抱朴子外篇 / 漢過
若夫體亮行高,神清量遠,不諂笑以取悅,不曲言以負心,含霜履雪,義不茍合,據道推方,嶷然不群,風雖疾而枝不撓,身雖困而操不改,進則切辭正論,攻過箴闕,退則端誠杜私,知無不為者,謂之門音騃徒苦。夙興夜寐,退食自公,憂勞損益,畢力為政者,謂之小器俗吏。於是明哲色斯而幽遁,高俊括囊而佯愚,疏賤者奮飛以擇木,縶制者曲從而朝隱,知者不肯吐其秘算,勇者不為致其果毅,忠謇離退,奸兇得誌,邪流溢而不可遏也,偽途辟而不可杜也。以臻乎淩上替下,盜賊多有,宦者奪人主之威,三九死庸豎之手。忠賢望士,謂之黨人,囚捕誅鋤,天下嗟嗷,無罪無辜,閉門遇禍。微煙起於蕭墻,而飈焚遍於宇宙;淺隙發於膚寸,而波濤漂乎四極。金城屠於庶寇,湯池航於一葦,勁銳望塵而冰泮,征人倒戈而奔北,飛鋒薦於戶衣闥,左衽掠於禁省,禾黍生於廟堂,榛莠秀乎玉階,雲觀變為狐兔之藪,象魏化為虎豹之蹊,東序煙燼於委灰,生民火焦淪於淵火,兇家害國,得罪竹帛,良史無褒言,金石無德音。夫何哉?夫人故也。
新字:若夫体亮行高,神清量遠,不諂笑以取悦,不曲言以負心,含霜履雪,義不苟合,拠道推方,嶷然不群,風雖疾而枝不撓,身雖困而操不改,進則切辞正論,攻過箴闕,退則端誠杜私,知無不為者,謂之門音騃徒苦。夙興夜寐,退食自公,憂労損益,畢力為政者,謂之小器俗吏。於是明哲色斯而幽遁,高俊括嚢而佯愚,疏賤者奮飛以択木,縶制者曲従而朝隠,知者不肯吐其秘算,勇者不為致其果毅,忠謇離退,奸兇得誌,邪流溢而不可遏也,偽途辟而不可杜也。以臻乎淩上替下,盗賊多有,宦者奪人主之威,三九死庸豎之手。忠賢望士,謂之党人,囚捕誅鋤,天下嗟嗷,無罪無辜,閉門遇禍。微煙起於蕭墻,而飈焚遍於宇宙;浅隙発於膚寸,而波濤漂乎四極。金城屠於庶寇,湯池航於一葦,勁鋭望塵而冰泮,征人倒戈而奔北,飛鋒薦於戸衣闥,左衽掠於禁省,禾黍生於廟堂,榛莠秀乎玉階,雲観変為狐兔之藪,象魏化為虎豹之蹊,東序煙燼於委灰,生民火焦淪於淵火,兇家害国,得罪竹帛,良史無褒言,金石無徳音。夫何哉?夫人故也。
書き下し
若し夫れ体亮かに行い高く、神清く量遠く、諂笑して以て悦を取らず、曲言して以て心に負かず、霜を含み雪を履み、義は茍くも合わず、道に拠り方を推し、嶷然として群れず、風は疾しと雖も枝は撓まず、身は困しむと雖も操は改めず、進みては則ち辞を切にし論を正し、過ちを攻め闕を箴め、退きては則ち誠を端し私を杜ぎ、知りて為さざる無き者をば、之を門音騃徒苦と謂い、夙に興き夜に寐ね、退きて公に食し、憂労して損益し、力を畢して政を為す者をば、之を小器俗吏と謂う。是に於て明哲は色斯にして幽遁し、高俊は囊を括りて愚を佯り、疏賤の者は奮飛して木を択び、縶制の者は曲従して朝に隠れ、知者は其の秘算を吐くを肯んぜず、勇者は其の果毅を致さず、忠謇は離退し、奸兇は志を得、邪流は溢れて遏む可からず、偽途は辟けて杜ぐ可からず。以て上を淩ぎ下を替し、盗賊多く有り、宦者は人主の威を奪い、三九は庸豎の手に死するに臻る。忠賢の望士を、之を党人と謂い、囚捕誅鋤し、天下嗟嗷し、罪無く辜無きに、門を閉じて禍に遇う。微煙は蕭墻に起こりて、飈焚は宇宙に遍し。浅隙は膚寸に発して、波濤は四極に漂う。金城は庶寇に屠られ、湯池は一葦に航され、勁鋭は塵を望みて氷のごとく泮け、征人は戈を倒して奔北し、飛鋒は戸衣闥に薦まり、左衽は禁省を掠め、禾黍は廟堂に生じ、榛莠は玉階に秀で、雲観は変じて狐兔の藪と為り、象魏は化して虎豹の蹊と為り、東序は煙として委灰に燼き、生民は火に焦がれ淵火に淪む。兇家は国を害し、罪を竹帛に得、良史に褒言無く、金石に徳音無し。夫れ何ぞや。夫れ人の故なり。
