抱朴子外篇 / 逸民
古公杖策而捐之,越翳入穴以逃之,季劄退耕以委之,老萊灌園以遠之,從其所好,莫與易也。故醇而不雜,斯則富矣;身不受役,其則貴矣。若夫剖符有土,所謂祿利耳,非富貴也。且夫官高者其責重,功大者人忌之,獨有貧賤,莫與我爭,可得長寶,而無憂焉。「濯裘布被,拔葵去織,豘不掩豆,菜肴糲餐,又獲逼下邀偽之譏,樹塞反坫,三歸玉食,穰侯之富,安昌之泰,則有僭上洿濁之累。未若遊神典文,吐故納新,求飽乎耒梠之端,索缊乎杼軸之間,腹仰河而已滿,身集一枝而余安,萬物蕓蕓,化為埃塵矣。食嚙弱糊口,布褐缊袍,淡泊肆誌,不憂不喜,斯尊樂,喻之無物也。
新字:古公杖策而捐之,越翳入穴以逃之,季劄退耕以委之,老萊灌園以遠之,従其所好,莫与易也。故醇而不雑,斯則富矣;身不受役,其則貴矣。若夫剖符有土,所謂禄利耳,非富貴也。且夫官高者其責重,功大者人忌之,独有貧賤,莫与我争,可得長宝,而無憂焉。「濯裘布被,抜葵去織,豘不掩豆,菜肴糲餐,又獲逼下邀偽之譏,樹塞反坫,三帰玉食,穰侯之富,安昌之泰,則有僭上洿濁之累。未若遊神典文,吐故納新,求飽乎耒梠之端,索缊乎杼軸之間,腹仰河而已満,身集一枝而余安,万物蕓蕓,化為埃塵矣。食噛弱糊口,布褐缊袍,淡泊肆誌,不憂不喜,斯尊楽,喩之無物也。
書き下し
古公は策を杖きて之を捐て、越の翳は穴に入りて之を逃れ、季札は退耕して之を委て、老萊は園に灌ぎて之を遠ざく。其の好む所に従い、与に易うる莫し。故に醇にして雑らざる、斯れ則ち富めり。身は役を受けず、其れ則ち貴し。夫の符を剖き土を有つが若きは、所謂る禄利のみ、富貴に非ざるなり。且つ夫れ官高き者は其の責め重く、功大なる者は人之を忌む。独り貧賤のみ有りて、我と争う莫く、長く宝とす可く、而して憂い無し。「濯裘布被、葵を拔き織を去り、豘は豆を掩わず、菜肴糲餐、又た下を逼り偽りを邀むるの譏りを獲、樹塞反坫、三帰玉食、穣侯の富、安昌の泰、則ち僭上洿濁の累有り。未だ神を典文に遊ばせ、故を吐き新を納れ、飽くを耒耜の端に求め、縕を杼軸の間に索め、腹は河に仰ぎて已に満ち、身は一枝に集まりて余り安らかなるに若かず。万物は蕓蕓として、化して埃塵と為る。食は弱を嚙みて口を糊し、布褐縕袍、淡泊にして志を肆にし、憂えず喜ばず、斯の尊楽は、之を喩うるに物無し。
現代語訳
古公亶父は杖をついて国を捨て、越の翳は穴に入って逃れ、季札は退いて耕して国を譲り、老萊子は園に水を注いで世を遠ざけた。それぞれ自分の好むところに従い、何ものとも取り替えなかった。だから純粋でまじりけがなければ、それは富んでいるのである。身が役に縛られなければ、それは貴いのである。割り符を割り土地を有する身分のようなものは、いわゆる禄や利益にすぎず、富貴ではない。そもそも官が高い者は責任が重く、功が大きい者は人に忌まれる。ただ貧賤だけは、私と争う者がなく、長く宝としていられて、憂いがない。『洗い古した皮衣と布の夜具、葵を抜き機織りをやめ、子豚の肉は豆の器を覆えず、野菜の肴と粗末な飯。そのうえ、下を追い込み偽りを求めるという譏りを受け、門に樹を立て反坫を備え、三つの家を持ち玉のような食を摂るような、穣侯の富や安昌侯の安楽は、身分を越えた汚濁の累をともなう。むしろ、精神を典籍に遊ばせ、古いものを吐き新しいものを納め、飽くことを鋤の先に求め、粗衣を織機の間に求め、腹は河の水を仰げばすでに満ち、身は一本の枝に止まってもなお安らかである方がよい。万物は雑然として、化して塵となる。食事は弱い草を嚙んで口をしのぎ、粗い布と綿入れの着物で、淡泊に志のままにし、憂えず喜ばない。この尊い楽しみは、たとえるものがない。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集醒・身に樂有るは心に憂無きに若かず前に譽有るは、後に毀無きに若かず。身に樂有るは、心に憂無きに若かず。
-
『碧巌録』第九十六則達磨曰く、「諸仏の妙道は、曠劫に精勤し、行じ難きを能く行じ、忍に非ざるを忍ぶ。豈に小徳小智、軽心慢心を以て、真乗を冀はんと欲せんや。是の処有ること無し」。二祖誨励を聞いて、道に向ふこと益々切なり。潜かに利刀を取りて、自ら左臂を断ち、達磨の前に致す。磨是れ法器なることを知り、遂に問うて曰く、「汝雪に立ち臂を断つ、当に何事の為ぞ」。二祖曰く、「某甲心未だ安からず、乞ふ師安心せしめたまへ」。磨曰く、「心を将ち来れ、汝が与に安んぜん」。祖曰く、「心を覓むるに了に不可得なり」。達磨云く、「汝が与に安心し竟んぬ」。後に達磨為に其の名を易へて慧可と曰ふ。後に三祖燦大師を接得す。既に法を伝へて舒州の皖公山に隠る。後周の武帝の仏法を破滅し僧を沙汰するに属ひ、師太湖県の司空山に往来し、居に常処無し。十余載を積むも人の知る者無し。宣律師の高僧伝、二祖の事を載すること詳らかならず。三祖伝に云く、二祖の妙法世に伝はらず、と。末後に依前として他の当時の立雪を悟るに頼値す。所以に雪竇道ふ、雪に立つこと如し未だ休まずんば、何人か雕偽せざらん、と。雪に立つこと若し未だ休まずんば、足恭謟詐の人皆之に効はん。一時に只だ雕偽を成ず。則ち是れ謟詐の徒なり。
-
『無門関』第四十一則 達磨安心達磨面壁す。二祖雪に立ち臂を斷ちて云く、「弟子心未だ安からず。乞ふ師心を安んぜよ」。磨云く、「心を將(も)ち來れ。汝が與に安んぜん」。祖云く、「心を覓(もと)むるに了(つひ)に不可得なり」。磨云く、「汝が與に心を安んじ竟(をは)れり」。
-
論語・為政篇孟武伯孝を問う。子曰く、「父母は唯其の疾(やまい)を之憂う。」
-
人物志・自序其の安んずる所を察し、其の由る所を觀て、以て居止の行を知る。
-
『酔古堂剣掃』集醒・遇に隨ひて安んず人言ふ、天は人の富貴を禁ぜずして、人の清閒を禁ずと。人自ら閒ならざるのみ。若し能く遇に隨ひて安んじ、將來を圖らず、既往を追はず、目前に蔽はれずんば、何の清閒か之れ有らざらん。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る