秘本玉くしげ / 上 筋骨を丈夫に
惣体武士はつねづね身をおもおもしく安佚に持ならひては、身体柔弱になりて、肝心のはたらきの時大に苦しむべき事なれば、つねづね是を心がけて、筋骨を丈夫にあらせまほしきこと也。
書き下し
惣体武士はつねづね身をおもおもしく安佚に持ならひては、身体柔弱になりて、肝心のはたらきの時大に苦しむべき事なれば、つねづね是を心がけて、筋骨を丈夫にあらせまほしきこと也。
現代語訳
総じて武士は、常々身を重々しく安逸に持つことに慣れては、身体が柔弱になって、肝心の働きの時に大いに苦しむはずのことなので、常々これを心がけて、筋骨を丈夫にしておきたいものである。
解説
前段の農作の勧めを、武士の本分から締めくくる一文である。身を重々しく安逸に持つことに慣れると身体が弱り、いざ働くべき時に大いに苦しむ。だから常々筋骨を丈夫にしておけ、と宣長は言う。泰平の世が続き、武士が戦うことのないまま役人になっていた時代に、武士の存在理由を身体の次元から問い直している。重々しい身分の扱いは出費を増やすだけでなく、本人の力まで衰えさせるという指摘は、本書の身分論の結びとしてよく効いている。肩書が上がるにつれ現場から離れ、いざ手を動かすべき時に動けなくなってはいないか。日頃から自分の筋骨を鍛え続けているだろうか。
この章句が説くこと
武士安逸柔弱筋骨本分
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