが混沌をよしとするなら、天地は分かたれるべきではなかった。名のないことを高しとするなら、八卦は画かれるべきではなかった。造化に誤りがあり、伏羲が暗愚だったというのか。あなたの高尚な論が尊ぶのはただ自然である。お尋ねする。母を知って父を忘れるのは、生き物の本性である。拝伏の礼は、世の末の飾りである。しかし本性に任せきってはならず、必ず父を尊ぶ。飾りは廃してはならず、必ず拝礼がある。これに任せ、これを廃して、あなたは安んじられるか。

解説

素朴な古代が平和だったのは、民に「機心」がまだ芽生えていなかったからで、知恵が生まれれば争いは避けられない、というのが葛洪の見立てです。「若し人と人と草莱の利を争い、家と家と巣窟の地を訟え」と、上に裁く者がなければ、私闘は公戦より激しくなると言う。さらに母を識って父を忘れるのは生き物の性、しかし人はそれに任せず父を尊ぶ。自然のままに任せることと、人が築いた礼を保つことの緊張関係です。組織の初期の仲間同士の素朴さは、規模が増えれば維持できません。人が増えた時点で、役割の線引きを決める必要があります。

この章句が説くこと

智慧未だ萌さざるに譬う上に枉を治むるの官無く母を識りて父を忘るるは素朴礼争い

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