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重職心得箇条 / 第二条

大臣の心得は、先づ諸有司の了簡(りょうけん)を尽くさしめて、是れを公平に裁決する所其の職なるべし。もし有司の了簡より一層能(よ)き了簡有りとも、さして害なき事は、有司の議を用いるにしかず。有司を引き立て、気乗り能(よ)き様に駆使する事、要務にて候。又些少の過失に目つきて、人を容れ用いる事ならねば、取るべき人は一人も無き之れ様になるべし。功を以て過を補はしむる事可也。又堅才と云ふ程のものは無くても、其の藩だけの相応のものは有るべし。人々に択(よ)り嫌いなく、愛憎の私心を去って用ゆべし。自分流儀のものを取り計るは、水へ水をさす類にて、塩梅を調和するに非ず。平生嫌ひな人を能(よ)く用いると云ふ事こそ手際なり。此の工夫あるべし。

書き下し

大臣の心得は、先づ諸有司の了簡(りょうけん)を尽くさしめて、是れを公平に裁決する所其の職なるべし。もし有司の了簡より一層能(よ)き了簡有りとも、さして害なき事は、有司の議を用いるにしかず。有司を引き立て、気乗り能(よ)き様に駆使する事、要務にて候。又些少の過失に目つきて、人を容れ用いる事ならねば、取るべき人は一人も無き之れ様になるべし。功を以て過を補はしむる事可也。又堅才と云ふ程のものは無くても、其の藩だけの相応のものは有るべし。人々に択(よ)り嫌いなく、愛憎の私心を去って用ゆべし。自分流儀のものを取り計るは、水へ水をさす類にて、塩梅を調和するに非ず。平生嫌ひな人を能(よ)く用いると云ふ事こそ手際なり。此の工夫あるべし。

現代語訳

大臣の心得は、まず役人たちに考えを出し尽くさせ、それを公平に裁決するところにある。それがこの職である。もし役人の案より自分の案のほうが一段優れていたとしても、大した害がないことなら、役人の議を用いるにこしたことはない。役人を引き立て、気持ちよく働けるように動かすことが、肝心の務めである。また、わずかな過失に目をつけて人を受け入れて用いることができないなら、使える人は一人もいなくなる。手柄をもって過失を補わせればよい。並外れた才能というほどの者はいなくとも、その藩に見合った者はいるものだ。人を選り好みせず、好き嫌いという私心を去って用いるべきである。自分と同じ流儀の者ばかり取り立てるのは、水に水を差すようなもので、味を調えることにはならない。日ごろ嫌いな人をうまく用いる、これこそ手際というものだ。この工夫があってほしい。

解説

大臣の役目は、自分で答えを出すことより、役人たちに考えを出し尽くさせ、それを公平に裁くことだと一斎は述べます。自分の案のほうが少し優れていても、害がなければ部下の案を採るほうがよいとさえ言います。「水へ水をさす」とは、同じ味のものを足しても味が整わないという譬えで、自分と似た者ばかり集める人事への戒めです。日ごろ苦手な相手を使いこなしてこそ手際だという指摘は、少数の部下の過失に目を奪われがちな管理職に、そのまま当てはまります。役人を引き立てて気持ちよく働かせることが肝心の務めだという言葉も、同じ筋にあります。

この章句が説くこと

公平人材登用任せる好き嫌い過失重職心得箇条

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