言志四録 / 言志晩録 別存 第三十四条 奏疏の通患
公甞語余曰。古人奏疏。固多忠言讜論。切中時弊。然事未發而言之。率不見用。已發而言之。遂不及。是古今之通患也。余服其言之的然。
新字:公甞語余曰。古人奏疏。固多忠言讜論。切中時弊。然事未発而言之。率不見用。已発而言之。遂不及。是古今之通患也。余服其言之的然。
書き下し
公嘗て余に語りて曰く、「古人の奏疏は、固より忠言讜論多く、時弊に切中す。然れども事未だ発せずして之を言へば、率ね用ゐられず。已に発して之を言へば、遂に及ばず。是れ古今の通患なり」と。余其の言の的然たるに服す。
現代語訳
公(林述斎)はかつて私に語って言った。「昔の人が君主に奉った意見書には、もとより忠実な進言や正論が多く、時代の弊害を的確に突いている。しかし、事が起こる前にそれを言えば、たいてい採り上げられない。事が起こってしまってから言えば、もはや手遅れである。これは昔も今も変わらぬ共通の悩みである」。私はその言葉が的を射ていることに感服した。
解説
進言の難しさについての述斎の言葉です。古人の奏疏、つまり君主への意見書には忠言や正論が多く、時代の弊害を鋭く突いている。しかし事が起こる前に言えば多くは用いられず、起こってから言えばもう間に合わない。これが古今に共通する患いだと言います。幕府の評議に加わり、日に数通の意見書を出していたという述斎自身の実感がこもった言葉でしょう。問題が表に出る前の警告は切迫感がないため軽んじられ、表に出た後では手遅れになる。この矛盾は組織のリスク管理そのものです。一斎がそれを「的然」と認めたのも、長く組織の中で働いた経験からでしょう。兆しの段階の声をどう拾い、どう採り上げるかを考えさせる一条です。
この章句が説くこと
進言先見リスク管理諫言時機
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