現代語訳
もし、人となりが明らかで行いが高く、精神は清く度量が遠く、媚び笑って気に入られようとせず、言葉を曲げて心に背かず、霜を含み雪を踏むように、義によってかりそめにも合わせず、道に拠って方正を押し立て、高くそびえて群れず、風が激しくても枝はたわまず、身は困窮しても操は変えず、進んでは言葉を切実にし論を正し、過ちを攻め欠けを戒め、退いては誠を整え私を塞ぎ、知ったことはすべて行う者を、時流に疎い愚かで苦労の徒と呼び、朝早く起き夜遅く寝て、退庁しても公の食事をとり、憂い労して損益を図り、力を尽くして政に当たる者を、器の小さい俗吏と呼ぶ。そこで明哲な者は兆しを察して隠れ、高い志の者は袋の口を結んで愚かを装い、疎遠で身分の低い者は羽ばたいて木を選び、縛られた者は曲げて従い朝廷に隠れ、知者はその秘策を吐こうとせず、勇者はその果断を尽くさず、忠直な者は離れ退き、奸悪な者は志を得て、邪悪な流れは溢れて止められず、偽りの道は開けて塞げなくなる。こうして上を凌ぎ下を取り替え、盗賊が多く現れ、宦官は君主の威を奪い、三公九卿は凡庸な小者の手にかかって死ぬまでに至った。忠賢の名士を、党人と呼び、捕らえ誅し除き、天下は嘆き叫び、罪なく咎なく、門を閉じて禍にあった。かすかな煙は垣根の内に起こり、烈風と火は天地に広がる。浅い隙間は、ほんの少しのところに生じ、波濤は四方の果てまで漂う。金城は雑多な賊に屠られ、湯池は一本の葦で渡られ、強く鋭い兵は塵を望んで氷のように溶け、出征の者は戈を倒して逃げ、飛ぶ刃は戸口や宮門に積もり、異民族は宮中を掠め、禾や黍は廟堂に生え、雑草は玉の階に伸び、雲を望む楼閣は狐や兎の藪となり、宮門の象魏は虎や豹の通り道となり、東の序は煙として灰に燃え尽き、民は火に焦がれ深い淵の火に沈んだ。凶悪な家は国を害し、罪を竹帛に残し、良史に褒める言葉はなく、金石に徳をたたえる声もない。これはなぜか。人のためである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『呻吟語』内篇・應務・一の拙法有り世人の相與するは、面上に非ざれば則ち口中なり。人の心は固より面と口とに掩ふ能はず。而して測る可からざる者は則ち面と口とに盡きざるなり。故に惟だ人心のみ最も畏る可く、人心最も知る可からず。此れ天下の陷阱にして、古今生死の衢なり。余に一の拙法有り。之を推すに至誠を以てし、之を施すに至厚を以てし、之を持するに至慎を以てし、是非を遠ざけ、利名を讓り、後下に處せば、則ち夷狄鳥獸も骨肉腹心とす可し。將に深き者をして且つ心を傾けしめ、險なる者をして且つ德に化せしめんとす。而して何ぞ陷阱の予に及ばんや。
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史記 項羽本紀項王乃ち海春侯大司馬曹咎等に謂ひて曰く、「謹みて成皋を守れ、則ち漢挑戦せんと欲するも、慎みて与に戦ふ勿かれ、東するを得しむる毋きのみ。我十五日にして必ず彭越を誅し、梁の地を定め、復た将軍に従はん。」と。乃ち東し、行くゆく陳留・外黄を撃つ。外黄下らず。数日にして、已に降る、項王怒り、悉く男子の年十五已上をして城東に詣らしめ、之を阬にせんと欲す。外黄の令の舎人の児年十三、往きて項王に説きて曰く、「彭越彊ひて外黄を劫かす、外黄恐る、故に且く降りて、大王を待つ。大王至りて、又皆之を阬にせば、百姓豈に帰心有らんや。