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抱朴子外篇 / 酒誡

曩既年荒谷貴,人有醉者相殺,牧伯因此輒有酒禁,嚴令重申,官司搜索,收執榜徇者相辱,制鞭而死者太半。防之彌峻,犯者至多。至乃穴地而釀,油囊懷酒。民之好此,可謂篤矣。余以匹夫之賤,托此空言之書,未如之何矣。又臨民者雖設其法,而不能自斷斯物,緩己急人,雖令不從,弗躬弗親,庶民弗信。以此而教,教安得行;以此而禁,禁安得止哉?沽賣之家,廢業則困,遂修飾賂遺,依憑權右,所屬吏不敢問。無力者獨止,而有勢者擅市。張爐專利,乃更倍售,從其酤買,公行靡憚,法輕利重,安能免乎哉?

新字:曩既年荒谷貴,人有酔者相殺,牧伯因此輒有酒禁,厳令重申,官司捜索,収執榜徇者相辱,制鞭而死者太半。防之弥峻,犯者至多。至乃穴地而醸,油嚢懐酒。民之好此,可謂篤矣。余以匹夫之賤,托此空言之書,未如之何矣。又臨民者雖設其法,而不能自断斯物,緩己急人,雖令不従,弗躬弗親,庶民弗信。以此而教,教安得行;以此而禁,禁安得止哉?沽売之家,廃業則困,遂修飾賂遺,依憑権右,所属吏不敢問。無力者独止,而有勢者擅市。張炉専利,乃更倍售,従其酤買,公行靡憚,法軽利重,安能免乎哉?

書き下し

曩に既に年荒れ穀貴く、人に醉いて相殺す者有り、牧伯此に因り輒ち酒禁有り、厳令重ねて申べ、官司搜索し、榜徇を収執する者相辱め、鞭を制して死する者太半なり。之を防ぐこと彌いよ峻しくして、犯す者至って多し。乃ち地を穴りて醸し、油囊に酒を懐くに至る。民の此を好むこと、篤しと謂う可し。余は匹夫の賤を以て、此の空言の書に託す、之を如何ともする未し。又民に臨む者は其の法を設くと雖も、自ら斯の物を断つ能わず、己を緩くし人を急にすれば、令すと雖も従わず、躬せず親しまざれば、庶民信ぜず。此を以て教うれば、教え安んぞ行われん。此を以て禁ずれば、禁安んぞ止まん。沽売の家は、業を廃すれば則ち困しみ、遂に修飾賂遺し、権右に依憑し、属する所の吏敢えて問わず。力無き者は独り止め、勢い有る者は市を擅にす。爐を張り利を専らにし、乃ち更に倍売し、其の酤買に従い、公行して憚る靡し、法軽く利重ければ、安んぞ免るるを能わんや。

現代語訳

以前、年が凶作で穀物が高騰し、酔って殺し合う者が出たため、州の長官はこれに因って酒の禁令を出し、厳しい命令を重ねて布告し、役人が捜索し、触れ回りで捕らえられた者は互いに辱められ、鞭打ちの刑で死ぬ者が大半であった。防ぐことがますます厳しくなっても、犯す者はきわめて多かった。ついには地面に穴を掘って醸造し、油袋に酒を隠し持つまでになった。民がこれを好むことは、篤いと言うべきである。私は一介の匹夫の賤しい身で、この空言の書に托すだけで、どうにもできない。また民に臨む者は法を設けても、自らはこの物を断つことができず、自分には甘く人には厳しくすれば、命令しても従わず、自ら行わず親しまなければ、庶民は信じない。これで教えようとして教えがどうして行われよう。これで禁じようとして禁がどうして止まろう。酒を売る家は、商売を廃すれば困窮し、ついには賄賂を飾り贈り、権力者に頼り、属する役人も敢えて問わない。力のない者だけが止め、勢いのある者が市場を独占する。炉を構えて利を専らにし、さらに倍の値で売り、買う者に任せて公然と行い憚らない。法が軽く利が重ければ、どうして免れ得ようか。

解説

禁酒令の失敗を、実例で語る段です。取り締まりが厳しくなるほど、地面に穴を掘って醸し、油袋に酒を隠すなど違反が増え、鞭で死ぬ者まで出たとあります。ここで葛洪が指摘する要点は二つで、一つは上に立つ者が自ら断てないこと。「己を緩くし人を急にすれば、令すと雖も従わず」と、規則の信頼は運用側の姿勢で決まると述べます。もう一つは、禁止が権力者に近い者だけの利権を生み、「力無き者は独り止め、勢い有る者は市を擅にす」という不公平になること。社内ルールの導入でも、例外が特定の人にだけ認められると、同じ構造が生まれます。

この章句が説くこと

己を緩くし人を急にすれば躬せず親しまざれば力無き者は独り止め勢い有る者は市を擅にす規則公平

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