碧巌録 / 第九十七則
舉。金剛經云。若為人輕賤是人先世罪業應墮惡道以今世人輕賤故先世罪業則為消滅。
新字:舉。金剛経云。若為人軽賤是人先世罪業応堕悪道以今世人軽賤故先世罪業則為消滅。
書き下し
挙す。金剛経に云く、「若し人の為に軽賤せらるれば、是の人は先世の罪業、応に悪道に堕すべきも、今世の人の軽賤するを以ての故に、先世の罪業則ち為に消滅す」。
現代語訳
『金剛経』に言う。「もし人に軽んじられ賤しめられるなら、その人は前世の罪業によって本来悪道に堕ちるはずであったが、今世で人に軽んじられ賤しめられることによって、前世の罪業はそのために消滅する」。
解説
本則は、雪竇が『金剛経』の一節をそのまま公案として掲げたものである。経を受持する人がかえって人に軽んじられるなら、それは前世の重い罪業が軽い報いに転じて消えていくのだという内容で、教家では経の功徳を説く箇所として読まれてきた。雪竇はこれを頌に取り上げることで、経典の霊験という読み方そのものを打ち破ろうとしたと圜悟は言う。では「此の経」とは何を指すのか、紙の経巻か、自分自身の本心かという点が、この公案の分かれ目である。人から軽く扱われる経験を、どう受け止め、どう転じるかは、働く人の誰もが向き合う問いである。
この章句が説くこと
金剛経軽賤罪業公案逆境修行
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