秘本玉くしげ / 上 愚意の許し
是又、愚意のほどをおしはからせおはしまして、何事も御覽じゆるされむ事をこひ願ひ奉るなり。あなかしこ。
新字:是又、愚意のほどをおしはからせおはしまして、何事も御覧じゆるされむ事をこひ願ひ奉るなり。あなかしこ。
書き下し
是又、愚意のほどをおしはからせおはしまして、何事も御覧じゆるされむ事をこひ願ひ奉るなり。あなかしこ。
現代語訳
これもまた、私の愚かな考えのほどをお察しくださって、何事も御覧のうえお許しくださることを乞い願い申し上げる。あなかしこ(恐れ多いことである)。
解説
序を結ぶ一文である。「あなかしこ」は手紙の結びに用いる語で、恐れ多いことだと慎みを表す。前の段で採用を期待しないと断った宣長は、ここで重ねて、至らぬ考えのほどを察して何事も許してほしいと願う。松坂の一医者が藩主に政道を論じるのは、容易なことではなかった。だからこそ宣長は言葉を尽くして身を低くし、そのうえで本文では率直に書く。形の上のへりくだりと中身の率直さを両立させるのは、上に物を言う者の知恵である。礼を尽くすことと、言うべき中身を薄めることは別の事柄だ。その二つを取り違えて、肝心の中身まで丸めてしまってはいないだろうか。
この章句が説くこと
愚意あなかしこ礼節進言率直
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