抱朴子外篇 / 彈禰
久之,射曰:「前所視碑文大佳,恨不寫也。」衡曰:「卿存其名目耳。我一覽尚記之。」即為暗書之,末有一字,石缺,乃不分明。衡與半字,曰:「疑此當作某字。恐不審也。」射省可。雖言行輕人,寧願榮顯,是以高遊鳳林,不能幽翳蒿萊,然修己駁刺,迷而不覺,故開口見憎,舉足蹈禍。賫如此之伎倆,亦何理容於天下而得其死哉?猶梟鳴狐嚾,從皆不喜,音響不改,易處何益。許下,人物之海也。文舉為之主任,荷之足以至到,於此不安,已可知矣。猶必死之病,俞附越人,所無如何。朽木鉛鋌,班輸歐冶所不能匠也。而復走投荊楚間,終陷極害,此乃衡懵蔽之效也。蓋欲之而不能得,非能得而弗用者矣。於戲才士,可勿戒哉!嵇生曰:「吾所惑者,衡之虛名也;子所論者,衡之實病也。敢不寤寐於指南,投杖於折中乎!」
新字:久之,射曰:「前所視碑文大佳,恨不写也。」衡曰:「卿存其名目耳。我一覧尚記之。」即為暗書之,末有一字,石欠,乃不分明。衡与半字,曰:「疑此当作某字。恐不審也。」射省可。雖言行軽人,寧願栄顕,是以高遊鳳林,不能幽翳蒿萊,然修己駁刺,迷而不覚,故開口見憎,舉足蹈禍。賫如此之伎倆,亦何理容於天下而得其死哉?猶梟鳴狐嚾,従皆不喜,音響不改,易処何益。許下,人物之海也。文舉為之主任,荷之足以至到,於此不安,已可知矣。猶必死之病,兪附越人,所無如何。朽木鉛鋌,班輸欧冶所不能匠也。而復走投荊楚間,終陥極害,此乃衡懵蔽之効也。蓋欲之而不能得,非能得而弗用者矣。於戯才士,可勿戒哉!嵇生曰:「吾所惑者,衡之虚名也;子所論者,衡之実病也。敢不寤寐於指南,投杖於折中乎!」
書き下し
久しくして、射曰く、「前に視る所の碑文は大いに佳し。写さざるを恨む」と。衡曰く、「卿は其の名目を存するのみ。我は一覧して尚お之を記す」と。即ち為に暗に之を書く、末に一字有り、石缺けて、乃ち分明ならず。衡は半字を与え、曰く、「疑うらくは此れ当に某字に作るべし。恐らくは審らかならず」と。射は省て可とす。言行は人を軽んずと雖も、寧ろ栄顕を願い、是を以て高く鳳林に遊び、蒿萊に幽翳する能わず、然れども己を修むること駁刺にして、迷いて覚らず、故に口を開けば憎まれ、足を挙げれば禍を蹈む。此の如き伎倆を賫して、亦た何の理ありて天下に容れられて其の死を得んや。猶お梟の鳴き狐の嚾くがごとく、従に皆な喜ばず、音響の改まらざれば、処を易うるも何の益あらん。許下は、人物の海なり。文挙は之が主任と為り、荷うこと至到するに足るも、此に安んぜざるは、已に知る可し。猶お必死の病に、俞附・越人すら如何ともする所無きがごとし。朽木鉛鋌は、班輸・欧冶の匠する能わざる所なり。而るに復た荊楚の間に走り投じ、終に極害に陥るは、此れ乃ち衡の懵蔽の効なり。蓋し之を欲して得る能わず、得る能くして用いざるに非ざる者なり。於戯、才士、戒む可からざるか。嵇生曰く、「吾が惑う所の者は、衡の虚名なり。子の論ずる所の者は、衡の実病なり。敢えて指南に寤寐し、杖を折中に投ぜざらんや」と。
現代語訳
しばらくして、黄射が言った。「前に見た碑文はたいへんよかった。写しておかなかったのが残念だ」と。禰衡は言った。「あなたは題目しか覚えていないだけだ。私は一度見て、なお覚えている」と。そこで黄射のために暗唱して書き写した。末尾に一字、石が欠けてはっきりしない箇所があった。禰衡は半字を与えて言った。「おそらくこれは某の字であろう。はっきりしないが」と。黄射は見て承知した。言行は人を軽んじていたが、むしろ栄達を願い、そのため高い鳳の林には遊んでも、草むらに身を隠すことはできなかった。しかし自分を修めることは棘だらけで、迷って気づかず、口を開けば憎まれ、足を挙げれば禍を踏んだ。このような技量を持ちながら、どういう理由で天下に容れられて天寿を全うできようか。梟が鳴き、狐が吠えるようなもので、周りはみな喜ばず、その声が改まらなければ、場所を変えても何の益があろう。許の都は人物の海である。孔文挙がその主となり、担うことも十分であったが、ここに安んじられなかったのだから、すでに分かることである。