此より以東、梁の地十余城皆恐れ、肯へて下る莫からん。」と。項王其の言を然りとし、乃ち外黄の当に阬にすべき者を赦す。東して睢陽に至る、之を聞きて皆争ひて項王に下る。漢果たして数(しばしば)楚の軍に挑みて戦はんとす、楚の軍出でず。人をして之を辱めしむること、五六日、大司馬怒り、兵を汜水に渡す。士卒半ば渡る、漢之を撃ち、大いに楚の軍を破り、尽く楚国の貨賂を得たり。大司馬咎・長史翳・塞王欣皆汜水の上に自剄す。大司馬咎は、故の蘄の獄掾、長史欣も亦故の櫟陽の獄吏、両人嘗て項梁に徳有り、是を以て項王之を信任す。是の時に当たりて、項王睢陽に在り、海春侯の軍敗るると聞き、則ち兵を引きて還る。漢の軍方に鍾離眛を滎陽の東に囲む、項王至る、漢の軍楚を畏れ、尽く険阻に走る。是の時、漢の兵盛んにして食多く、項王の兵罷れて食絶ゆ。漢陸賈を遣はして項王に説き、太公を請はしむ、項王聴かず。漢王復た侯公をして往きて項王に説かしむ、項王乃ち漢と約し、天下を中分し、鴻溝以西を割く者を漢と為し、鴻溝よりして東なる者を楚と為す。項王之を許し、即ち漢王の父母妻子を帰す。軍皆万歳を呼ぶ。漢王乃ち侯公を封じて平国君と為す。匿れて肯へて復た見えず。
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史記 高祖本紀且つ吾の軍を霸上に還す所以は、諸侯の至るを待ちて約束を定めんのみ。」と。乃ち人をして秦の吏と県郷邑を行かしめ、之に告諭す。秦人大いに喜び、争ひて牛羊酒食を持ちて軍士に献饗す。沛公又譲りて受けず、曰く、「倉粟多し、乏しきに非ず、人に費さしむるを欲せず。」と。人又益々喜び、唯だ沛公の秦王と為らざらんことを恐る。
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『呻吟語』内篇・存心・如何ぞ他を縱容し得んや人心は是れ個の猖狂自在の物、隕身敗家の賊なり。如何ぞ他を縱容し得んや。
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『呻吟語』外篇・治道・人を我に體す先王の政を為すは、全く人心の上に在りて工夫を用ふ。其の人心を體するは、我が心の上に在りて工夫を用ふ。何者ぞ。同然の故なり。故に先王は人を我に體して、民心得られ、天下治まる。
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史記 項羽本紀美人有り名は虞、常に幸せられて従ふ。駿馬名は騅、常に之に騎る。是に於て項王乃ち悲歌忼慨し、自ら詩を為りて曰く、「力は山を抜き気は世を蓋ふ、時利あらず騅逝かず。騅の逝かざる可奈何(いかん)すべき、虞や虞や若を奈何せん。」と。歌ふこと数闋、美人之に和す。項王泣数行下る、左右皆泣き、能く仰ぎ視る莫し。是に於て項王乃ち馬に上りて騎す、麾下の壮士騎して従ふ者八百余人、直ちに夜囲みを潰して南に出で、馳走す。平明、漢の軍乃ち之を覚り、騎将灌嬰をして五千騎を以て之を追はしむ。項王淮を渡る、騎の能く属する者百余人のみ。項王陰陵に至り、迷ひて道を失ひ、一田父に問ふ、田父紿(あざむ)きて曰く「左」と。左すれば、乃ち大沢の中に陥る。故を以て漢之に追ひ及ぶ。項王乃ち復た兵を引きて東し、東城に至る、乃ち二十八騎有り。漢の騎の追ふ者数千人。
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