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抱朴子外篇 / 酒誡

精濁神亂,臧否顛倒。或奔車走馬,赴阬谷而不憚,以九折之阪為蟲豈封;或登危蹋頹,雖墮墜而不覺,以呂梁之淵為牛跡也。或肆仇於器物,或酗醟於妻子;加枉酷於臣仆,用剡鋒乎六畜;熾火烈於室廬,掊寶玩於淵流;遷威怒於路人,加暴害於士友。褻嚴主以夷戮者,有矣;犯兇人而受困者,有矣。言雖尚辭,煩而叛理;拜伏徒多,勞悲非敬。臣子失禮於君親之前,幼賤悖慢於耆宿之坐。謂清談為詆詈,以忠告為侵己。於是白刃抽而忘思難之慮,棒杖奮而罔顧乎前後。構漉血之讎,招大辟之禍。

新字:精濁神乱,臧否顛倒。或奔車走馬,赴阬谷而不憚,以九折之阪為虫豈封;或登危蹋頽,雖堕墜而不覚,以呂梁之淵為牛跡也。或肆仇於器物,或酗醟於妻子;加枉酷於臣仆,用剡鋒乎六畜;熾火烈於室廬,掊宝玩於淵流;遷威怒於路人,加暴害於士友。褻厳主以夷戮者,有矣;犯兇人而受困者,有矣。言雖尚辞,煩而叛理;拝伏徒多,労悲非敬。臣子失礼於君親之前,幼賤悖慢於耆宿之坐。謂清談為詆詈,以忠告為侵己。於是白刃抽而忘思難之慮,棒杖奮而罔顧乎前後。構漉血之讎,招大辟之禍。

書き下し

精濁り神乱れ、臧否顛倒す。或いは車を奔らせ馬を走らせ、阬谷に赴くを憚らず、九折の阪を以て蟲豈の封と為す。或いは危うきに登り頽るるを蹋み、墮墜すと雖も覚えず、呂梁の淵を以て牛跡と為す。或いは仇を器物に肆にし、或いは妻子に酗醟す。枉酷を臣仆に加え、剡鋒を六畜に用い、火烈を室廬に熾し、宝玩を淵流に掊つ。威怒を路人に遷し、暴害を士友に加う。嚴主を褻して以て夷戮せらるる者有り、兇人を犯して困しめらるる者有り。言は辞を尚ぶと雖も、煩わしくして理に叛き、拝伏徒に多く、労悲は敬に非ず。臣子は君親の前に礼を失い、幼賤は耆宿の坐に悖慢す。清談を謂いて詆詈と為し、忠告を以て己を侵すと為す。是に於いて白刃抽かれて難を思うの慮りを忘れ、棒杖奮いて前後を顧みる罔し。漉血の讎を構え、大辟の禍を招く。

現代語訳

精神は濁り心は乱れ、善し悪しが逆さまになる。馬や車を走らせて谷に落ちることも憚らず、九折の険しい坂を平らな土手と思い込む。危うい所に登り崩れる所を踏んで、落ちても気づかず、呂梁の深い淵を牛の足跡の窪みと思う。器物に仇を晴らす者もいれば、妻子に酒乱を働く者もいる。使用人に不当な仕打ちをし、家畜に鋭い刃を向け、家に激しい火を放ち、宝を淵に投げ捨てる。怒りを通りがかりの人にぶつけ、乱暴を友人に加える。厳しい主君を侮って殺された者もあり、凶悪な人に逆らって苦しめられた者もある。言葉は飾ることを尚ぶようでも、煩わしく道理に背き、拝み伏すことばかりが多く、疲れて悲しむばかりで敬いではない。臣下や子は君や親の前で礼を失い、幼い者や賤しい者は年長者の席で礼を乱す。清談を罵りと受け取り、忠告を自分への侵害と受け取る。こうして白刃が抜かれても難を思う心配を忘れ、棒や杖を振るって前後を顧みない。血を流す仇を結び、死刑の禍を招く。

解説

酔いによる判断力の崩壊を、段階的に描く段です。最初に「臧否顛倒す」、善悪の判断が逆さになるという総括があり、危険を危険と感じない、平らな道と思う、といった例が続きます。「清談を謂いて詆詈と為し、忠告を以て己を侵すと為す」の一節は特に示唆的で、酔うと忠告を攻撃と受け取り、かえって制止する人に怒りを向けます。ここは酒に限らず、疲労や興奮で冷静さを欠いた状態に広く当てはまります。重要な決定や叱責は、判断が濁る状況の外で行う。そうした約束事を決めておくのが、実務的な防ぎ方です。

この章句が説くこと

精濁り神乱れ臧否顛倒す忠告を以て己を侵すと為す大辟の禍を招く判断力感情

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