必死の病には、名医の兪跗や扁鵲も手の施しようがないのと同じ。朽ちた木や鉛の刃は、公輸班や欧冶でも細工できない。それなのにまた荊楚のあたりへ逃げ込み、ついに極限の害に陥ったのは、禰衡の暗さと蔽いの結果である。おそらく、望んでも手に入れられなかったのであり、手に入れられたのに用いなかったのではない。ああ、才ある士は、戒めずにいられようか。嵇生は言った。「私が惑ったのは、禰衡の虚名でした。あなたが論じたのは、禰衡の実際の病です。ぜひ指南として寝ても覚めても心にとめ、杖を折中に投じて従いましょう」と。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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説苑・奉使晏子將に荊に使いせんとす。荊王之を聞き、左右に謂いて曰く、「晏子は賢人なり。今方に來らんとす。之を辱めんと欲す、何を以てせん。」左右對えて曰く、「其の來るに爲り、臣請う一人を縛りて王を過りて行かしめん。」是に於て荊王晏子と立ちて語る。一人を縛る有り、王を過りて行く。王曰く、「何を爲す者ぞ。」對えて曰く、「齊人なり。」王曰く、「何の坐ぞ。」曰く、「盜に坐す。」王曰く、「齊人固より盜するか。」晏子反顧して之に曰く、「江南に橘有り、齊王人をして之を取りて江北に樹えしむるに、生じて橘と爲らず、乃ち枳と爲る。然る所以は何ぞ。其の土地之をして然らしむるなり。今齊人齊に居りて盜せず、荊に來りて盜す、土地之をして然らしむる無きを得んか。」荊王曰く、「吾子を傷つけんと欲して反りて自ら中れり。」
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論語・衛霊公篇子貢、仁を為すを問う。子曰く、「工、其の事を善くせんと欲すれば、必ず先ず其の器を利くす。是の邦に居るや、其の大夫の賢者に事え、其の士の仁者を友とす。」
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孫子・始計篇天とは、陰陽・寒暑・時制なり。
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孟子・盡心章句下孟子曰く、「君子の陳・蔡の間に戹するは、上下の交はり無ければなり。」
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孟子・滕文公章句下孟子、戴不勝に謂いて曰く、「子は子の王の善ならんことを欲するか。我明らかに子に告げん。此に楚の大夫有らんに、其の子の齊語せんことを欲すれば、則ち齊人をして諸に傅たらしめんか。楚人をして諸に傅たらしめんか。」曰く、「齊人をして之に傅たらしめん。」曰く、「一齊人之に傅たるも、衆楚人之を咻せば、雖日に撻(むちうつ)ちて其の齊たらんことを求むと雖も、得可からず。引いて之を莊嶽の間に置くこと數年ならば、日に撻ちて其の楚たらんことを求むと雖も、亦た得可からず。子、薛居州を善士と謂い、之をして王の所に居らしむ。王の所に在る者、長幼卑尊、皆薛居州ならば、王は誰と與にか不善を為さん。王の所に在る者、長幼卑尊、皆薛居州に非ざれば、王は誰と與にか善を為さん。一薛居州、獨り宋王を如何せん。」 <語釈> ○「咻」、音はキュウ、義はかまびすしくすること。○「莊嶽」、顧炎武云う、莊は是れ街の名、嶽は是れ里の名。
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『墨子』所染子墨子、染絲する者を見て歎じて言いて曰く、「蒼に染むれば則ち蒼く、黄に染むれば則ち黄なり。入るる所の者變ずれば、其の色も亦た變ず。五たび入れて已に五色と為る。故に染は慎まざる可からざるなり」と。
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