碧巌録 / 第九十二則
垂示云。動絃別曲。千載難逢。見兔放鷹。一時取俊。總一切語言為一句。攝大千沙界為一塵。同死同生。七穿八穴。還有證據者麼。試舉看。
新字:垂示云。動絃別曲。千載難逢。見兔放鷹。一時取俊。総一切語言為一句。摂大千沙界為一塵。同死同生。七穿八穴。還有証拠者麼。試舉看。
書き下し
垂示に云く、絃を動かせば曲を別つ、千載にも逢ひ難し。兎を見て鷹を放つ、一時に俊を取る。一切の語言を総べて一句と為し、大千沙界を摂して一塵と為す。同死同生、七穿八穴。還た証拠する者有りや。試みに挙す看よ。
現代語訳
垂示に言う。弦をかき鳴らしただけで曲を聞き分ける者には、千年に一度も出会いがたい。兎を見て鷹を放てば、一度に獲物を仕留める。あらゆる言葉をまとめて一句とし、大千世界の砂の数ほどの国土を一つの塵に収める。ともに死にともに生き、縦横無尽に通じ抜ける。これを証し立てる者がいるか。試みに挙げてみるから見よ。
解説
第九十二則「世尊陞座」に圜悟が掲げた垂示である。弦の一触れで曲を聞き分ける知音と、兎を見るや鷹を放つ機敏さとは、いずれも一瞬で相手の全体をつかむはたらきを言う。一切の言葉を一句に、全世界を一塵に収めるとは、多を一に凝縮する見方である。本則では世尊が座に上っただけで下りてしまい、言葉なき説法が示される。圜悟はその場で即座に見抜ける者がいるかと問いかけているのである。長い説明を待たずに、最初の一音で相手の意図を聞き取る感度は、会議でも商談でも物を言う。
この章句が説くこと
動絃別曲知音垂示言葉直観悟り
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