碧巌録 / 第八十二則
問曾不知 答還不會月冷風高古巖寒檜 堪笑路逢達道人不將語默對手把白玉鞭 驪珠盡擊碎不擊碎 增瑕纇國有憲章 三千條罪雪竇頌得。最有工夫。前來頌雲門話。却云。問既有宗。答亦攸同。這箇却不恁麼。却云。問曾不知。答還不會。大龍答處傍瞥。直是奇特。分明是誰恁麼問。未問已前。早納敗缺了也。他答處俯能恰好。應機宜道。山花開似錦。澗水湛如藍。爾諸人如今作麼生會大龍意。答處傍瞥。直是奇特。所以雪竇頌出。教人知道月冷風高。更撞著古巖寒檜。且道他意作麼生會。所以適來道。無孔笛子撞著氈拍板。只這四句頌了也。
新字:問曽不知 答還不会月冷風高古巖寒檜 堪笑路逢達道人不将語黙対手把白玉鞭 驪珠尽撃砕不撃砕 增瑕纇国有憲章 三千条罪雪竇頌得。最有工夫。前来頌雲門話。却云。問既有宗。答亦攸同。這箇却不恁麼。却云。問曽不知。答還不会。大竜答処傍瞥。直是奇特。分明是誰恁麼問。未問已前。早納敗欠了也。他答処俯能恰好。応機宜道。山花開似錦。澗水湛如藍。爾諸人如今作麼生会大竜意。答処傍瞥。直是奇特。所以雪竇頌出。教人知道月冷風高。更撞著古巖寒檜。且道他意作麼生会。所以適来道。無孔笛子撞著氈拍板。只這四句頌了也。
書き下し
問ふこと曾て知らず、答ふること還た会せず。月冷やかに風高し、古巌の寒檜。笑ふに堪へたり、路に達道の人に逢ひて、語黙を将て対へず。手に白玉の鞭を把つて、驪珠尽く撃砕す。撃砕せずんば、瑕纇を増さん。国に憲章有り、三千条の罪。雪竇頌し得て、最も工夫有り。前来雲門の話を頌して却つて云く、「問既に宗有り、答も亦た同じき攸なり」と。這箇は却つて恁麼ならず、却つて云く、「問ふこと曾て知らず、答ふること還た会せず」と。大龍の答処傍瞥にして、直に是れ奇特なり。分明に是れ誰か恁麼に問ふ、未だ問はざる已前に、早く敗缺を納れ了れり。他の答処俯して能く恰好、機宜に応じて道ふ、「山花開いて錦に似たり、澗水湛へて藍の如し」。爾諸人、如今作麼生か大龍の意を会す。答処傍瞥にして、直に是れ奇特なり。所以に雪竇頌出して、人をして月冷やかに風高く、更に古巌の寒檜に撞著することを知道せしむ。且く道へ、他の意作麼生か会す。所以に適来道ふ、「無孔の笛子、氈拍板に撞著す」と。只だ這の四句にて頌し了れり。
現代語訳
問う者はもとより分かっておらず、答えを聞いてもやはり会得しない。月は冷たく風は高く、古い岩の上の寒々とした檜。笑うべきことよ、道で道に達した人に出会ったら、言葉でも沈黙でも応じないとは。手に白玉の鞭を握って、驪竜の珠をことごとく打ち砕く。打ち砕かなければ、傷を増やすばかり。国には法がある、三千条の罪。雪竇の頌は実に工夫が凝らされている。先に雲門の話を頌したときは「問いにすでに宗旨があり、答えもまた同じところにある」と言った。ここではそうではなく、「問う者はもとより分かっておらず、答えを聞いてもやはり会得しない」と言う。大龍の答えは横からちらりと打つようで、まことに見事である。いったい誰がこんな問いをしたのか、問う前からもうしくじっている。大龍の答えはうつむいたままちょうど良く、機に応じて「山の花は咲いて錦のよう、谷川の水は湛えて藍のよう」と言った。君たちは今、大龍の意をどう会得するか。答えは横からちらりと打って、まことに見事である。だから雪竇は頌に出して、月は冷たく風は高く、さらに古い岩の寒い檜に突き当たることを知らせたのだ。さあ言ってみよ、その意をどう会得するか。だから先に「穴のない笛が毛氈の拍子木にぶつかる」と言ったのである。この四句でもう頌し尽くしている。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『甲陽軍鑑』品第四十子細は信玄公わかうまします時より、諸侍のことばをよくきゝ、分別あるも、なきも、つよからんも、よはからんも其人の物いふ儀にてつもり被成たるが、今日にいたるまでも、それがしむけんならくへ堕罪仕らん、少もあひちがはず候、さるほどに、よき事をもほめ所を見いだし、聞付穿鑿の取さたをもつて善をば善と定め、悪をば悪とさだめ、道理をつめてほめそしる武士の作法なり、さなくして、かたはし聞て我贔負の者を虚空によきとばかり批判する事女にあひにたる侍、と信玄公の常々御諚これなり、如此有様にせんさくあそばす故、若手に能武士出くるなりと阿部加賀守申て、金丸助六郎·同惣蔵にをしゆる也、
-
『正法眼蔵随聞記』巻一宋土の寺院なんどには都て雑談をせざれば、其やうなること、をも云はざるなり、吾が国も近ごろ建仁寺の僧正存生の時は、一向あからさまにも此の如きの言語出来らず、滅後にも存世の時の弟子等、少々残りとヾまりたりし時は一切に云はざりき、近ごろ此の七八年より以来、今ま出の若き人たち時々談ずるなり、存外の次第なり、聖教の中にも麁强悪業令人覚悟無利言説能障正道とありて、只うち出して云処の言ばすら、無利の言説は障道の因縁なり況やかくの如きの言語は、ことばに引れて即ち心も起りつべし、最も用心すべきなり、故さらにかくなん云はじとせずとも、悪きことゝ知りなば漸々に退治すべきなり、
-
人物志・八觀其の言甚だ懌べども、精色従わざる者は、中に違う有るなり。其の言違う有れども、精色信ずべき者は、辞の敏ならざるなり。
-
『正法眼蔵随聞記』巻一雑話の次でに云く、世間の男女老少多く交会姪色等の事を談ず、是を以て心を慰むるとし、興言とすることあり、一旦意をも遊戯し、徒然も慰むるに似たりと云ふとも、僧はもつとも禁断すべきことなり、俗猶よき人、まことしき人の、礼儀をも存じ、げにげにしき談の時、出来らざることなり、只乱酔放逸なる時の談なり、況や僧は専ら仏道を思ふべし、雑語は希有異体の乱僧の云ふことなり、
-
論語・顔淵篇司馬牛、仁を問う。子曰く、「仁者は、其の言や訒し。」曰く、「其の言や訒しければ、斯れ之を仁と謂うか。」子曰く、「之を為すこと難し、之を言うこと訒きこと無きを得んや。」
-
『甲陽軍鑑』品第六如此の三楽も無果報〓にや終に一国とはたもたず、彼の三楽信玄公の背語申つることを聞て弥三楽を高上に存する也、古語に曰く、金以火ヲ試ミ人ハ以言ヲ試ム云々、人の善悪を云にて、其の者の行何計の者也としる可、人は人をほむるもそしるも大切ならん、九思一言ことはにけがのなきが実の武士ならん、
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る