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抱朴子外篇 / 貴賢

患於生乎深宮之中,長乎婦人之手,不識稼穡之艱難,不知憂懼之何理,承家繼體,蔽乎崇替。所急在乎侈靡,至務在乎遊晏,般於畋獵,湎於酣樂,聞淫聲則驚聽,見艷色則改視。役聰用明,止此二事。鑒澄人物,不以經神,唯識玩弄可以悅心誌,不知奇士可以安社稷。犀象珠玉,無足而至自萬里之外;定傾之器,能行而淪乎四境之內。二豎之疾既據而募良醫,棟橈之禍已集而思謀夫,何乎火起乃穿井,覺饑而占田哉!夫庸隸猶不可以不拊循而卒盡其力,安可以無素而暴得其用哉?

新字:患於生乎深宮之中,長乎婦人之手,不識稼穡之艱難,不知憂懼之何理,承家継体,蔽乎崇替。所急在乎侈靡,至務在乎遊晏,般於畋猟,湎於酣楽,聞淫声則驚聴,見艶色則改視。役聰用明,止此二事。鑒澄人物,不以経神,唯識玩弄可以悦心誌,不知奇士可以安社稷。犀象珠玉,無足而至自万里之外;定傾之器,能行而淪乎四境之内。二豎之疾既拠而募良医,棟橈之禍已集而思謀夫,何乎火起乃穿井,覚饑而占田哉!夫庸隸猶不可以不拊循而卒尽其力,安可以無素而暴得其用哉?

書き下し

患うるは、深宮の中に生まれ、婦人の手に長じ、稼穡の艱難を識らず、憂懼の何の理なるかを知らず、家を承け体を継ぎて、崇替に蔽わるるに在り。急とする所は侈靡に在り、至務は遊晏に在り、畋猟に般び、酣楽に湎れ、淫声を聞けば則ち聴を驚かし、艶色を見れば則ち視を改む。聡を役い明を用うるは、此の二事に止まる。人物を鑑澄するに、神を経ざず、唯だ玩弄の以て心志を悦ばしむ可きを識りて、奇士の以て社稷を安んず可きを知らず。犀象珠玉は、足無くして万里の外より至り、傾くを定むるの器は、能く行きて四境の内に淪む。二豎の疾既に据わりて良医を募り、棟橈むの禍已に集まりて謀夫を思う。何ぞ火起こりて乃ち井を穿ち、饑を覚えて田を占むるがごとくなるや。夫れ庸隷すら猶お拊循せずして卒に其の力を尽くさしむ可からず、安んぞ素無くして暴かに其の用を得可けんや。

現代語訳

憂えるべきは、君主が深宮に生まれ、女たちの手で育ち、農作の苦労を知らず、憂いや畏れが何の道理かも知らず、家と跡目を継いで、盛衰の理に目を覆われていることである。急ぐのはぜいたくであり、務めは遊びの宴にあり、狩りにふけり、酒楽に溺れ、淫らな音を聞けば耳を澄まし、艶やかな色を見れば目を改める。聡明さを使うのはこの二つだけである。人物を見分けるのに精神を働かせず、慰みものが心を喜ばせることは知っていても、傑出した士が国を安んじることは知らない。犀や象牙、珠玉は足がなくても万里の外から届くのに、傾きを定める器は、歩いて来られるのに国内で埋もれている。病が体に居座ってから良医を募り、棟木が撓む禍いが迫ってから策士を思う。火事が起きてから井戸を掘り、飢えを覚えてから田を占めるようなものではないか。凡庸な下僕ですら、日頃いたわらなければ最後まで力を尽くさせることはできない。ましてや平素の備えなしに、突然に有能な人の働きを得られようか。

解説

前段を受け、苦労を知らずに育った後継者の落とし穴を描きます。「犀象珠玉は、足無くして万里の外より至り」と、物は遠くから集められるのに、歩いて来られる賢者が身近で埋もれていると対比する点が鋭いところです。火事が起きてから井戸を掘る喩えは、有事になって初めて人材を探す愚を示します。後継者教育や管理職の登用でも、優秀な人は普段のいたわりと接点の中でしか力を発揮しません。急場に呼べばよい、という期待が最も高くつく、という指摘として読めます。

この章句が説くこと

火起こりて乃ち井を穿ち饑を覚えて田を占むる奇士の以て社稷を安んず可き素無くして暴かに其の用を得可けんや後継備え

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