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抱朴子外篇 / 逸民

且呂尚之未遇文王也,亦曾隱於窮賤,凡人易之,老婦逐之,賣庸不售,屠釣無獲,曾無一人慕之。其避世也,何獨慮狷華之沮眾邪?設令殷紂以尚逃遁,收而斂之,尚臨死,豈能自謂罪所應邪?魏武帝亦弄法嚴峻,果於殺戮,乃心欲用乎孔明,孔明自稱不樂出身。武帝謝遣之曰:『義不使高世之士,辱於汙君之朝也。』其鞭撻九有,草創皇基,亦不妄矣。

新字:且呂尚之未遇文王也,亦曽隠於窮賤,凡人易之,老婦逐之,売庸不售,屠釣無獲,曽無一人慕之。其避世也,何独慮狷華之沮衆邪?設令殷紂以尚逃遁,収而斂之,尚臨死,豈能自謂罪所応邪?魏武帝亦弄法厳峻,果於殺戮,乃心欲用乎孔明,孔明自称不楽出身。武帝謝遣之曰:『義不使高世之士,辱於汚君之朝也。』其鞭撻九有,草創皇基,亦不妄矣。

書き下し

且つ呂尚の未だ文王に遇わざるや、亦た曽て窮賤に隠れ、凡人は之を易んじ、老婦は之を逐い、庸を売れども售れず、屠釣するも獲る無く、曽て一人も之を慕う無し。其の世を避くるや、何ぞ独り狷華の衆を沮むを慮らんや。設し殷紂、尚の逃遁するを以て、収めて之を斂めしめば、尚、死に臨みて、豈に能く自ら罪の応ずる所なりと謂わんや。魏武帝も亦た法を弄すること厳峻にして、殺戮を果とし、乃ち心に孔明を用いんと欲するも、孔明は自ら出身を楽しまずと称す。武帝謝して遣りて曰く、「義として高世の士をして、汚君の朝に辱められしめず」と。其の九有を鞭撻し、皇基を草創するも、亦た妄ならず。

現代語訳

そもそも呂尚がまだ文王に出会う前は、彼もまた貧しく卑しい境遇に隠れ、凡人は彼を軽んじ、老婦は彼を追い払い、人に雇われて働こうにも売れず、屠殺や釣りをしても収穫がなく、誰ひとり彼を慕う者はいなかった。彼が世を避けたとき、どうして華士が人々の意欲をそぐことだけを心配したのだろうか。もし殷の紂王が、呂尚が逃げ隠れたことを理由に捕らえて殺したなら、呂尚は死に臨んで、自分の罪が当然の報いだと言えたであろうか。魏の武帝もまた、法を厳しく運用し、殺戮を断行したが、孔明を用いたいと思った。孔明は自ら官途に就くことを楽しまないと言った。武帝は謝って彼を帰して言った。『義として、世に高い士を、汚れた君の朝廷で辱めはしない』と。武帝が天下を鞭撻し、皇室の基を創ったのも、でたらめではなかったのである。

解説

呂尚を批判する議論の仕上げです。逸民は、呂尚自身にも世に知られず隠れていた時期があったと指摘します。もし殷の紂王が彼の逃避を罪として殺したなら、呂尚は自分の罪を認められたか、と問い返します。自分が受け入れがたい扱いを、立場が逆になったときに他人へ行っていないか、という論の折り返しです。魏武帝の例も、厳しい人物でさえ高潔な士を辱めなかった、という文脈で出ます。人を評価する側に立つとき、自分が下積みだった時期の気持ちを思い出すと、判断が変わります。評価基準は立場が変わっても通用するかが一つの試金石です。

この章句が説くこと

亦た曽て窮賤に隠れ庸を売れども售れず義として高世の士をして公平立場評価

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