碧巌録 / 第九十七則
垂示云。拈一放一。未是作家。舉一明三。猶乖宗旨。直得天地陡變四方絕唱。雷奔電馳雲行雨驟。傾湫倒嶽甕瀉盆傾。也未提得一半在。還有解轉天關能移地軸底麼。試舉看。
新字:垂示云。拈一放一。未是作家。舉一明三。猶乖宗旨。直得天地陡変四方絶唱。雷奔電馳雲行雨驟。傾湫倒嶽甕瀉盆傾。也未提得一半在。還有解転天関能移地軸底麼。試舉看。
書き下し
垂示に云く、一を拈じ一を放つも、未だ是れ作家ならず。一を挙げて三を明かすも、猶ほ宗旨に乖く。直に天地陡かに変じ、四方絶唱し、雷奔り電馳せ、雲行き雨驟り、湫を傾け嶽を倒し、甕瀉ぎ盆傾くことを得るも、也た未だ一半を提げ得ざる在り。還た天関を転じ地軸を移すことを解する底有りや。試みに挙す看よ。
現代語訳
垂示に言う。一つを取り上げ一つを手放すくらいでは、まだ作家ではない。一つを挙げて三つを明らかにするくらいでも、なお宗旨にそむいている。たとえ天地がにわかに変わり、四方が言葉を絶し、雷が奔り稲妻が走り、雲が行き雨が激しく降り、淵をひっくり返し山を倒し、甕から注ぎ盆を傾けるような勢いを得たとしても、まだ半分も持ち上げてはいない。天の関を回し地の軸を動かすことのできる者はいるか。試みに挙げてみるから見よ。
解説
第九十七則「金剛経軽賤」に圜悟が掲げた垂示である。一つを取り一つを捨てる取捨の器用さも、一を聞いて三を知る聡明さも、まだ宗旨には届かないと圜悟は言う。天地を揺るがすほどの雷鳴や豪雨のような激しいはたらきでさえ、半分にも満たないとまで述べる。そのうえで天関を転じ地軸を移す者、つまり世界の見え方そのものを根本からひっくり返す者がいるかと問いかけている。本則では『金剛経』の罪業消滅の一節が取り上げられ、まさに経の読み方そのものが転じられる。器用さや頭の良さを磨くだけでなく、物事を見る前提ごと転換する力が、仕事の質を一段引き上げる。
この章句が説くこと
拈一放一挙一明三垂示転換自由悟り
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