抱朴子外篇 / 博喻
抱樸子曰:盈乎萬鈞,必起於錙銖;竦秀淩霄,必始於分毫。是以行潦集而南溟就無涯之曠,尋常積而玄圃致極天之高。
新字:抱樸子曰:盈乎万鈞,必起於錙銖;竦秀淩霄,必始於分毫。是以行潦集而南溟就無涯之曠,尋常積而玄圃致極天之高。
書き下し
抱朴子曰く、万鈞に盈つるも、必ず錙銖より起こり、竦秀して霄を凌ぐも、必ず分毫より始まる。是を以て行潦集まりて南溟は無涯の曠きを就し、尋常積もりて玄圃は極天の高きを致す。
現代語訳
抱朴子は言う。万鈞の重さに満ちるものも、必ず錙銖の軽さから起こる。そびえ立って天を凌ぐものも、必ず分毫の小ささから始まる。だから、道ばたの水たまりが集まって南の大海は果てしない広さを成し、一尋ほどの高さが積もって玄圃の山は天に極まる高さに至る。
解説
積小為大を、重さの単位と水のたとえで言う冒頭の一句です。「万鈞に盈つるも、必ず錙銖より起こり」。万鈞の重さも、錙や銖という軽い単位の積み重ねだと言います。大海も水たまりが集まって広さを成す、というたとえが続きます。博喩の巻頭にこの句を置いたことで、以下の短い箴言が小さな比喩の積み重ねで大きな論を成す、という体裁も暗に示されます。現場では、大きな成果を一気に狙うより、日々の小さな改善や記録の蓄積が後から組織の土台になる、という地味な読み方ができます。
この章句が説くこと
必ず錙銖より起こり必ず分毫より始まる行潦集まりて南溟は無涯の曠きを就し積む蓄積
関連する章句
-
抱朴子外篇・廣譬抱朴子曰く、事は微に縁りて著を成すもの有り、物は近きを治めて遠きを致すもの有り。故に歩武の池を修めて、沈鱗を江海より引き、朝陽の林を豊かにして、霊禽を丹穴より延き、象を盤盂に設けて、翠虬玄霄より降り、灰を尺水に委ねて、望舒太極に変ず。是を以て晋文は輪を勇虫に回らし、壮士雲のごとく赴き、句践は躬を怒蛙に曲げ、戎卒死を軽んず。九九顕れて扣角の俊至り、枯骨掩われて参分の仁洽し。
-
抱朴子外篇・博喻抱朴子曰く、価直万金なる者は、其の物を見るを待たずして好悪別つ可く、条枝連抱なる者は、其の木を囲むを俟たずして巨細論ず可し。故に洪濤の天に滔るを望めば、則ち其の潢汙の中に起こらざるを知り、翰草の汪濊たるを観れば、則ち其の章句の徒より出でざるを知る。
-
抱朴子外篇・博喻抱朴子曰く、蔭を万畝に垂るる者は、必ず峻極の嶺に出づ、天に滔り陵に襄る者は、必ず板桐の源より発す。邈世の勲は、必ず絶倫の器に由り、傾きを定むるの算は、必ず冠俗の懐より吐く。是を以て焦螟の巣の蟲には、風に乗るの羽無く、溝澮の中には、宵朗の琦無し。
-
抱朴子外篇・廣譬抱朴子曰く、源を開くこと億仞ならざれば、則ち山を懐くの流れ無く、崇峻の霄を淩がざれば、則ち天に彌るの雲無し。財豊かならざれば、則ち其の恵み博からず、才遠からざれば、則ち其の辞贍らず。故に盈丈の牙を睹れば、則ち其の径寸の口より出でざるを知り、百尋の枝を則れば、則ち其の毫末の木に附かざるを知る。
-
抱朴子外篇・喻蔽若し雅論の如く、少なきを貴び多きを賤しむならば、則ち穹隆は宏き燾いに取る無く、旁泊は厚き載せるを貴ばず。夫れ跡水の中に、舟を呑む鱗無く、寸枝の上に、天に垂るる翼無し。蟻垤の巓に、扶桑の林無く、潢潦の源に、陵を襄る流れ無し。巨鰲は首に瀛洲を冠し、飛波は方丈を淩ぐ。洪桃は度陵に盤り、建木は都広に竦ゆ。沈鯤は天池に横たわり、雲鵬は玄象に戻る。且つ夫れ雷霆の駭くは、其の響きを細くする能わず。黄河の激するは、其の流れを局する能わず。騏騄は風を追い、其の跡を近くする能わず。鴻鵠は翅を奮い、其の飛ぶを卑くする能わず。雲厚き者は雨必ず猛く、弓勁き者は箭必ず遠し。王生は学博く才大なり、又た安んぞ省みんや。
-
抱朴子外篇・廣譬抱朴子曰く、重淵洞地せざれば、則ち螭龍を含み、吞舟を吐く能わず。峻山天を極めざれば、則ち琳瑯を韜み、雲雨を播く能わず。徳を立てて俗を絶せざれば、則ち美声を収め、厚実を著す能わず。志を執りて群を絶せざれば、則ち成功に臻り、弘勲を銘す能わず。而るに凡夫は朝に蜩翼の善を為し、夕べに丘陵の益を望む。猶お黍稷を立植して、坐して豊収を索むるがごとし。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る