導師導古典を学びたいすべての人に 法人向けワークシート法人向けワークシート

抱朴子外篇 / 仁明

門人曰:「仲尼嘆仁為任重而道遠,又雲,人而不仁如禮何?若聖與仁,則吾豈敢!孟子曰,仁,宅也;義,路也。人無惻隱之心,非仁也。三代得天下以仁,失天下以不仁。此皆聖賢之格言,竹素之顯證也。而先生貴明,未見典據。小子蔽暗,竊所惑焉。」抱朴子答曰:「古人雲,好仁不好學,其蔽也愚。子近之矣。曩六國相吞,豺虎力競,高權詐而下道德,尚殺伐而廢退讓,孟生方欲抑頓貪殘,褒隆仁義,安得不勤勤諄諄,獨稱仁邪?然未有片言,雲仁勝明也。譬猶疫癘之時,醫巫為貴,異口同辭,唯論藥石,豈可便謂針艾之伎,過於長生久視之道乎?且吾以為仁明之事,布於方策,直欲切理示,大較精神,舉一隅耳。而子猶日用而不知,雲明事之無據乎!乾稱大明終始,六位時成。

新字:門人曰:「仲尼嘆仁為任重而道遠,又雲,人而不仁如礼何?若聖与仁,則吾豈敢!孟子曰,仁,宅也;義,路也。人無惻隠之心,非仁也。三代得天下以仁,失天下以不仁。此皆聖賢之格言,竹素之顕証也。而先生貴明,未見典拠。小子蔽暗,窃所惑焉。」抱朴子答曰:「古人雲,好仁不好学,其蔽也愚。子近之矣。曩六国相呑,豺虎力競,高権詐而下道徳,尚殺伐而廃退譲,孟生方欲抑頓貪残,褒隆仁義,安得不勤勤諄諄,独称仁邪?然未有片言,雲仁勝明也。譬猶疫癘之時,医巫為貴,異口同辞,唯論薬石,豈可便謂針艾之伎,過於長生久視之道乎?且吾以為仁明之事,布於方策,直欲切理示,大較精神,舉一隅耳。而子猶日用而不知,雲明事之無拠乎!乾称大明終始,六位時成。

書き下し

門人曰く、「仲尼は仁を嘆じて任重くして道遠しと為し、又た云う、人にして不仁なれば礼を如何せん、と。聖と仁の若きは、則ち吾豈に敢えてせんや、と。孟子曰く、仁は、宅なり。義は、路なり。人に惻隠の心無きは、仁に非ざるなり、と。三代は仁を以て天下を得、不仁を以て天下を失う。此れ皆な聖賢の格言、竹素の顕証なり。而るに先生は明を貴ぶも、未だ典拠を見ず。小子蔽暗にして、竊かに惑う所なり」と。抱朴子答えて曰く、「古人云う、仁を好みて学を好まざれば、其の蔽や愚、と。子は之に近し。曩に六国相い呑み、豺虎の力競い、権詐を高しとして道徳を下し、殺伐を尚びて退譲を廃す。孟生は方に貪殘を抑頓し、仁義を褒隆せんと欲す。安んぞ勤勤諄諄として、独り仁を称せざるを得んや。然れども未だ片言も、仁は明に勝ると云う有らず。譬うれば猶お疫癘の時、医巫を貴しと為し、異口同辞に、唯だ薬石を論ずるがごとし。豈に便ち針艾の技は長生久視の道に過ぐと謂う可けんや。且つ吾は仁明の事を方策に布くは、直だ理に切して示し、大較精神、一隅を挙げんと欲するのみ。而るに子は猶お日に用いて知らず、明を事とするに据り無しと云うか。乾は大明終始を称し、六位時に成る。

現代語訳

弟子が言った。「孔子は仁について、任は重く道は遠いと嘆かれ、また、人であって不仁ならば礼があっても何になろう、と言われた。聖や仁のようなことは、私などがどうして引き受けられようか、とも言われた。孟子は、仁は人の安らぐ家であり、義は人の歩む路である、人に惻隠の心がないのは仁ではない、と言った。三代は仁によって天下を得、不仁によって天下を失った。これらはみな聖賢の格言であり、書物に明らかな証拠です。ところが先生は明を貴ばれるのに、その典拠を見たことがありません。私は愚かで暗く、ひそかに惑っております」と。抱朴子は答えて言った。「古人は、仁を好んで学を好まなければ、その弊害は愚かさに出る、と言った。君はそれに近い。かつて六国が互いに呑み合い、豺や虎が力を競うように、権謀と偽りを尊んで道徳を低く見、殺伐を尚んで謙譲を廃した。孟子はまさに貪りと残虐を抑え、仁義を褒め盛んにしようとしたのだ。ねんごろに繰り返し、ひとり仁を称えずにいられようか。しかし、仁が明に勝るなどとは、ひとことも言っていない。たとえば疫病の流行する時に、医者と巫が貴ばれ、口をそろえて薬と石針を論じるようなものだ。だからといって、針灸の技が長生きの道に勝るなどと言えるだろうか。そもそも私が仁と明のことを書物に述べるのは、ただ理に切実に当てて示し、おおよその精神を伝え、一隅を挙げようとするだけだ。それなのに君は、日々用いながら気づかず、明にはよりどころがないと言うのか。乾は大いなる明が終始をつかさどり、六つの位が時に応じて成ると称している。

解説

弟子が孔子と孟子を引いて仁の優位を訴え、先生には明を貴ぶ典拠がないと迫る場面です。抱朴子はまず「仁を好みて学を好まざれば、其の蔽や愚」と古人の言葉で切り返し、孟子が仁を説いたのは戦乱の世で貪りと残虐を抑える必要があったからだと事情を示します。疫病の時に薬を論じても、針灸が長寿の道に勝るとは言えない、というたとえが要です。主張が強調されるのは、状況の薬としてであって、順位を決める話ではない。会議で誰かが何かを強く言うとき、その時代背景を読む手がかりになります。

この章句が説くこと

仁を好みて学を好まざれば医巫を貴しと為し針艾の技は長生久視の道に過ぐ状況強調

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る